Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

相続の過去問アーカイブス 昭和58年 相続人の範囲 法定相続分


【正解】

× × ×

は4,200万円相当の土地及び建物を遺産として残して死亡した。には配偶者があり,との間に子がいる。との間にはのほかに子もいたが,の死亡の2年前に既に死亡しており,その子12が残されている。にはさらに非嫡出子がいる。この場合の民法の規定に基づく法定相続分に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1.「が2,100万円,がそれぞれ700万円,12がそれぞれ350万円の相続分を取得する。」

2.「が2,100万円,12がそれぞれ600万円,が300万円の相続分を取得する。」

3.「が2,100万円,が1,400万,が700万円の相続分を取得する。」

4.「が2,100万円,が840万円,12がそれぞれ420万円の相続分を取得する。」

【正解:4

◇相続人の範囲の決定

 ―――――――――――――――某
    |   被相続人       
  ――――           |
  |     |           |
      ――Cの妻   (非嫡出子)
      死亡
      ――――
     |     |
     1    2

 が死亡していますが、の子12を代襲しての相続人になります。

 本問題設定では、相続人は、配偶者、子、子の代襲相続人12、非嫡出子の5人になります。 

◇法定相続分

 【第1順位】 子  → 【第2順位】 直系尊属 → 【第3順位】兄弟姉妹(887,889条)

 配偶者は、これらの者と同順位で、常に相続人になる。(890条)

 子は、嫡出子・非嫡出子を問わず第1順位。

 直系尊属は、被相続人に子またはその代襲相続者がいると、相続人にはならない。

 兄弟姉妹は、子・直系尊属がいると、相続人にはならない。

配偶者と子が相続人のときは、配偶者1/2、子全体1/2

嫡出子が複数いる場合は、各自の相続分は相等しい(非嫡出子はその1/2)

 この原則から、法定の相続分率(相続人の相続の割合)

 配偶者は1/2、子全体で1/2

 子全体

 子全体 : 1/2 を、嫡出子全体 : 非嫡出子全体=4 : 1 に配分する 

 ∵嫡出子はB,Cの二人いて、非嫡出子は一人であり、
   嫡出子は、非嫡出子の2倍の取り分があるので、
   B : C : D = 2 : 2 : 1

 ∴嫡出子全体では子全体の4/5, 非嫡出子全体では子全体の1/5

 子           子: 1/2×4/5×1/2=1/5
               ↑       ↑
              子全体     で分けるから
 子C  子C : 1/2×4/5×1/2=1/5 なので、これを1,2で分ける

   子の代襲相続人1 : 1/5×1/2=1/10

    子の代襲相続人2 : 1/5×1/2=1/10

非嫡出子  非嫡出子: 1/2×1/5=1/10

 となります。したがって、法定の相続分額(相続人の相続の割合の評価額)は、以下のようになります。

 配偶者: 4,200万円×1/2 = 2,100万円

 子: 4,200万円×1/5 = 840万円

 子の代襲相続人1 : 4,200万円×1/10 = 420万円

 子の代襲相続人2 : 4,200万円×1/10= 420万円

 非嫡出子: 4,200万円×1/10=420万円

子の一人あたりの相続分率の公式

 嫡出子 m人、非嫡出子 n人がいる場合の、

 嫡出子・非嫡出子の1人が相続する法定相続分率は、以下の公式で計算します。

(1) 被相続人の配偶者がいる場合 相続人 : 妻、嫡出子 m人、非嫡出子 n

 嫡出子の1人  1 ×(   2 ),     非嫡出子の1人  1 ×(   1  
 ― ――――  ― ――――
 2  2mn  2  2mn  

(2) 被相続人の配偶者がいない場合 相続人 : 嫡出子 m人、非嫡出子 n

 嫡出子の1人     2 ),     非嫡出子の1人     1  
  ――――   ――――
   2mn    2mn   

 (1),(2)とも、m = 0, または n = 0 のような特殊な場合でも成り立つ。

●嫡出子と非嫡出子の相続分の公式

 嫡出子m人、非嫡出子n人がいる場合の、

 嫡出子・非嫡出子の一人が相続する法定相続分は、以下の公式で計算します。

(1) 被相続人の配偶者がいる場合 相続人 : 配偶者、嫡出子m人、非嫡出子n

 嫡出子  1 ×(   2 ),     非嫡出子  1 ×(   1  
 ― ――――  ― ――――
 2  2mn  2  2mn  

(2) 被相続人の配偶者がいない場合 相続人 : 嫡出子m人、非嫡出子n人

 嫡出子     2 ),     非嫡出子     1  
  ――――   ――――
   2mn    2mn   

●上の公式が納得のいかない人に
1) 子供がm人+n人いたとします。

嫡出子はm人、非嫡出子はn人です。

嫡出子は1人2つのハンバーガーを持っていて、非嫡出子は1人1つのハンバーガーを持っていたとします。

2) それでは、嫡出子全体では幾つのハンバーガーを持っているか?
―当然、嫡出子全体では、1人2個×m人=2m 個

非嫡出子全体では幾つのハンバーガーを持っているか?
―当然、非嫡出子全体では、1人1個×n人= n 個

3) 子供たちの持っているハンバーガー全体の 2m +n 個のうち、

 2m 個嫡出子全体で持っているので、
 嫡出子のグループは、『2m +n 分の 2m』の比率のハンバーガーを持っています。

 n 個非嫡出子全体で持っているので、
 非嫡出子のグループは、『2m +n 分の n』の比率のハンバーガーを持っています。

4) 嫡出子1人あたりでは、『2m +n 分の 2m』を m 人で割ると『2m +n 分の
  または、嫡出子全体で『2m +n 分の 2m』で一人がもっているのは個だから
       1人が持っている比率は『2m +n 分の

  非嫡出子1人あたりでは、『2m +n 分のn』を n 人で割ると『2m +n 分の 1
  または、非嫡出子全体で『2m +n 分の n』で一人がもっているのは個だから
       1人が持っている比率は『2m +n 分の 1

この公式を用いる方法は、連比を使って解く方法と原理的には変わらず、中身は全く同一の発想から作られたものです。内容を理解すれば、"メンドウ"ではなく、瞬時に答えが出せます。


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