Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

相続の過去問アーカイブス 昭和50年 相続人の範囲(胎児の相続分)


 甲の配偶者が甲の子を懐胎しているうちに甲が死亡し,間もなくが生まれた。甲の親族で,ほかに生存しているのは,甲の弟の,だけである。甲の遺産に関する法定相続分について,正しいのはどれか。

1.「1/2,1/2,0」

2.「3/4,0,1/4」

3.「1/3,1/3,1/3」

4.「1/2,0,1/2」

註 昭和55年の法改正により肢1,肢2を改めました。

【解説】

   故人
  
 |
  ――――
 |     |
       甲―――――を懐胎中にが死亡〕
        死亡 |
            

◇法定相続分

 【第1順位】 子  → 【第2順位】 直系尊属 → 【第3順位】兄弟姉妹(887,889条)

 配偶者は、これらの者と同順位で、常に相続人になる。(890条)

 子は、嫡出子・非嫡出子を問わず第1順位。

 直系尊属は、被相続人に子またはその代襲相続者がいると、相続人にはならない。

 兄弟姉妹は、子・直系尊属がいると、相続人にはならない。

配偶者と子が相続人のときは、配偶者1/2、子全体1/2

嫡出子が複数いる場合は、各自の相続分は相等しい(非嫡出子はその1/2)

配偶者と直系尊属が相続人のときは、配偶者2/3、直系尊属1/3

配偶者と兄弟姉妹が相続人のときは、配偶者3/4、直系尊属1/4

 胎児は権利能力を持たないのが原則ですが,民法では,例外的に胎児が権利能力を持つ場合が三つあります。

   ・不法行為に基づく損害賠償請求権(721条)
   
・相続権を持つこと(886条)
   
・遺贈の受遺者となること(965条)

 胎児が将来生まれてきた場合に,胎児であったときに起きていた法律関係からの利益を民法では保護しようとしているわけです。

 1条の3 私権の享有は出生に始まる。
       出生…胎児が母体から全部露出すること。(民法での通説)
             刑法では出生一部露出説(判例・通説)

 886条
 1項 胎児は,相続については,既に生まれたものとみなす。

 2項 前項の規定は,胎児が死体で生まれてきたときは,これを適用しない。

 721条
 胎児には損害賠償の請求権については既に生まれたるものとみなす。 

 965条
 第886条〔胎児の相続能力〕及び第891条〔相続人の欠格事由〕の規定は,受遺者に
 これを準用する。

 本問題では甲の死亡時に胎児であったが生まれているので弟の相続権はありません。被相続人の兄弟姉妹は,被相続人の子や直系尊属がいる場合には,相続人になりません。

 本問題では,甲の妻の法定相続分が1/2,甲の死亡時に胎児であった子の法定相続分が1/2になります。

【正解

× × ×

さて,本問題では胎児が無事に生まれてきましたが,もしが死んで生まれてきたときはの夫婦間には子がいなかったことになるので,の配偶者の相続分が3/4の弟の相続分が1/4ということになります。


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