Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

相続の過去問アーカイブス 平成13年・問11 相続人の範囲・法定相続分


【正解】

× × ×

被相続人の相続人の法定相続分に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。

1.「が婚姻中に生まれたの子は,の離婚の際,親権者をと定められ

たが,がその後再婚して,再婚にかかる配偶者がいる状態で死亡したときは,には

法定相続分はない。」

【正解:×

◆相続人の範囲の決定

 ―――――――――――――――Aが再婚した配偶者
   離婚    |   被相続人      (子がいるかどうかは不明)
           |          
         
       
(親権者はB)

 と離婚したには、相続権がない

 被相続人の子は、第1順位の相続人。(887条、889条)

 CはAの子であるから、BとAが離婚していても、またCの親権者がBであることも、CがAの相続人であることとは全く関係がない

  したがって,Aが死亡したとき、Aの子Cには法定相続分が認められます。(900条1項)

Aの再婚相手との間に嫡出子がいても、当然Cは相続人の1人になります。

2.「に実子がなく,3人の養子がいる場合,法定相続分を有する養子は2人に限られ

。」

【正解:×

◆養子は嫡出子−ついでに、税法との違い

 養子は嫡出子なので、Aの3人の養子は全員、法定相続分を有する。

 【第1順位】 子  → 【第2順位】 直系尊属 → 【第3順位】兄弟姉妹(887,889条)

 は、嫡出子・非嫡出子を問わず第1順位。(相続分率で違いがあるだけ。)

 子には、養子も含まれていて、養子も嫡出子になる

嫡出子が複数いる場合は、各自の相続分率は相等しい(非嫡出子はその1/2)

相続放棄した者は、相続人にはカウントしない。
 ( 欠格事由に該当する者、廃除された者には、代襲相続があるので注意。)

本肢は、下記に示したとおり、相続税法上の法定相続人の取扱いとの混同を狙い撃ちにしたものです。そういうことであれば、逆に対策ができるというもので、非常にアリガタイ出題といえるでしょうね。(皮肉だということ、わかります?)

●税法と民法の違い

 税法では、法定相続人のなかに養子がいる場合、相続税法上の法定相続人の数カウントする際に制限があります。『相続税の基礎控除額が法定相続人の数が多ければ多いほど高くなる』ことに目をつけ、実子のほかに「養子」を多く迎えて、相続税法上の法定相続人の数を水増しして節税するケースがあったため制限されています。

 税法では、実子がある場合は養子のうちの1人だけを法定相続人としてカウントし、実子が1人もいない場合養子のうち2人までを法定相続人としてカウントします。

 このほかにも、民法と税法とで取扱いの違うものがあります。(以下に挙げたもののほかにもあります。)

・『相続放棄(=税法では、相続放棄した者がいても、放棄はなかったものとして法定相続人の数にいれる。)

・『寄与分(=税法では認めていない。)

3.「が死亡し,配偶者及びその2人の子供で遺産分割及びそれに伴う処分

を終えた後,認知の訴えの確定により,さらに摘出でない子が1人いることが判明した。

の法定相続分は1/6である。」

【正解:×

◆遺産分割後に認知された非嫡出子−『相続分の価額の支払の請求権』

 ―――――――――――――――某
    |   被相続人       
  ――――           |
  |     |           |
      F         (非嫡出子)

 この場合、相続人は、妻、嫡出子、非嫡出子、の4人です。 

 の死後に認知の訴えをして「の子であること」を認知されています。認知されると出生のときに遡ってその効力を生じ、認知された子は、の相続人として扱われます。

 非嫡出子Gの相続分は、下記の公式(1)に、m=2、n=1 を代入して 1/10

 (E : F : G = 2 : 2 : 1 として、1/2×1/5=1/10 とする連比を使って解く方法もあります。)

 既に遺産分割に伴う処分がされているので、Gは、遺産分割のやり直しは請求できませんが、相続分に相当する価額の請求権があるので、相続分の価額の支払の請求をすることになります。(910条)

 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割をしようとする場合において,他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。(910条)

 相続開始後に認知された者であっても遺産分割の終了や特定の財産の処分が終わっていなければ遺産分割の請求をすることができます。

●嫡出子と非嫡出子の相続分の公式

 嫡出子m人、非嫡出子n人がいる場合の、

 嫡出子・非嫡出子の一人が相続する法定相続分は、以下の公式で計算します。

(1) 被相続人の配偶者がいる場合 相続人 : 配偶者、嫡出子m人、非嫡出子n

 嫡出子  1 ×(   2 ),     非嫡出子  1 ×(   1  
 ― ――――  ― ――――
 2  2mn  2  2mn  

(2) 被相続人の配偶者がいない場合 相続人 : 嫡出子m人、非嫡出子n人

 嫡出子     2 ),     非嫡出子     1  
  ――――   ――――
   2mn    2mn   

4.「に子が3人あり、の死亡の際、2人は存命であったが,1人は既に死亡していた。

その死亡した子には2人の嫡出子がいた。死亡の際,配偶者もいなかった場合,

の法定相続分は1/6である。」

【正解:

◆代襲相続

  ―――――配偶者(Aの死亡時にはいなかった)
被相続人 |
     ――−――――
     |    |     |
     子1  子2    子3
                |死亡
               ―――― 
              |    |
                  

  この場合、配偶者がいないので、相続人は、子1子2子3の代襲相続人の嫡出子の4人です。嫡出子3人として計算します。代襲相続人が何人いても、子3の分はあくまでも嫡出子1人分の相続分として扱うからです。∴子1:子2:子3=1:1:1

 相続開始以前に被相続人の子が死亡しているときは、その死亡した者の直系卑属が代襲して相続人となります。本肢では、死亡した子3の直系卑属はだけなので、死亡している子3本来相続すべきであった相続分1/3の二人で分け合うことになります。したがって、の法定相続分は1/6になります。

代襲相続

 被相続人の死亡以前に、相続人となるはずの「子」・「兄弟姉妹」が相続権を失ったとき(死亡・廃除・欠格事由)に、その者(被代襲者)の直系卑属(相続人となるはずの者が兄弟姉妹のときはその子に限る)がその者に代わって相続すること。(ただし、代襲相続人は被相続人の直系卑属でなければならないことに注意。)

 要注意 : 相続放棄では、代襲相続を生じない

●被相続人の子が
  
相続人になるべき時           
●被相続人の兄弟姉妹が
  
相続人になるべき時

代襲相続人は子の直系卑属

 被相続人
 |
 相続人となるはずの者
 |死亡
 
 |
 
○直系卑属・・・子・孫・曾孫・玄孫〜

代襲相続人は兄弟姉妹の子に限る。

  ――――――――
  |           |
  被相続人    相続人となるはずの者
             |死亡
             

(被相続人に、子・親がいないときは、
被相続人の兄弟姉妹が相続人になる。)


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