法令上の制限 基礎編

建築基準法・防火地域と準防火地域

●防火地域と準防火地域に共通する規定

正解・解説


【注意】このページの下に、根拠条文を掲載しました。

【正解】

× × ×

建築基準法および都市計画法の規定によれば、次の記述は○か、×か。

1.「防火地域又は準防火地域は、市街化区域内に<市街地における火災の危険を

防除するため定める地域>であり市町村が。所定の手続を経て都市計画として指定

するもので、都市計画ではその位置、区域および面積を定める。」

【正解:×復習

◆都市計画区域内に定める

 地域地区(都市計画法・8条)は都道府県が定めるものと市町村が定めるものとわかれており(都市計画法・15条1項)、防火地域・準防火地域は市町村が都市計画区域内に定めるものです。

 市町村は、位置、区域および面積(都市計画法・8条2項1号、施行令4条)を定めます。

 本問では、市街化区域内となっているため、不適切です。

なお、<市街地における火災の危険を防除するため定める地域>という規定は正しく、都市計画法9条18項の規定通りです。

2.「建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その面積の大きい地域

内の建築物に関する規定を適用する。」(H1-22-4) 【類題】H9-23-4

【正解:×

◆2つ以上の地域にまたがる場合=厳しいほうの規定になる

 建築物(敷地ではない事に注意!)防火 or 準防火地域の内外にわたる場合は、

安全性の見地から、その建築物の全部について、

制限の厳しい方の地域の建築物に関する規定が適用されます。(67条1項・2項)

ア.防火地域と準防火地域にまたがる場合  →防火地域の規制を受ける

イ.防火地域と未指定区域にまたがる場合  →防火地域の規制を受ける

ウ.準防火地域と未指定区域にまたがる場合 →準防火地域の規制を受ける

敷地が2つの地域にまたがっていても、制限の厳しくないほうの敷地部分のみに建築物を建てるなら、勿論、厳しいほうの規定を適用する必要はありません。

防火壁で区画すると例外

 2つの地域に建築物がまたがっていても、その建築物の制限が厳しいほうの地域外において防火壁で区画されているときは、その防火壁外部分については、厳しくない地域そのままの規定に従った構造でよいとされています。(67条1項・2項)

<参考>2つ以上の区域が異なる地域にわたる場合で、面積が決めるものは?

 ・建築物の敷地が、用途制限の異なる地域にわたる場合は、敷地の過半の属する地域の用途制限に従う。

 ・建蔽率・容積率は、加重平均以下にする。

3.「防火地域又は準防火地域内においては、建築物の屋根はすべて耐火構造又は

準耐火構造としなければならない。」(H9-23-2)

【正解:×

◆屋根の構造 ●法改正部分

 防火地域又は準防火地域に指定された市街地は、通常の区域よりも建物が稠密で、火の粉の大きさも大きくなる事が予想されます。このため、市街地における通常の火災による火の粉によって、屋根が発炎する事、屋根が燃えぬけることによって火災が副次的に発生する事を防止する目的で、性能の規定化が図られました。

 これは具体的には、

 1.不燃材料でつくったもの又はふいたもの

 2.準耐火構造の屋根(屋外に面する部分は準不燃材料)

 3.耐火構造の屋根の屋外面に断熱材および防水材を張ったもの

とされています。 (建設省告示、平成12年5月25日、365ね1)

本問の場合、「建築物の屋根はすべて耐火構造又は準耐火構造」となっているため、不適切になります。

建築基準法63条

 「防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の構造は、

市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために

屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。」 

旧法(建築基準法63条)

 防火地域又は準防火地域内においては、建築物の屋根で耐火構造又は準耐火構造でないものは、不燃材料で造り、又はふかなければならない。

22条区域(屋根不燃区域ともいう)
◆22条区域

 22条区域は、区域内の建築物の屋根を不燃化すること等を目的として、防火地域でも準防火地域でもない区域に、特定行政庁が所定の手続を経て指定します。(法22条)

 この区域では、以下の制限があります。

屋根の防火措置 →22条、施行令109条

外壁の防火措置 →23条

木造特殊建築物等の防火措置 →24条

 このうち、重要なのは、屋根の防火措置です

 平成12年5月24日の建設省告示1361号において、

 施行令109条の技術的水準に適合する屋根の構造方法は、防火地域・準防火地域の屋根の構造の技術的水準に適合するものとされました。

4.「防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼の

恐れのある部分に、準遮炎性能を有するもので、防火戸その他の政令で定める

防火設備を設けなければならない。」

【正解:

◆外壁開口部、旧法との比較に注意! ●法改正部分

 本設問の記述の通りです。

●準遮炎性能

 耐火・準耐火建築物では、外壁の開口部で延焼の恐れのある部分には、遮炎性能が要求されていました。これは、「屋内で発生する火災」「建築物の周囲で発生する火災」の両方に対する性能を要求されているためでした。

 防火地域・準防火地域の準遮炎性能では想定しているものが「建築物の周囲で発生する火災」であると言う点、火焔を出さない部分が「屋内に面するもの」に限られている点などに、遮炎性能との違いになっています。

 皆様もお気づきのように、この準遮炎性能は、防火地域・準防火地域で、耐火・準耐火建築物ではないものに対して、要求されているわけです。(耐火・準耐火建築物では、すでに遮炎性能を有しているため)

5.「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについて

は、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」(H9-23-3)

【正解:

◆耐火構造の外壁があれば、隣地境界線に接してもよい●法改正ナシ

 民法では、隣地境界線から50cm以上離さなければならないと定めています。

 しかし、この設問の要件を満たしていれば、建築基準法では緩和されて、離

す必要がありません。つまり、外壁を隣地境界線に接して設けることができます。

外壁が耐火構造であれば、延焼の恐れがないとみなされているからです。

 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものは、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。(建築基準法65条) 

【関連】 民法234条〜236条 境界線付近の建築 

     建築基準法65条は、この特例規定になっています。


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防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の性能に関する技術的基準

 建築基準法・施行令 第136条の2の2  

 法第63条の政令で定める技術的基準は、次の各号(不燃性の物品を保管する倉庫その他これに類するものとして国土交通大臣が定める用途に供する建築物又は建築物の部分でその屋根以外の主要構造部が準不燃材料で造られたものの屋根にあつては、第1号)に掲げるものとする。

1.屋根が、市街地における通常の火災による火の粉により、防火上有害な発炎をしないものであること。

2.屋根が、市街地における通常の火災による火の粉により、屋内に達する防火上有害な溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。

法第22条第1項の

市街地の区域内にある建築物の屋根の性能に関する技術的基準

第109条の5  法第22条第1項の政令で定める技術的基準は、次の各号(不燃性の物品を保管する倉庫その他これに類するものとして国土交通大臣が定める用途に供する建築物又は建築物の部分で、屋根以外の主要構造部が準不燃材料で造られたものの屋根にあつては、第1号)に掲げるものとする。

1.屋根が、通常の火災による火の粉により、防火上有害な発炎をしないものであること。

2.屋根が、通常の火災による火の粉により、屋内に達する防火上有害な溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。

防火戸その他の政令で定める防火設備
 その構造が準遮炎性能(建築物の周囲において、発生する通常の火災時における火災を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能)に関して、政令で定める技術的水準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。(法64条)

準遮炎性能に関する技術的基準

建築基準法施行令 136条の2の3

 法第64条の政令で定める技術的基準は、防火設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであることとする。


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