税法その他 基礎編

固定資産税の問題1 固定資産税の基本的なしくみ

正解・解説


【正解】

× ×

固定資産税に関する次の記述は○か、×か。

1.「固定資産税の課税客体は、土地、家屋及び償却資産である。」H9-26-1

【正解:

◆課税客体

 固定資産税は、賦課期日(1月1日)現在における固定資産、つまり土地、家屋、償却資産の所有が課税客体です。

 例えば、売買等によって、1月2日以降に所有者が変わったとしても、賦課期日に固定資産課税台帳に所有者として登録されている者が、原則としては、納税義務者になります。

 (国、都道府県、市町村、特別区などの地方公共団体などに対しては課税できません。また、国・地方公共団体に無償で固定資産を貸し付け、公用・公共の用に供されている場合も、非課税です。)

 固定資産の課税主体は固定資産の所在する市町村(東京都23区の場合は例外的に東京都)です。

<参考>課税主体の違いに注意!

 不動産取得税→都道府県

 固定資産税→市町村

●固定資産税の納税義務者
地方税法の
条文では
固定資産の所有者
質権または百年より存続期間のある地上権のある土地については、その質権者または地上権者
※土地又は家屋の所有者とは、

 土地登記簿もしくは土地補充課税台帳、又は

 建物登記簿もしくは家屋補充課税台帳

に所有者として登記又は登録されている者をいう。(地方税法343条2項)

2.「土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準は,地目の変換,家屋

の改築等特別の事情がない限り,基準年度以後3年間据え置かれる。」H1-31-1

【正解:

◆基準年度

 固定資産税の課税標準は、賦課期日に固定資産課税台帳に登録されている価格(固定資産税評価額)ですが、3年ごとに、いわゆる「評価替え」を行います。

 この評価替えの年度を基準年度と言い、原則として、課税標準はこの年度以降3年間据え置かれます。

 ただし、

 地目の変換(変更)、家屋の改築または損壊その他これらに類する特別の事情

などがあり、評価額が不適当、もしくは課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合は、基準年度でなくてもその固定資産に対して、評価替えを行います。 

固定資産税の評価は、「固定資産評価員」が行います。(地方税法・404条1項)

●参考問題
1.「固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)は、総務大臣が定めることとされている。」(H14-28-1)

【正解:

 固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)は、総務大臣が定め、告示することとされています。(地方税法・388条1項)

3.「家屋に係る固定資産税は、建物登記簿に登記されている所有者に対して

課税されるので、家屋を建築したとしても、登記をするまでの間は課税されない。」

H11-27-1

【正解:×

◆家屋補充課税台帳

 建物登記簿に登記されていなくても、課税されます。

 登記されていない家屋は、固定資産課税台帳の「家屋補充課税台帳」に登録して課税する事になっています。つまり、建物登記簿に登記されていなくても、固定資産課税台帳に登録されていれば課税されます。

<番外知識>

 地方税法では、以下のものを「固定資産課税台帳」として総称しています。

 土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳
償却資産課税台帳

4.「年の途中において、土地の売買があった場合には、当該土地に対して課税

される固定資産税は、売主と買主でその所有の月数に応じて月割りで納付しな

ければならない。」H11-27-4

【正解:×

◆納税義務者

 1月2日以降に所有者が変わったとしても、賦課期日(1月1日に固定資産課税台帳に所有者として登録されている者)が、その年の4月1日からの年度分の税額全部の、納税義務者になります。このため、本設問は不適切と言う事になります。

 売買での実務上は、月割りで売主・買主どちらが支払うか、という当事者間での特約は認められています。勿論、その年度の固定資産税を市町村に実際に納めるのは売主ですが、買主は月割りで決められた分を売主に渡すことになります。この特約と税法上の条文を混同してはいけません。 

●類題
1.「固定資産税の納期は、4月、7月、12月及び2月のそれぞれ末日であり、市町村がこれと異なる納期を定めることはできない。」(H14-28-4)

【正解:×

 納付の時期は市町村によって異なりますが、通例、納税者は一括納税または年4回の分納のいずれかを選べます。 〔4月中旬〜5月に納税通知書が発送されます。〕

 年4回の分納の時期は、市町村の条例で、4月、7月、12月及び2月中において定めますが、これと異なる納期を定めることができることになっています。

5.「固定資産税は、特別の場合を除き、その課税標準となるべき額が土地にあって

は30万円、家屋にあっては20万円に満たない場合は、課することができない。」H4-30-3

【正解:

◆免税点 

 同一の納税義務者が同一の市町村内に所有する土地・家屋などの固定資産の課税標準の合計が、

 土地=30万円未満

 家屋=20万円未満

 償却資産=150万円未満

のときは、原則として課税することができません。

 しかし、財政上その他特別の理由があるときは、当該市町村の条例の定めるところによって、土地・家屋・償却資産の課税標準がそれぞれ30万円、20万円、150万円に満たないときであっても、固定資産税を課税できます(地方税法351条)

【類題】H1-31-2

6.「固定資産税の標準税率は,1.4/100 であるが,市町村がその財政上その他

の必要があると認める場合においては,標準税率を超える税率で課税することができ

る。」H6-28-3改

【正解:【類題】H5-29-1、H9-26-2

◆標準税率 1.4パーセント 

 固定資産税の標準税率は、1.4/100 です。市町村がその財政上その他の必要があると認める場合においては,標準税率を超える税率で課税することができます。

●平成16年法改正 固定資産税の制限税率の廃止 (地方税法350条1項)

 従来は2.1%を超えて課税することはできませんでしたが,この制限が廃止されました。

 改正前  固定資産税の標準税率は,百分の一・四とする。
 ただし,標準税率を超える税率で課する場合においても,
百分の二・一を超えることができない。
 改正後 固定資産税の標準税率は,百分の一・四とする。
 (改正で但書が削除された。)

●平成16年法改正 標準税率の変更要件の緩和 (地方税法・1条1項5号)

 改正前  政上特別の必要があると認められる場合に限り,税率を変更できる。
 改正後 財政上その他の必要があると認められる場合に,税率を変更できる。

◇条文確認◇(地方税法・1条1項5号)

標準税率 地方団体が課税する場合に通常よるべき税率で
     その財政上その他の必要があると認める場合においては,
     これによることを要しない税率
をいい,
     総務大臣が地方交付税の額を定める際に基準財政収入額の算定の基礎と
     して用いる税率とする。

●参考問題
1.「固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)は、総務大臣が定めることとされている。」(H14-28-1)

【正解:

 固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)は、総務大臣が定め、告示することとされています。


引き続き、固定資産税の問題2を解く

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