法令上の制限 基礎編
売却・建築に関する法令上の制限の問題
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
× | ○ | × | × | ○ | × | × | ○ |
Aは、甲県内(指定都市の区域外)に、2,000平方メートルの土地を有し、当該土地に 住宅を建築し、又は当該土地を売却しようとしている。この場合に関する次の記述は 正しいか。(平成2年、問28を改変してあります。順番の変更) |
本問の共通設定は、甲県内(指定都市の区域外)に、2,000平方メートルの土地。
1.市街化調整区域内の土地 2.国定公園の特別保護地区内の土地 3.都市計画区域外の農地 4.土地収用法による事業認定の告示において起業地とされている土地 と、各肢問とも、設定が異なっていることに注意してください。 |
1.「当該土地が市街化調整区域内の土地で、当該土地を乙市に売却するときは、
Aは、公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づき、甲県知事に届出を
しなければならないが、都市計画法の規定に基づき、甲県知事に届け出る必要は
ない。」
【正解:×】
◆公有地の拡大の推進に関する法律・第4条1項の規定 公有地の拡大の推進に関する法律の規定では、以下の土地を所有する者は、土地を有償譲渡しようとするときに、市町村長を経由して都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長)に届け出なければいけません。
都市計画施設の区域内や一定の予定地・生産緑地地区でなくても、3番目の要件を満たすものは、届けなければなりませんが、第4条2項1号に、 国、地方公共団体等もしくは政令で定める法人に譲渡されるものであるとき 又は、これらの者が譲渡すものであるとき は、第4条1項の規定による届出はしなくてもよいとされています。 本設問では、「都市計画法の規定により」となっているため、不適切です。 ▼届出後のこと(この法律の重要性) 4条1項の規定による届出後3週間経過するか、または知事(市の区域内にあっては、当該市の長)から届出に係る土地の買取を希望しない旨の通知があるまでは売買契約を締結できません。また、公有地として必要と判断されると、この期間内に地方公共団体などから買取の協議を行う旨の通知(買取価格=地価公示法に定められた公示価格を基準)があり(都道府県知事が通知します)、通知の日から最長3週間は協議期間とされるため、この間も売買契約は締結できません。 また、買取の協議を行う旨の通知を受けた者は、正当な理由がなければ、土地の買取の協議を行うことを拒んではならないとされています。 |
2.「当該土地が国定公園の特別保護地区内の土地で、当該土地をBに売却する
ときは、Aは、自然公園法の規定に基づき、甲県知事に届け出る必要はない。」
【正解:○】
◆国立公園・国定公園の特別保護地区 自然公園法・河川法に関する問題でご説明しましたように、国立公園・国定公園の特別保護地区(特別地域内に指定されます)には、特別地域の許可必要項目に加えて、 木竹の損傷・植裁、木竹以外の植物や落葉の採取、家畜の放牧、動物の捕獲、 焚火、屋外の物の集積・貯蔵、道路や広場以外での車馬・動力船の使用・航空機の 着陸 (自然公園法・第18条3項) などまであらかじめ許可を必要とする、厳しい規制が行われています。 しかし、特別保護地区内の土地の売却には、届出義務はありません。 |
3.「当該土地が都市計画区域外の農地で、当該土地に住宅を建築するときは、
Aは、農地法の規定に基づき甲県知事の許可を、また、都市計画法の規定に
基づき甲県知事の許可をそれぞれ受けなければならない。」
【正解:×】
◆都市計画区域外の農地 例え、都市計画区域外であっても、農地に住宅を建築するときは、農地法4条1項 により、農地の転用について、都道府県知事(4ha超は農林水産大臣)の許可を受け なればなりません。 しかし、都市計画区域外の土地に住宅を建築する事について、都市計画法の規定 による許可を受ける必要はありません。 |
4.「当該土地が土地収用法による事業認定の告示において起業地とされている
土地で、当該土地に住宅を建築するときは、Aは、同法の規定に基づき、甲県
知事に届出をしなければならない。」
【正解:×】
◆土地収用法による事業認定の告示において起業地になっている場合 起業地において事業の認定の告示があった後は、都道府県知事の許可を受け なければ、明らかに事業に支障を及ぼすような土地の形質の変更はしてはならな いとされています。(土地収用法・28条の3・1項) 都道府県知事は、土地の形質の変更については、 ・起業者の同意がある場合 ・災害の防止その他正当な理由に基づき必要がある場合 に限って、許可をすることになっています。(土地収用法・28条の3・2項) |
