Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
相続の過去問アーカイブス 平成2年 遺留分放棄・遺留分減殺請求の意味
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
Aが死亡し,相続人として,妻Bと嫡出子C・D・Eがいる。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。 |
1.「Cが相続を放棄した場合,DとEの相続分は増えるが,Bの相続分については
変わらない。」
【正解:○】 ◆相続放棄による、残りの相続人の法定相続分の行方 A―――――B 配偶者Bは、Cが相続を放棄しても、法定相続分は変わりません。配偶者の法定相続分は1/2のママです。 Cが相続を放棄することによって、Aの子全体の法定相続分1/2は変わりませんが、3人で分けるはずのものが2人で分けることになるので当然、C以外のDとEの相続分は増えることになります。 D,Eそれぞれの相続分は、Cの相続放棄によって、1/6から1/4になります。 |
2.「Aが遺産をCに遺贈していた場合,その遺贈は,B,D及びEの遺留分を侵害
した部分について,効力を生じない。」
【正解:×】 ◆遺言で遺留分を侵害した部分も有効←減殺請求で取り戻せるに過ぎない 被相続人は,遺留分を侵害する遺言はできない(902条1項)が,遺留分を保全するに必要な限度で減殺請求の対象になるだけ(1031条)であって,遺留分を侵害した部分が当然に無効になるわけではありません。(最高裁・昭和37.5.29) したがって、「その遺贈は,B,D及びEの遺留分を侵害した部分について,効力を生じない」というのは×です。 |
3.「Eの遺留分は,被相続人Aの財産の1/12の額である。」
【正解:○】 ◆遺留分の計算 A―――――B 遺留分の割合は、本肢の場合、被相続人の財産の1/2で、遺留分の権利者が複数いる場合には、この相続人全体の遺留分に、相続人各自の法定相続分率をかけたものが、各自の相続人個別の遺留分になります。
Eの法定相続分率=1/2×1/3=1/6 なので、Eの遺留分=1/2×1/6=1/12 ▼相続人全体の遺留分
▼相続欠格・廃除・相続放棄によって相続権を失った者は,遺留分の権利も失う。 ▼被相続人の兄弟姉妹には,遺留分が認められていないこともチェックしておきましょう。(1028条)→ 平成4年出題 ▼遺留分の減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。相続の開始から10年経過したときも消滅します。(1042条) |
●参考問題 | |
被相続人が財産のすべてを第三者に遺贈し、相続人が妻と嫡出子2人の場合,それぞれの遺留分は1/6である。(司法試験・昭和46年・問12) | |
【正解:×】
▼遺留分の権利者が複数いる場合
配偶者の遺留分=1/2×1/2=1/4 子1人の遺留分=1/2×1/4=1/8 (子1人の法定相続分率1/4) |
4.「Aの生前Dが遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けていた場合に
おいても,Dは,相続人となることができる。」
【正解:○】 ◆相続開始前に遺留分の放棄をしても相続人たる地位は変わらない 『遺留分の放棄』の意味は、『遺留分減殺請求権』を放棄して行使しないということであり、相続を放棄したものではなく、Aの生前にDが遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けていたとしても、Aが遺言を残さず、遺贈もないとすれば、Dに法定相続分を相続する権利があることには変わりはありません。 したがって、Aの生前にDが遺留分の放棄をしていた場合でも、Dは、相続人であることに変わりはありません。 簡単に言えば、遺留分の放棄とは、『遺留分の減殺請求権を持たない相続人になる』ことを意味します。 ▼相続の放棄は、相続の開始前に、その旨の意思表示をしても無効ですが、遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可があれば可能です。(1043条1項)
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●参考問題 | |
相続人の1人が遺留分を放棄した場合,他の相続人の遺留分はそれだけ増加する。(司法試験・昭和51年・問81) | |
【正解:×】
共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、ほかの各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。(1043条2項) A―――――B Cが遺留分の放棄をしても、B、D、Eの遺留分は変わらない。 ▼相続人の1人が相続放棄をすると、その者ははじめから相続人とならなかったとみなされるため、その者には遺留分もないことになります。 A―――――B ▼遺留分の権利者が複数いる場合
Cが相続放棄をすると、Bの遺留分は1/2×1/2=1/4 で変わりませんが、 D、Eの各自の遺留分は、1/2×1/6=1/12から、1/2×1/4=1/8 となって増えることになると解されています。 |
●遺留分の予想問題 |
遺留分減殺請求は,受遺者又は受贈者に対する意思表示によってすれば足り,必ずしも裁判上の請求によることを要しない。(司法書士・平成12年・問21) |
【正解:○】
減殺請求権の行使は、受遺者又は受贈者に対する意思表示でもよく、必ずしも裁判上の請求によらなくてもよい。(最高裁・昭和44.1.28など) |