法令上の制限 基礎編
建築制限に関する問題2
工事完了公告後の建築制限
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | |
○ | × | × |
次のそれぞれの記述は、都市計画法の規定によれば○か、×か。 |
1.「開発許可を受けた開発区域内では、工事完了の公告があった後は原則
として予定建築物以外の建築物を新築・新設することはできないが、用途地
域が定められているときは、この限りではない。」(類・H13-19-3)
【正解:○】 ◆開発許可を受けた土地について、工事完了公告後の制限(法42条) 開発許可を受けた開発区域内において、工事完了公告があった後は、 ・当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物又は特定工作物の新築、又は新設 ・建築物を改築 ・その用途を変更して当該開発許可に係る予定の建築物以外の建築物とすること 原則として、この三つは禁止されています。 ただし、以下の建築物等は、建築・新設ができます。 ア.予定建築物 イ.用途地域等が定められている場合には、 (用途地域の制限内の)建築物及び一定の第1種特定工作物 (建築基準法88条2項の政令で指定する工作物) ウ.都道府県知事が許可した建築物 当該開発区域における利便の増進上、または開発区域および周辺の地域に おける環境の保全上支障がないと認めて許可したとき エ.(国が行う当該開発許可に係る予定建築物以外の建築物については、 国の機関と都道府県知事との協議が成立することで、許可があったものとみなされる) |
●過去問類題 |
1.「開発許可を受けた開発区域内で用途地域が定められている土地において、工事完了の公告後に、当該開発許可に係る予定建築物以外の建築物を新築しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。」(H7-19-2)
【正解:×】 上の問題の類題です。用途地域が定められている区域内の土地では、開発許可を受けて工事完了後に、開発区域内で、知事の許可なく、予定外の建築物及び一定の工作物を例外的に建築できる場合があります。 |
●開発許可に伴う建築制限(全部で5つ)―区域区分で分類― | ||||
市街化
区域 |
非線引き
用途地域 |
非線引き
白地地域 |
調整区域
白地地域 |
|
工事完了公告前の建築制限37条 | ○ | ○ | ○ | ○ |
工事完了公告後の建築制限42条 | △ | △ | ○ | ○ |
予定建築物の敷地面積の最低限度
(条例により定めることができる) 33条4項 |
○ | ○ | ○ | ○ |
用途地域が定められていない区域
の建築制限の知事指定41条 (建蔽率、高さ、壁面位置) |
― | ― | ○ | ○ |
開発区域外の建築制限43条 | ― | ― | ― | ○ |
(註)
1.市街化調整区域内には、原則として用途地域を定めないものとされていますが、
例外的に用途地域が定められている場合があります。その場合には、工事完了公告後
の42条の建築制限などは適用されません。
2.以下の区域は、上の表での制限は、
非線引きの白地区域の開発区域内と同じ扱いになります。
・準都市計画区域で、用途地域が定められていない区域の開発区域内
・両区域外(都市計画区域でも、準都市計画区域でもない区域)の開発区域内
●開発許可に伴う建築規制(時系列と用途地域による分類) | |||
開発区域の内外 | 条文 | 用途地域が
定められている区域 |
用途地域が
定められていない区域 |
開発区域内 | 公告前
37条 |
原則としては、建築不可
例外 1) 知事の許可 2) 工事用仮建築物 |
|
公告後
42条 |
予定建築物以外は建築不可
例外 用途地域に適合するもの |
予定建築物以外は建築不可
例外 知事の許可 ・利便の増進上 ・環境の保全上支障がない |
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41条制限 | なし | 知事の指定できる制限
建ぺい率・建築物の高さ・ 壁面の位置など |
|
33条4項 | 地方公共団体は、条例で、区域・目的・又は予定建築物 の用途を限り、開発区域内での予定建築物の敷地面積の 最低限度に関する制限を定めることができる。 |
||
開発区域外 | 43条 | 建築可
・用途地域に適合を要する |
市街化調整区域のみ
原則としては、建築不可 |
(註)法改正による分類の変化にも注意してください。
1.用途地域が定められている区域とは、
・市街化区域
・区域区分の定められていない都市計画区域で、用途地域が定められている区域
・準都市計画区域で、用途地域が定められている区域
の3つを意味します。
2.用途地域が定められていない区域とは、
・区域区分の定められていない都市計画区域で、用途地域が定められていない区域