5.「都市計画法によれば,都市計画事業地内において,都市計画事業の施行の
障害となるおそれがある土地の形質の変更を行う者は,原則として都道府県知事等の
許可を受けなければならない。」(H14-24-3) 頻出問題
【正解:○】
◆都市計画事業地内での建築等の制限 都市計画事業の認可または承認の告示があった後は、当該都市計画事業地内で、次の行為のうち都市計画事業の施行の障害となる恐れがある場合は、都道府県知事等の許可を受けなければいけません。(都市計画法・65条) ・土地の形質の変更 ・建築物の建築、工作物の建設 ・重量が5トンを超える物件の設置又は堆積 |
6.「公有地の拡大の推進に関する法律によれば、都市計画区域内に存在する土地で、
かつ、都市計画施設の区域内にあるものを所有する者は、その土地を有償で譲り渡そうとする
ときは、市町村に譲り渡す場合であっても、原則として、その土地の所在および面積、
譲渡予定価額等を都道府県知事(市の区域内にあつては、当該市の長) に
届け出なければならない。」(昭和60-27-2)
【正解:×】
◆都市計画区域内の土地を有償で譲り渡そうとするときの届出 都市計画区域内に所在する土地で、公有地の拡大の推進に関する法律4条1項各号のものを所有する者は、当該土地を有償で譲り渡そうとするときは、原則として、その土地の所在および面積、譲渡予定価額等を都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長)に届け出なければなりません。 しかし、この規定は、 ・国・地方公共団体等に譲り渡すものであるとき ・国・地方公共団体等が譲り渡すものであるとき ・当該土地を無償で譲り渡そうとするとき ・都市計画施設又は土地収用法第3条に掲げる施設に関する事業その他これらに準ずるものとして政令で定める事業の用に供するために譲り渡されるものであるとき。 ・国土利用計画法の規制区域内の土地であるとき ・国土利用計画法の規定による注視区域・監視区域の届出を要するものであるとき。(国土利用計画法第27条の4第1項又は第27条の7) は、適用されません。 |
●公有地の拡大の推進に関する法律4条 |
第4条 次に掲げる土地を所有する者は、当該土地を有償で譲り渡そうとするときは、当該土地の所在及び面積、当該土地の譲渡予定価額、当該土地を譲り渡そうとする相手方その他主務省令で定める事項を、主務省令で定めるところにより、当該土地が町村の区域内に所在する場合にあつては当該町村の長を経由して都道府県知事に、当該土地が市の区域内に所在する場合にあつては当該市の長に届け出なければならない。 1.都市計画施設(土地区画整理事業(土地区画整理法(昭和29年法律第119号)による土地区画数理事業をいう。以下同じ。)で第3号に規定するもの以外のものを施行する土地に係るものを除く。)の区域内に所在する土地 2.都市計画区域内に所在する土地で次に掲げるもの(次号に規定する土地区画整理事業以外の土地区画数理事業を施行する土地の区域内に所在するものを除く。) イ 道路法(昭和27年法律第180号)第18条第1項の規定により道路の区域として決定された区域内に所有する土地 ロ 都市公園法(昭和31年法律第79号)第23条第1項又は第2項の規定により都市公園を設置すべき区域として決定された区域内に所在する土地 ハ 河川法(昭和39年法律第167号)第56条第1項の規定により河川予定地として指定された土地 ニ イからハまでに掲げるもののほか、これらに準ずる土地として政令で定める土地 3.新たな市街地の造成を目的とする土地区画整理事業で、都道府県知事が指定し、主務省令で定めるところにより公告したものを施行する土地の区域内に所在する土地 4.都市計画法第12条第2項の規定により住宅街区整備事業の施行区域として定められた土地の区域内に所在する土地 5.都市計画法第8条第1項第14号に掲げる生産緑地地区の区域内に所在する土地 6.前各号に掲げる土地のほか、都市計画区域(都市計画法第7条第1項 に規定する市街化調整区域を除く。)内に所在する土地でその面積が2,000平方メートルを下回らない範囲内で政令で定める規模以上のもの 2 前項の規定は、同項に規定する土地で次の各号のいずれかに該当するものを有償で譲り渡そうとする者については、適用しない。 1.国、地方公共団体等若しくは政令で定める法人に譲り渡されるものであるとき、又はこれらの者が譲り渡すものであるとき。 2.文化財保護法(昭和25年法律第214号)第46条(同法第56条の14において準用する場合を含む。)