法令上の制限 基礎編

都市計画法(概容)に関する問題8 

地域地区(1)

正解・解説


【正解】

× ×

次のそれぞれの記述は、都市計画法の規定によれば○か、×か。

1.「特定用途制限地域とは、非線引き都市計画区域のうち、用途地域が指定され

ていない区域(非線引き白地地域)内にのみ定め、その良好な環境の形成又は保持

のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定

の建築物等の用途の概要を定める地域のことである」★新設

【正解:×

 本設問は間違いやすい問題です。以下に見るように、条文では、

  用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)

特定用途制限地域を定めることになっていますが、

 この用途地域が定められていない土地の区域とは、2つ考えられます。

 1)非線引き都市計画区域のうち、用途地域が定められていない土地の区域

(非線引き白地地域)

 2)準都市計画区域内用途地域が定められていない土地の区域

 この2)を見落とさないようにしましょう。

<注意> 用途地域が定められている区域や市街化調整区域では、×

【都市計画法9条14項】

 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。(第9条14項)

●特定用途制限地域について
 近年、用途地域が定められていないのをいいことに、非線引き都市計画区域の白地地域(用途地域が定められていない地域)で、当該地域の居住環境に支障を与える用途の建築物や施設が立地しているケースが目立ちます。

 そこで、良好な環境の形成又は保持を図る観点から、必要な土地利用規制を課すことにしたのです。それが、この「特定用途制限地域」です。

 「準都市計画区域」の創設と似た立法趣旨です。

1.特定用途制限地域

 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域に定めるもの

ですが、市町村が地域の実情に応じて都市計画で定めます。

2.都市計画で定めるもの

 特定用途制限地域については、都市計画で以下のものを定めることになっています。

 制限すべき特定の建築物その他の工作物(「建築物等」という。)の用途の概要

3.建築基準法49条の2に基づいて、条例で定めるもの

 あらかじめ、都市計画で定められた制限すべき用途の概容に即して、政令の定める基準に従い、地方公共団体の条例で、具体的な建築物等の用途の制限について定めることになっています。

●特定用途制限区域
 市町村が区域を指定する

2.「特定街区は、市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる

地区について、その街区内における建築物の容積率、並びに建築物の高さの最高

限度及び壁面の位置の制限を定める街区とする。」(類・マンション管理士H13-27-3)

【正解:

 特定街区とは、良好な環境と健全な形態を有する建築物を建築し、併せて有効な空地を確保すること等により都市機能の更新と魅力的な都市空間の保全・形成を行い、市街地の整備改善を図るものです。

 特定街区では、一般的な容積率等は排除され(建築基準法・60条)、その代わりに、都市計画において、独自の容積率、建物の高さ、壁面の位置が採用され、建築物はこの特定街区の都市計画の内容に適合しなければいけません。(都市計画法・9条19項)

 なお、東京の新宿新都心などは、この特定街区制度が適用されて施工されました。

 全国では、18都市、地区数では103地区、このうち東京都内の地区は54地区です。

(平成11年3月31日現在)

 各地の例: 北海道(エクセル・ファイル)大阪市横浜市川崎市

特定街区は、準都市計画区域に定めることはできません。

建築基準法での特定街区(建築基準法・60条)

 (第1項)特定街区内においては、建築物の容積率及び高さは、特定街区内に関する都市計画において定められた限度以下でなければならない。

 (第2項)壁面の位置の規定

 (第3項)特定街区内の建築物については、第52条から前条までの規定は適用しない。

 これにより、建築基準法での容積率(52条)・建ぺい率(53条)・建築物の敷地面積(53条の2)・建築物の各部分の高さ(56条)・日影規制(56条の2)などの規定が適用されません。

3.「特定街区に関する都市計画の案については、当該特定街区内の土地の

所有者等の利害関係人の同意を得なければならない。」

【正解:

 新宿新都心等の地区を「特定街区」といいますが、用途地域内での制限とは

別の制限を受けるため、住民等の理解が不十分だとトラブルが多発します。

 このため、特定街区に関する都市計画の案について、政令で定める利害関係を有する者の同意を得なければなりません。(都市計画法・17条3項) 

<政令で定める利害関係を有する者>

 当該特定街区内の土地について所有権、建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権又は登記した先取特権、質権若しくは抵当権を有する者など
(都市計画法施行令・11条)

◆特定街区

超高層ビル街を、「ある程度まとまった街区として」建設するために定めます。

→そのために、特定街区内だけに通用する

  「容積率」「高さの最高限度」「壁面の位置」が定められます。

日影規制や斜線規制などは一切排除。独自の高さ制限

●類題
1.「特定街区に関する都市計画の案については、所有権者、地上権者、その他の利害関係を有する者の同意を得なければならない。」(昭和55-19-4)
【正解:

4.「都市計画区域内の高度地区は、用途地域内において市街地の環境維持

土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度は定める

ものとするが、建築面積の最高限度または最低限度は定めるものではない。」

【正解:

 設問文の記述の通りです。

 建築物の高さの「最高限度」あるいは「最低限度」のどちらかを定める地

区(ズバリ"○m以下"とか"○m以上"として指定する)のことをいいます。

 ただし、準都市計画区域内の高度地区は、建築物の高さの最高限度のみです。

なお、高度地区は、用途地域内に定められます

5.「高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の高度利用と都市

機能の更新を図るため、建築物の建築面積の最低限度または最高限度を定め

るものとする。」

【正解:×

 高度利用地区とは、“高密度”に土地利用すべき地区なので、「建築面積

の最高限度」という上限は定めません。

 高度利用地区は、用途地域内の市街地における

土地の合理的かつ健全な高度利用

都市機能の更新

の2つを図ります。

 高度利用地区は、市街地再開発事業を実施する予定地区と考えてもいい区域です。

都市再開発法・3条の市街地再開発事業の施行区域の要件の一つに、

「高度利用地区又は再開発地区計画の区域ま内にあることという規定もあります。

◆高度利用地区

[1] 「容積率の最高限度、及び最低限度」(定め直すことも多い)

[2] 「建ぺい率は、最高限度のみ」(建ぺい率を逆に少なくおさえる)

[3] 建築物そのものの「建築面積の最低限度」(細長ビルの防止策)

[4] 建物壁面(外壁)の位置の制限(外壁を境界線から何m離すか)

以上の4点を制限することにより、自動的に“建物は超高層ビル”になる。

◆備考

 1) 準都市計画区域内では、高度利用地区を定めることができません。

 2) 高度利用地区も、用途地域内に定められます。

●都市再生特別地区の概要
 平成14年4月5日に公布された「都市再生特別措置法」が平成14年6月1日に施行されました。これに伴い、都市計画法,建築基準法,同法施行令,同法施行規則も一部改正され、同日に施行されました。→ 内閣の都市再生本部

 この中で、都市再生緊急整備地域内に地域地区の一つとして「都市再生特別地区」が新設され、同地区内での規制緩和の内容等が建築基準法で定められました。

(都市再生緊急整備地域は、都市再生緊急整備地域を定める政令で定められます。)

・都市計画法では、第8条の地域地区として、第1項の4の2号で、都市再生特別措置法第36条第1項の規定による都市再生特別地区を規定。

・都市再生特別地区では、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため、既に都市計画として定められている用途地域等による規制に代わり、誘導すべき用途や容積率、高さ等の必要な事項を都市計画として決定します。

・ 都市再生特別地区では、建築物の容積率、建ぺい率、建築面積、高さ、壁面の位置について、同地区に関する都市計画で定められた制限が、原則として適用されます。(改正後の建築基準法第60条の2第1項、第2項)

・ 同地区に関する都市計画で定められた「誘導すべき用途」に供する建築物については、用途地域の制限は適用されません。(改正後の建築基準法第60条の2第3項)

・ 斜線制限、高度地区による制限は適用されません。日影規制についても対象区域外とみなされます。(改正後の建築基準法第60条の2第5項、第6項)

●都市計画で定めるもの
特定用途制限地域 特定の建築物その他の工作物の用途

用途地域が定められていない土地の区域

(市街化調整区域を除く。)

非線引き都市計画区域と準都市計画区域の

用途地域が定められていない区域

特定街区

・「容積率

・「高さの最高限度

・「壁面の位置

斜線制限、日影規制は適用されない

特例容積率適用地区 ・建築物の高さの最高限度

 (当該地区における市街地の環境を確保するために必要な
 場合に限る。)

第一種・第二種低層住居専用地域,工業専用地域を除く
 用途地域に定めることができる。〕

高度地区 ・建築物の高さの最高限度又は最低限度

(準都市計画区域では、最高限度のみ)

用途地域にのみ定めます

高度利用地区

・「容積率の最高限度、及び最低限度」

・ 「建ぺい率は、最高限度のみ」

・建築物そのものの「建築面積の最低限度

・(建物の)壁面(外壁)の位置の制限

用途地域にのみ定めます

高層住居誘導地区

・建築物の容積率の最高限度

・建築物の建ぺい率の最高限度

・建築物の敷地面積の最低限度

日影規制は、原則として適用されない

第1・2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域

又は準工業地域容積率が40/10、50/10と定められた区域

●都市計画の決定権者―都道府県と市町村
(都市計画を定める者)

第15条  次に掲げる都市計画(準都市計画区域について定めるものを除く。)は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定める。

1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に関する都市計画

2.区域区分に関する都市計画

3.都市再開発方針等に関する都市計画

4.地域地区

都市再生特別地区

臨港地区(港湾法・重要港湾に係るもの)

歴史的風土特別保存地区(古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法)

第1種歴史的風土保存地区又は第2種歴史的風土保存地区

 (明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法)

流通業務地区(流通業務市街地の整備に関する法律)

航空機騒音障害防止地区又は航空機騒音障害防止特別地区

 (特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)

緑地保全地域(二以上の市町村の区域にわたるものに限る。)、

5.一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき地域地区として政令で定めるもの又は一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき都市施設若しくは根幹的都市施設として政令で定めるものに関する都市計画 

→ 地域地区は以下の二つ。

風致地区(近郊緑地保全地区を除く。)で面積が10ha以上で、二以上の市町村の区域にわたるもの

特別緑地保全地区(近郊緑地保全地区を除く。)で面積が10ha以上で、二以上の市町村の区域にわたるもの

6.市街地開発事業(政令で定める小規模な土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業及び防災街区整備事業を除く。)に関する都市計画

7.市街地開発事業等予定区域に関する都市計画


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