・市街化調整区域で、用途地域が定められていない区域
・準都市計画区域で、用途地域が定められていない区域
・両区域外(都市計画区域でも、準都市計画区域でもない区域)
の4つを意味しています。
●法改正―都市計画法33条3項、4項、5項 |
ミニ開発を防止するため、地方公共団体は、
開発区域内において予定される建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を条例で定めることができるようになりました。
開発許可の権限をもたない市町村も条例で定めることができるため、この場合には、都道府県知事との協議とその同意を義務付けています。これは、開発許可権者である知事が知らない間に、開発許可の基準が変更になると実務上問題が生じるためです。 以下が、改正された33条の該当するところです。 3 地方公共団体は、その地方の自然的条件の特殊性又は公共施設の整備、建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し、前項の政令で定める技術的細目のみによつては環境の保全、災害の防止及び利便の増進を図ることが困難であると認められ、又は当該技術的細目によらなくとも環境の保全、災害の防止及び利便の増進上支障がないと認められる場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、当該技術的細目において定められた制限を強化し、又は緩和することができる。 4 地方公共団体は、良好な住居等の環境の形成又は保持のため必要と認める場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、区域、目的又は予定される建築物の用途を限り、開発区域内において予定される建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を定めることができる。 5 指定都市等及び事務処理市町村以外の市町村は、前2項の規定により条例を定めようとするときは、あらかじめ、都道府県知事と協議し、その同意を得なければならない。 |
2.「用途地域が定められていない土地の区域のうち、開発許可を受けた開発区域
内においては、建築制限はない。」
【正解:×】 ◆用途地域が定められていない区域内の建築制限 開発区域内・・・用途地域の定められていない土地の区域については、 開発許可を知事がするときに、 建蔽率・建築物の高さ・壁面の位置その他などの 建築物の敷地、構造および設備に関する制限を 指定することができるとされており(法41条1項) この制限が定められたときは、知事の許可を受けない限り、この制限に反する建築物を建築してはならない。(法41条2項) ◆開発区域外の建築制限は「市街化調整区域」のみ。 ◆工事完了公告後の建築制限がない(※用途地域等の制限は別とします) 市街化区域、非線引き区域の用途地域を定める土地の区域については、工事完了公告前の建築制限があるだけです。 |
3.「市街化調整区域のうち、開発許可を受けた開発区域以外の区域内におい
ては、建築物の新築・改築・用途変更をする場合、及び、第1種特定工作物の新設
をする場合は原則として市町村長の許可を受けなければならない。」
【正解:×】 ◆市街化調整区域内の開発許可を受けた開発区域以外の区域内の建築制限 市街化調整区域を指定するのは「都道府県」です。制限を加えるのは、「都道府県知事」の管轄となります。 × 市町村長の許可 → ○ 都道府県知事の許可 市街化調整区域のうち、開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、 農林漁業用の一定の建築物 (農林漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物)、 公益上、必要な建築物 鉄道施設(駅舎など)、社会福祉施設、医療施設、公民館、変電所、学校(大学、専修学校、各種学校以外のもの)等 などを除いた建築物の新築・改築・用途変更、及び、上記のもの以外の第1種特定工作物の新設には、都道府県知事の許可を受けなければいけません。 (これ以外の許可不要のものは、下記のまとめ欄参照↓) 市街化調整区域のうち、開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、 <第2種特定工作物の新設>は、 建築許可は不要です。 |
