Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
相続の過去問アーカイブス 平成9年・問6
遺留分の計算・減殺請求の時効・遺留分の放棄
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
遺留分に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成9年・問6) |
1.「被相続人Aの配偶者BとAの弟Cのみが相続人であり,Aが他人Dに遺産全部を
遺贈したとき,Bの遺留分は遺産の3/8,Cの遺留分は遺産の1/8である。」
【正解:×】 ◆遺留分の計算 ――――― ●被相続人の兄弟姉妹には,遺留分が認められていない。(1028条) →H4出題 ●遺留分の割合は、本肢の場合、被相続人の財産の1/2 ▼相続人全体の遺留分
▼相続欠格・廃除・相続放棄によって相続権を失った者は,遺留分の権利も失う。 ●遺留分の権利者が複数いる場合には、以下の式で求めますが、本肢では、遺留分の権利者が配偶者Bだけなので、Bの遺留分は1/2になります。←要注意
≪遺留分の権利者が複数いる場合≫
したがって、「Bの遺留分は1/2、Cには遺留分がない」ので、「Bの遺留分は遺産の 3/8,Cの遺留分は遺産の 1/8」という本肢は×になります。 |
●参考問題 |
1.「配偶者,直系尊属が相続人のときは,相続人の遺留分は被相続人の財産の1/2である。」(司法試験・昭和51年・問81) |
【正解:○】
配偶者,直系尊属が相続人のときは、遺留分は「被相続人の財産の1/2」。 ⇔ 直系尊属だけが相続人のときは、遺留分は「被相続人の財産の1/3」。 |
2.「被相続人が財産のすべてを第三者に遺贈し,相続人が妻だけの場合,その遺留分は1/2である」。(司法試験・昭和46年・問12) |
【正解:○】 |
2.「遺留分の減殺請求は,訴えを提起しなくても,内容証明郵便による意思表示
だけでもすることができる。」
【正解:○】 ◆遺留分の減殺請求権の行使は裁判外の請求でもよい
したがって、遺留分の減殺請求は,訴えを提起しなくても,内容証明郵便による意思表示だけでもすることができます。 |
●参考問題 |
遺留分減殺請求は,受遺者又は受贈者に対する意思表示によってすれば足り,必ずしも裁判上の請求によることを要しない。(司法書士・平成12年・問21) |
【正解:○】 |
3.「相続が開始して9年6箇月経過する日に,はじめて相続の開始と遺留分を害する
遺贈のあったことを知った遺留分権利者は,6箇月以内であれば,遺留分の減殺請求
をすることができる。」
【正解:○】 ◆遺留分減殺請求権の時効 遺留分の減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。相続の開始から10年経過したときも消滅します。(1042条) 本肢では、
ので、6ヵ月以内であれば,遺留分の減殺請求をすることができます。 |
●参考問題 |
遺留分減殺請求権は,相続の開始を知ったときから1年間行使しないときは,時効によって消滅する。(司法書士・平成10年・問20) |
【正解:×】
遺留分の減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。相続の開始から10年経過したときも消滅します。(1042条) 「相続の開始を知ったときから1年間行使しないとき」ではありません。 |
4.「被相続人Eの生前に,Eの子Fが家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をした
場合でも,Fは,Eが死亡したとき,その遺産を相続する権利を失わない。」(類・H2)
【正解:○】 ◆相続開始前に遺留分の放棄をしても相続人たる地位は変わらない E(被相続人) 『遺留分の放棄』の意味は、『遺留分減殺請求権』を放棄して行使しないということであり、相続を放棄したものではなく、Eの生前にFが遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けていたとしても、Eが遺言を残さず、遺贈もないとすれば、Fに法定相続分を相続する権利があることには変わりはありません。 したがって、Eの生前にFが遺留分の放棄をしていた場合でも、Fは、相続人であることに変わりはありません。 簡単に言えば、遺留分の放棄とは、『遺留分の減殺請求権を持たない相続人になる』ことを意味します。 ▼相続の放棄は、相続の開始前に、その旨の意思表示をしても無効ですが、遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可があれば可能です。(1043条1項)
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