法令上の制限 基礎編
建築基準法・建築協定
過去問アーカイブス 昭和57年・問22
建築基準法上の建築協定に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和57年・問22) |
1.「1人の所有者だけが存し,他に所有者も借地権者も存しない土地の区域においては,当該所有者は建築協定を定めることはできない。」 |
2.「建築協定は,原則として土地の所有者及び借地権者の全員の合意が必要であるが,借地権が設定されている土地の部分については借地権者の合意だけで足りる。」 |
3.「建築協定は,土地の所有者の全員の合意があれば足り,借地権者の合意は不要である。」 |
4.「建築協定は,土地の所有者及び借地権者の全員の合意があれば,どのような地域であっても定めることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「1人の所有者だけが存し,他に所有者も借地権者も存しない土地の区域においては,当該所有者は建築協定を定めることはできない。」 |
【正解:×】 ◆土地所有者が1人ならば,1人でも建築協定を定めることができる。 「市町村が建築協定を締結できる旨を条例で定めている区域」(69条)内の土地所有者が1人だけで,ほかに所有者等がいない場合には,特定行政庁の認可を受けて,当該所有者が1人で建築協定を定めることができます。(76条の3第1項) 当初は1人の土地所有者でも,開発や土地の分譲により,借地権者や土地所有者が増えていく可能性があるので1人でも建築協定を定めることができるわけです。 この協定は,認可の日から3年以内に協定区域内の土地に2人以上の土地所有者等が存することになったときから通常の建築協定になります。 |
2.「建築協定は,原則として土地の所有者及び借地権者の全員の合意が必要であるが,借地権が設定されている土地の部分については借地権者の合意だけで足りる。」 |
【正解:○】 ◆借地権の目的となっている土地では借地権者の合意で足りる 建築協定書については,原則として,土地の所有者等の全員の合意が必要ですが,借地権の目的となっている土地の場合は,借地権者の合意だけで足り,必ずしもその土地の所有者の合意は必要ではありません。(70条3項) 建築協定は,土地所有者等の合意があっただけではダメで,建築協定書を作成した後,代表者が特定行政庁に提出して特定行政庁の認可を受ける必要があります。 |
3.「建築協定は,土地の所有者の全員の合意があれば足り,借地権者の合意は不要である。」 |
【正解:×】 ◆建築物の所有を目的とする地上権者・賃借権者の合意も必要 建築協定は,土地所有者だけではなく,借地権者(建築物の所有を目的とする地上権または賃借権を所有する者)の全員の合意も必要とします。(70条3項) 現にその区域の土地を利用している借地権者の意向も建築協定書には盛り込まれる必要があるからです。土地所有者のみで建築協定を定めると借地権者の利益を害するものになってしまう可能性があるからです。 |
4.「建築協定は,土地の所有者及び借地権者の全員の合意があれば,どのような地域であっても定めることができる。」 |
【正解:×】 ◆建築協定を締結できる旨の条例が市町村になければ協定はできない。 建築協定制度は,市町村がその区域の一部について,住宅地としての環境又は商店街としての利便を高度に維持増進する等建築物の利用を促進し,かつ,土地の環境を改善するために必要と認める場合において,当該区域内について協定を締結することができる旨の条例を制定することができます。(69条) つまり,建築協定を締結できる旨の市町村の条例が前提となるので,いくら土地の所有者及び借地権者の全員の合意があっても,その条例がなければ定めることはできません。 |