税法その他 基礎編
所得税・贈与税―譲渡所得・贈与に関する税・住宅借入金の特別控除
●譲渡所得に関する税 6
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
●最近の所得税・贈与税の出題
平成11年・18年は、譲渡損失の繰越控除と住宅借入金控除が重畳適用可能か問う問題。 |
正解・解説
【正解】本問は、細かい規定については初出題でした。
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
租税特別措置法第41条の5の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成13年) |
●居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除 |
個人が住宅ローンで住宅を取得したのちに、その居住用財産を譲渡して別の居住用財産に買換えるときに譲渡損失がある場合、一定の要件のもとに、譲渡損失を3年間に渡って繰越して所得から控除できる制度で、平成10年の譲渡分の所得税から創設されました。
譲渡資産の譲渡損失の金額については、その年の翌年以後3年内の各年分(合計所得金額が3,000万円以下の年分に限る)の総所得金額等からの繰越控除が認められます。 バブル崩壊後では、不動産の下落で居住用財産は含み損があり、これに対応する政策がないと不動産の売買は促進されない為、創られた制度です。 |
1.「譲渡資産とされる家屋については,譲渡をした年の1月1日における所有期
間が10年を超えるものであり,かつ,その居住の用に供していた期間が10年
以上であることが適用要件とされている。」改正点に関連
【正解:×】
◆適用要件は、所有期間=5年超 (租税特別措置法41条の5第3項1号) 居住用財産の譲渡には、譲渡した年の1月1日における所有期間5年超が要件になっています。 ◆所有期間の要件は、整理しておく必要があります。 「所有期間が10年を超え」→ 特定の居住用財産の買換え特例 と混同しないように! ◆譲渡資産のこのほかの適用要件 ・個人の居住用財産であること。 ・譲渡先が、配偶者、直系親族、生計を一にする親族などの特殊関係者ではないこと ・譲渡原因が贈与や現物出資によるものではないこと。 ・譲渡した居住用家屋の敷地に係る譲渡損失のうち面積500平方メートルを超える部分に相当する金額は除かれる。 ⇒改正点 平成16年改正で,譲渡年の一定日に住宅借入金残高を有することが廃止されました。 |
2.「買換資産とされる家屋については,租税特別措置法第41条の住宅借入金等
を有する場合の所得税額の特別控除の適用を受けないことが適用要件とされて
いる。」 類題・H11.問26.肢2
【正解:×】
◆住宅借入金控除と重畳適用可能 特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除と住宅借入金控除は、重畳適用できます。 平成11年度の法改正により、それまでは選択適用でしたが、重畳適用できるようになりました。(平成11年1月1日以後に譲渡した住宅には併用できます。) ◆譲渡損失の繰越控除の適用要件としては、 < 譲渡があった年の前年分、または、前々年分において、 ほかの居住用財産の譲渡損失についてこの特例の適用を受けていないこと> というものがあります。 |
3.「買換資産とされる家屋については,譲渡をした日から同日以後3年を経過す
る日の属する年の12月31日までに取得するものであることが適用要件とされ
ている。」
【正解:×】
×・・・譲渡をした日から3年を経過する年まで ◆買い換え資産の適用要件 ・譲渡した年の属する年の翌年12月31日までに買い換え資産を取得し、かつ、 ・当該取得の日に属する年の翌年12月31日までの間に居住の用に供した、または、供する見込みであること ・住宅の床面積 50平方メートル以上(登記簿の面積) ・繰越控除年の年末において、買換え資産に係る一定の住宅借入金等の残高を残していること(金融機関・住宅金融公庫などからの償還期間10年以上のもの) |
4.「譲渡資産とされる家屋については,居住の用に供しているもの又は居住の
用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31
日までに譲渡されるものであることが適用要件とされている。」
【正解:〇】
◆居住の用に供されなくなった日から3年を経過する年の12/31までに譲渡 居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する年の属する年の12月31日までに譲渡されるものなら、この特例の適用が受けられます。 |
●特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の創設-平成16年改正 |
所有期間が五年を超える一定の居住用財産を譲渡し、譲渡契約の締結の前日において、譲渡する居住用財産について住宅借入金等の残高がある場合に、その住宅借入金等の残高が譲渡価額を超えるときはその差額を限度として譲渡損失の三年間の繰越控除を認める制度が創設されました。(租税特別措置法41条の5の2)
◆使い分け ・譲渡する一定の居住用財産住宅借入金等の残高がないときには、この新設の特例は使えない。残高がある場合は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除」を使うこともできる。 ・この新設の特例では買い替え資産について取得要件はない。「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除」では取得する資産について要件がある。 ・「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除」では譲渡損失は全額繰越控除できるが、この新設の特例では上限が「住宅借入金等の残高−譲渡価額」に限られる。 |
●特定の居住用財産の譲渡損失の損益通産及び繰越控除制度の創設 (41条の5の2) | ||||||||||||||||||||||||
→ 住宅を譲渡しても住宅ローンを返済しきれない人に対する支援が狙い。 上の41条の5の適用を受けるには,特定の居住用財産を譲渡するとともに,買換えた居住用資産がなければいけませんでしたが,新たに創設された41条の5の2では居住用資産の取得要件がないことから,特定の居住用財産を譲渡したのみでも,適用を受けることができます。 つまり,居住用財産を譲渡した後に賃貸住宅に住み替えたり,両親等の親族の住宅に移り住む場合でも,この制度が適用されます。資産デフレによる住宅価格の下落やリストラの状況下への対処法として選択肢のひとつを増やす意義があります。 ◎41条の5と41条の5の2で共通するもの
2つの特例とも,譲渡資産に係る譲渡損失があるときは,「当該譲渡資産の譲渡による所得」以外の所得との損益通算及び翌年以降の繰越控除が認められている。〔『ほかの所得との損益通算の禁止』の原則の例外的な措置〕
|
●基本事項・居住用財産を買い換えた場合の課税の特例の選択 |
譲渡益があるとき → 以下の三つから選択する ・買換え特例 ※「収用交換等の5,000万円特別控除」や「代替資産取得の課税の繰り延べ」も 譲渡損があるとき → 以下の2つを併用できる。 ・住宅ローン控除 |