●市街化調整区域で、開発許可を受けた開発区域以外の区域 市街化調整区域のうち、開発許可を受けた開発区域以外の区域内は、原則として、建築物の新築、改築、若しくは用途の変更、又は第1種特定工作物の新設には、都道府県知事の許可を必要とします。(都市計画法・43条1項) 例外 1.国、都道府県、指定都市、中核市、特例市、事務処理市町村など地方公共団体若しくは港務局、都道府県、指定都市等若しくは委任市が設置団体である地方開発事業団などが行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第1種特定工作物の新設 2.都市計画事業の施行として行なう建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第1種特定工作物の新設 3.非常災害のため必要な応急措置として行なう建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第1種特定工作物の新設 4.仮設建築物の新築 5.第29条第1項第9号に掲げる開発行為その他の政令で定める開発行為が行われた土地の区域内において行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第1種特定工作物の新設 6.通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの このほかに、43条本文で、建築許可がいらないとされているのがあります。 ・農林漁業用施設及び農林漁業用施設である建築物 ・公益施設である建築物
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●国立大学法人法に伴う平成16年の扱いの変更点 |
開発許可 これまでの「国立大学」が平成16年4月1日に「国立大学法人」によって設置されるものになり,その開発行為は国の行うものとはみなされなくなりました。 国立大学は,これまで開発許可は不要でしたが(29条1項4号),設置主体が平成16年4月1日に「国立大学法人」(国立大学法人・大学共同利用機関法人を含めて『国立大学法人等』という)に移行したため,都市計画区域及び準都市計画区域内において,原則として開発許可が必要になりました。(29条1項・2項) ただし,附属病院・附属学校の建設のための開発行為は,従来どおり公益上必要な建築物のため開発許可は不要です。(29条1項3号) 建築許可 ただし,国立大学法人等が,市街化調整区域のうち開発許可を受けていない区域において建築等を行う場合は都道府県知事の許可が必要になります。(43条1項5号,施行令34条1号)←変更点 国立大学法人等が,都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内,市街地開発事業予定区域内,都市計画事業地内で,建築物の建築等を行う際には,従来どおり許可は不要で,都道府県知事等との協議の成立をもって足ります。(53条2項,57条の3第1項,2条の2第2項),65条3項) |
●既存宅地の廃止―法改正 | |
▼法改正で削除された43条1項の旧6号
改正前は、上記の規定は「既存宅地」と言われていました。 都道府県知事の既存宅地の確認を受けたものは、当該土地の存する集落の土地利用状況などとの整合性のある建築物については、建築確認は受けますが、都道府県知事の建築許可は不要と言う制度でした。 この規定が都市計画法の改正により廃止されて、以前の既存宅地に該当するものでも、建築許可を受けなければ、建築することができなくなりました。つまり、区域、目的または用途をあらかじめ指定しておき、この範囲内で都道府県知事が許可をすることになりました。(都市計画法施行令・36条1項3号ロ) これについては、5年間の経過措置も講じられていますが、地方公共団体によって、 対応がまちまちであるため、少なくとも今年の宅建試験では出題は遠慮されるものと 思われます。 ●経過措置 施行日前(平成13年の5月18日)に既存宅地の確認を受けている土地については 原則として、施行日から5年間は自己用の建築物を建築することができます。 ●都市計画法施行令・36条1項3号ロ 第36条 都道府県知事は、次の各号に該当すると認めるときでなければ、法第43条第1項の許可をしてはならない。 3号 当該許可の申請に係る建築物又は第1種特定工作物が次のいずれかに該当すること。 ロ 法第34条第8号の3の条例で指定する土地の区域内において新築し、若しくは改築する建築物若しくは新設する第1種特定工作物で同号の条例で定める用途に該当しないもの又は当該区域内において用途を変更する建築物で変更後の用途が同号の条例で定める用途に該当しないもの ●都市計画法第34条第8号の3 第34条 前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第2種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。 8号の3 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね50以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの |