Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
相続の過去問アーカイブス 平成10年・問10
相続の承認と放棄・詐欺による相続の放棄
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
相続人が,被相続人の妻Aと子Bのみである場合(被相続人の遺言はないものとする。)の相続の承認又は放棄に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成10年・問10) |
1.「相続の承認又は放棄をすべき3ヵ月の期間の始期は,AとBとで異なることがある。」
【正解:○】 ◆相続の承認・放棄の始期
相続の承認や放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3ヵ月以内に行うとなっているので、人によって始期が異なることがあります。
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2.「Aが単純承認をすると,Bは,限定承認をすることができない。」
【正解:○】 ◆単純承認と限定承認
限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に、共同相続人全員で共同して(923条)、財産目録を調製して家庭裁判所に提出し、その旨の申述をして行わなければいけません。(924条) したがって、1人でも単純承認すれば、限定承認をすることができなくなります。 |
3.「A及びBは限定承認をしたが,Bが相続財産を隠匿していたとき,相続債権者は,
相続財産をもって弁済を受けられなかった債権額の1/2について,Bに請求できる。」
【正解:○】 ◆相続財産秘匿と相続債権者 イキナリ相続債権者という用語が出てくるのでビックリしますが、大雑把に、被相続人の債権者とでも捉えておきましょう。(相続人に債権を有する債権者とは違います。) 限定承認した共同相続人が、相続財産を隠匿していた場合は、その相続人は単純承認したものとみなされました。(法定単純承認、921条) この場合、相続債権者は、その相続人Bに対し、相続財産から弁済を受けることができなかった債権額について、Bの相続分に応じた権利を行使できます。(937条) Bの相続分は1/2なので、本肢は○になります。
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4.「Aは,Bの詐欺によって相続の放棄をしたとき,Bに対して取消しの意思表示をして,
遺産の分割を請求することができる。」
【正解:×】 ◆詐欺による相続の放棄 詐欺や強迫・制限能力による場合を除いて、相続の承認や放棄は一度受理されると取消すことができませんでした。(919条1項・2項、最高裁・昭和37.5.29) 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所において申述しなければいけませんでしたが(938条)、詐欺や強迫・行為能力の制限〔制限行為能力者〕による「相続の放棄の取消」の場合もやはり、家庭裁判所において申述する必要があります。(919条3項) したがって、Aは、「詐欺による相続の放棄の取消」を、家庭裁判所において申述しなければならないので本肢は×になります。 |