Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
相続に関する問題1
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
Aが,5,000万円相当の土地と5,500万円の負債を残して死亡した。Aには,弟B,母C,配偶者D及びDとの間の子E・F・G並びにEの子Hがいる。 |
【関係図】 父―――― 母C
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1.「限定承認をするときは,D・E・F及びGが,共同してしなければならない。」
【正解:○】 限定承認とは、被相続人に借金などがある場合に相続財産がプラスになるかマイナスになるか分からないとき、相続財産の範囲内において(限定)借金も引き受ける(民法第922条)という制度です。 相続人の間に不公平が生じてトラブルが発生することを防止するために、相続人が複数いるときは、“全員で” 限定承認をする必要があり(第923条)、本設問の場合の相続人とは、「被相続人Aの配偶者D(第890条)」と「子供の子E・F・G(第887条)」の4人が全員であり、他の者は法定相続人とはなりません(第889条)。 |
2.「Eが相続放棄をしたときは,Hが代襲して相続人となる。」
【正解:×】 父―――― 母C 相続を放棄したEは“はじめから相続人ではなかった”ものとみなされる(第939条)ため、Eに子Hがいても、Hは、はじめから相続人ではなかったEの子なので、Eを代襲(代わりに相続)する余地も生じません。 ▼代襲相続 被相続人の死亡以前に、相続人となるはずの「子」・「兄弟姉妹」が相続権を失ったとき(死亡・廃除・欠格事由)に、その者(被代襲者)の直系卑属(相続人となるはずの者が兄弟姉妹のときはその子に限る)がその者に代わって相続すること。(ただし、代襲相続人は被相続人の直系卑属でなければならないことに注意。) |
3.「E・F及びGが相続放棄をしたときは,B及びCが,Dとともに相続人となる。」
【正解:×】 父―――― 母C
被相続人の子は、相続順位「第1位」で相続することができます(第887条1項)が、子がいないときや子が全員相続を放棄したときは、順位「第2位」として被相続人の親が相続できます(第889条第1)が、そのとき、“被相続人の兄弟姉妹は親と一緒に相続できません(〃第2)”。 つまり、被相続人の兄弟姉妹が相続できるときとは、第2順位の親等がいないときに(祖父母がいれば祖父母が相続しますが)「第3順位」として相続します。 また、「被相続人の配偶者は常に相続することができ」ます(第890条)。 そのときの配偶者の相続分は、 ・「第1順位」の子がいるときは、子が何人いても相続財産の“1/2”(第900条1号、子は残りの1/2を平等に分ける) ・子がいなくて「第2順位」の親等と一緒の場合は、配偶者の相続分は相続財産の“2/3”(〃2号、親等は残りの1/3) ・子も親もいなくて「第3順位」の兄弟姉妹と一緒の場合には、配偶者は相続財産の“3/4”(兄弟姉妹は残りの1/4) であることも、覚えておきましょう。 |
●直系尊属が相続人 |
●被相続人の父母は既に死亡しているが、祖父母が存命のとき 祖父G――――祖母H 子がいない場合は、直系尊属と配偶者が相続します。この場合、被相続人の弟Cや伯父Fは、相続できません。被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の直系尊属がいると相続人にはなれず、被相続人のおじ・おばはいかなる場合でも相続人にはなれません。 この例では、被相続人の父母とも既に死亡しているため、祖父Gが直系尊属として相続します。 したがって、この例では、配偶者のB(相続分率2/3)と祖父Gが(相続分率1/3)相続人になります。 ●被相続人の親と祖父母とも存命のとき 祖父G――――祖母H この例では、被相続人の父D、祖父Gが存命しています。直系尊属が複数の親等間である場合は、親等の近い者を先に相続人としてカウントします。この場合は、父Dが直系尊属として相続します。 したがって、この例では、配偶者のB(相続分率2/3)と父D(相続分率1/3)が相続人になります。 |
4.「E・F及びGが相続放棄をしたときは,Cは,相続開始のときから3ヵ月以内に単純
若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」
【正解:×】 父―――― 母C 相続人は、自己のために相続の開始があったことを「“知ったとき”より3ヵ月以内」に、単純又は限定の承認若しくは放棄をしなければなりません(第915条1項)。 判例によれば、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、被相続人の死亡の事実を知り、かつ、具体的に自己が相続人になったことを知ったときとされ、通信手段が現代のように便利でなかった明治時代にできた法律であるから、このような規定がされた、と理解しておきましょう。 |