又は大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和50年法律第67号)第87条の規定の適用を受けるものであるとき。 3.都市計画施設又は土地収用法(昭和26年法律第219号)第3条各号に掲げる施設に関する事業その他これらに準ずるものとして政令で定める事業の用に供するために譲り渡されるものであるとき。 4.都市計画法第29条第1項又は第2項の許可を受けた開発行為に係る開発区域に含まれるものであるとき。 5.都市計画法第52条の3第1項(第57条の4において準用する場合を含む。)の公告の日の翌日から起算して10日を経過した後における当該公告に係る市街地開発事業等予定区域若しくは同法第57条の2に規定する施行予定者が定められている都市計画施設の区域等内の土地の区域に含まれるものであるとき、同法第57条第1項の公告の日の翌日から起算して10日を経過した後における当該公告に係る同法第55条第1項に規定する事業予定地に含まれるものであるとき、又は同法第66条の公告の日の翌日から起算して10日を経過した後における当該公告に係る都市計画事業を施行する土地の区域に含まれるものであるとき。 6.前項の届出に係るものであつて、第8条に規定する期間の経過した日の翌日から起算して1年を経過する日までの間において当該届出をした者により有償で譲り渡されるものであるとき。 7.国土利用計画法(昭和49年法律第92号)第12条第1項の規定により指定された規制区域に含まれるものであるとき。 8.国土利用計画法第27条の4第1項又は第27条の7第1項に規定する土地売買等の契約を締結する場合に第27条の4第1項(第27条の7第1項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による届出を要するものであるとき。 9.その面積が政令で定める規模未満のものその他政令で定める要件をみたすものであるとき。 |
7.「新住宅市街地開発事業の施行者から、建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者
(その承継人を含む。)は、新住宅市街地開発法の規定に基づき、原則として、その譲り
受けの日から起算して10年以内に、処分計画で定める規模および用途の建築物を
建築しなければならない。」(昭和60-27-1)
【正解:×】
◆新住宅開発事業の施行者から宅地を譲り受けた場合は5年以内に建築 新住宅市街地開発法からの出題です。その譲受けの日の翌日から起算して5年以内でなければいけないので、本設問での「10年以内」は誤りです。 通例、その他の法令からの出題は許可権者、届出先を問うものが多いのですが、本設問のように期限を訊いてくる場合もあります。 |
●条文確認 |
(建築物の建築義務) 第31条 施行者又は第23条第二項の規定により処分計画に定められた信託を引き受けた信託会社等(以下「特定信託会社等」という。)から建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者(その承継人を含むものとし、国、地方公共団体、地方住宅供給公社、特定信託会社等その他政令で定める者を除く。)は、その譲受けの日の翌日から起算して5年以内に、処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならない。 (造成宅地等に関する権利の処分の制限) 一 当事者の一方又は双方が国、地方公共団体、地方住宅供給公社その他政令で定める者である場合 二 相続その他の一般承継により当該権利が移転する場合 三 滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売(その例による競売を含む。)又は企業担保権の実行により当該権利が移転する場合 四 土地収用法 (昭和26年法律第219号)その他の法律により収用され、又は使用される場合 五 その他政令で定める場合 |
8.「流通業務市街地の整備に関する法律によれば、流通業務地区において住宅を
建設しようとする者は、原則として都道府県知事(市の区域内にあつては、当該市の長)
の許可を受けなければならない。」
(H13-24-4)
【正解:○】
◆流通業務地区での住宅の建設 流通業務市街地の整備に関する法律5条1項において次のように定められています。 第5条 (流通業務地区内の規制) 何人も、流通業務地区においては、次の各号の一に該当する施設以外の施設を建設してはならず、また、施設を改築し、又はその用途を変更して次の各号の一に該当する施設以外の施設としてはならない。ただし、都道府県知事(市の区域内にあつては、当該市の長) が流通業務地区の機能を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。 |