Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

相続の過去問アーカイブス 昭和63年 遺留分・甥の相続・相続放棄


【正解】

× × ×

相続に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。

1.「被相続人の甥は,常に相続人となることはない。」

【正解:×

◆相続人の甥・姪は代襲相続のみ

 被相続人に、子・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)がいないときには、兄弟姉妹が相続人になりますが、その兄弟姉妹が死亡していても、甥や姪がいれば、その甥や姪が被相続人の兄弟姉妹の代襲相続人になります。

 このように、甥・姪は、代襲相続人になることがありえるので「常に」相続人とならない、というのは×になります。

代襲相続

 被相続人の死亡以前に、相続人となるはずの「子」・「兄弟姉妹」が相続権を失ったとき(死亡・廃除・欠格事由)に、その者(被代襲者)の直系卑属(相続人となるはずの者が兄弟姉妹のときはその子に限る)がその者に代わって相続すること。(ただし、代襲相続人は被相続人の直系卑属でなければならないことに注意。)

 要注意 : 相続放棄では、代襲相続を生じない

●被相続人の子が
  
相続人になるべき時           
●被相続人の兄弟姉妹が
  
相続人になるべき時

代襲相続人は子の直系卑属

 被相続人
 |
 相続人となるはずの者
 |死亡
 
 |
 
○直系卑属・・・子・孫・曾孫・玄孫〜

代襲相続人は兄弟姉妹の子に限る。

  ――――――――
  |           |
  被相続人    相続人となるはずの者
             |死亡
             

(被相続人に、子・直系尊属がいないときは、
兄弟姉妹が相続人になる。)

相続人となるべき子が死亡した場合は、その孫が代襲相続人になることはありえるが、相続人となるべき兄弟姉妹が死亡した場合には、その孫が代襲相続人になることはない。 

2.「遺留分は,すべて被相続人の財産の1/2である。」

【正解:×

◆遺留分

相続人が直系尊属の相続人のみ  被相続人の財産の1/3
上記以外  被相続人の財産の1/2

相続欠格・廃除・相続放棄によって相続権を失った者は,遺留分の権利も失う

被相続人の兄弟姉妹には,遺留分が認められていないこともチェックしておきましょう。(1028条)→ 平成4年・問13出題

遺留分の減殺請求権は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。相続の開始から10年経過したときも消滅します。(1042条)

●参考問題
兄弟姉妹である相続人は,遺留分として被相続人の財産の1/2を受ける。(司法書士・平成2年・問21・肢2)
【正解:×

 被相続人の兄弟姉妹には,遺留分が認められていない。

したがって、遺言で贈与又は遺贈があって、被相続人の兄弟姉妹が減殺しようと思っても、被相続人の兄弟姉妹遺留分の減殺請求をすることができないということです。

 例えば、相続人が被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹のとき、被相続人の配偶者は遺留分の減殺請求をすることができますが、被相続人の兄弟姉妹遺留分の減殺請求をすることができません。

3.「遺留分を侵害した遺言は,すべて無効である。」

【正解:×

◆遺留分を侵害した遺言

 被相続人は,遺留分を侵害する遺言はできない(902条1項),遺留分を保全するに必要な限度で減殺請求の対象になるだけ(1031条)であって,遺留分を侵害した遺言のすべてが当然に無効になるわけではありません。(最高裁・昭和37.5.29)

4.「相続の開始前においては,遺留分の放棄はできる場合があるが,相続の放棄は

常にできない。」

【正解:

◆相続開始前の遺留分の放棄

 相続の放棄は、相続の開始前に、その旨の意思表示をしても無効ですが、遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可があれば可能です。(1043条1項)

 遺留分の放棄  相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可が必要

 相続開始後の遺留分の放棄には、家庭裁判所の許可は不要。

 相続の放棄  相続開始前に、相続放棄の意思表示をしても無効(判例)

 相続開始があったことを知ってから3ヵ月以内に、家庭裁判所に
 申述
し、受理審判によって効力を生じる。

●参考問題
遺留分の放棄は,相続開始後でなければできない。(司法試験・昭和49年・問82)
【正解:×

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