Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
贈与の問題2 平成10年・問9
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
Aは,Bから建物を贈与(負担なし)する旨の意思表示を受け,これを承諾したが,まだBからAに対する建物の引渡し及び所有権移転登記はされていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(平成10年・問9) |
1.「贈与が書面によらない場合であっても,Aが第三者Cに対して本件建物を売却する
契約を締結した後は,Bは,本件贈与を撤回することができない。」(類:平成3年)
【正解:×】 ◆書面によらない贈与 B(贈与者)―――A(受贈者) 書面によらない贈与契約では、各当事者は、履行の終わった部分については撤回することができません。(民法550条) 贈与契約で履行が終了したと言えるには、不動産の場合は、不動産の登記または引渡し(現実の引渡しではなく簡易の引渡しでもよいとされる)が必要でした。(判例) 本設問では、A(受贈者)は登記も引渡しも受けていないので、履行が終了したとは言えません。したがって、B(贈与者)は本件贈与を撤回することができます。 ▼Aが第三者Cに対して本件建物を売却する契約を締結したというのは、B(贈与者)の履行とは関係がないノイズなので、惑わされないようにしましょう。 平成3年の問題の設問1の解説で、
このことを学んでいますが、期せずしてこの復習になっていますね。 |
2.「贈与が書面によるものである場合で,Bが建物の所有権移転登記に応じないとき,
Aは,Bに対して当該登記を求める訴えを裁判所に提起することができる。」(関連:平成3年)
【正解:○】 ◆書面による贈与契約は撤回することができない 書面による贈与契約は、各当事者は、撤回することができません。(550条) 贈与契約は、一方の当事者(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表明して、相手方が受諾することによって成立するので、本設問の場合、書面による贈与契約で撤回ができない以上、Bが承諾した時点で契約は成立し、登記のあるなしにかかわらず、建物の所有権はBからAに移っています。 したがって、建物の所有権を有するAは、Bに対して所有権移転登記の請求をすることができますし〔贈与者への履行の催告〕、Bが建物の所有権移転登記に応じないならば、当該登記を求める訴えを裁判所に提起することができます。〔債務不履行(履行遅滞)により、強制履行〕 ▼贈与契約が成立すると、贈与者は目的物の移転義務を負い、その移転までは目的物を善良なる管理者の注意をもって保管しなければなりません。この善管注意義務を怠ることによっても贈与者は債務不履行責任を負います。(400条) |
3.「贈与契約締結後に,本件建物にシロアリの被害のあることが判明したが,Bがその
被害の存在を知らなかった場合,Bは,シロアリの被害による建物の減価分について
Aに対し担保責任を負わない。」(類:平成3年)
【正解:○】 ◆担保責任は原則として負わない 贈与契約(負担なし)では、贈与する物や権利の瑕疵または欠陥について、原則として担保責任を負いません。ただし、目的物や権利の瑕疵や欠陥について知っているのに受贈者に告げなかった場合にのみ、責任を負うとされています。(551条1項) ▼負担付贈与契約では、双務契約の規定が準用され、受贈者の負担は有償性を帯びるため、負担の限度内で、贈与者は売主と同じ担保責任を負うものとされています。(551条2項) |
●類題 |
1.「AがBに建物を贈与(負担なし)をする際に、Aは、贈与に係る建物の瑕疵を知りながらこれをBに告げなかった場合でも、Bに対して責任を負うことはない。」(司法書士・平成5-11-4改) |
【正解:×】
贈与契約(負担なし)では、贈与する物や権利の瑕疵または欠陥について、原則として担保責任を負いませんが、目的物や権利の瑕疵や欠陥について知っているのに受贈者に告げなかった場合は、責任を負うとされています |
4.「贈与が死因贈与であった場合,それが書面によるものであっても,特別の事情が
ない限り,Bは,後にいつでも贈与を撤回することができる。」(類:平成3年)
【正解:○】 ◆死因贈与は、後の遺言によって撤回される 死因贈与は、遺贈に関する規定に従うことになっています。(民法554条)
この規定が準用され、本設問では、遺言により後で死因贈与を撤回することができます。 死因贈与 遺言で撤回 ―――●―――――●――― ▼「書面によるものであっても」というのはヒッカケのノイズです。死因贈与の書面による、よらないに関係なく、死因贈与は後の遺言で撤回することができます。 |
●書面による贈与でも撤回できる場合がある | ||||
書面による贈与でも、判例や通説によって撤回できる場合があるとされており、整理すると次のようなことになります。
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