法令上の制限 基礎編

都市計画法(概容)に関する問題

準都市計画区域

正解・解説


【正解】

× ×

次のそれぞれの記述は、都市計画法の規定によれば○か、×か。

1.「都道府県は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の住居その他の建築物の建築

又はその敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる一定の区域を含み、

自然的及び社会的条件並びに農業振興地域の整備に関する法律その他国土交通省令

で定める事項のに関する現況及び推移を勘案して、そのまま土地利用を整序し、または、

環境を保全するすることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び

保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、準都市計画区域として

指定することができる。」

【正解:

 準都市計画地域のイメージとしては、都市計画区域外での、「高速道路の

インターチェンジの周辺、幹線道路の沿道、既存集落の周辺」が思い浮かびます。

このような地域に、農地を含む土地利用の整序環境の保全を図る規制ができるように、

準都市計画地域が創設されました。

<創設の背景>

 自動車で移動する生活スタイルが定着し、郊外部での開発行為、建築が増加して

きています。このため、都市計画区域外であっても、用途の混在などが目立つよう

になってきました。特に、高速道路のインターチェンジができると急速に市街化する

ことがあり、無秩序な開発行為や建築行為が先行しています。

 そこで、このような場合にも行政側が対応できるように、都市計画区域という

位置付けを与えるには至らなくても、土地利用の整序環境の保全を行う事が

できるように、「準都市計画区域」が創設されました。

 これにより、無秩序な土地開発や建築用途に一定の制限がかけられます。

また、「準都市計画区域」が将来、「都市計画区域」になったり、併合されても

いいように今のうちに対応しておこうという意味もあります。しかし、準都市計画区域は、

将来、必ず都市計画区域になるというわけではありません。※

 準都市計画区域に指定されるのは,以下のような場合です。

・大規模集客施設の立地が予想される場合

・市町村合併に伴う都市計画区域の拡大に相当の期間を要する場合 (一つの行政区域に複数の都市計画区域を有する市町村もある。)

・環境の保全を行う必要がある場合

国土利用計画法でも、準都市計画区域は、「都市地域」とは扱われていません。

●準都市計画区域の指定
 すでに幾つかの道県内で指定されています。このほかにも,指定を検討している県があります。

○熊本県玉東町
 玉東準都市計画区域 (約7ha) 平成16年5月10日指定
 <良好な住宅市街地の誘導>

○群馬県前橋市(旧宮城村)
 宮城準都市計画区域 (約142ha) 平成16年5月17日指定
 <開発許可対象面積の引き下げ>

○静岡県牧之原市(旧榛原町)
 榛原準都市計画区域 (約31.1ha) 平成17年7月20日指定
 <基盤整備の進捗に伴う、無秩序な開発の進行抑制>

○青森県青森市  
  青森準都市計画区域 平成18年10月1日指定
 <宅地開発による環境悪化を防止>

○北海道七飯町
  七飯町準都市計画区域 平成19年9月21日指定

○福井県
  永平寺準都市計画区域 平成19年11月30日指定

○北海道
  具知安準都市計画区域 平成20年2月8日指定

○福岡県 26市町 平成20年3月31日指定

●準都市計画区域の都市計画基準
 準都市計画区域について定められる都市計画は、第1項に規定する国土計画若しくは地方計画又は施設に関する国の計画に適合するとともに、地域の特質を考慮して、次に掲げるところに従つて、土地利用の整序または環境の保全を図るため必要な事項を定めなければならない。この場合においては、当該地域における自然的環境の整備又は保全及び農林漁業の生産条件の整備に配慮しなければならない。(13条3項)

2.「都道府県は、準都市計画区域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村

及び都道府県計画審議会の意見を聴かなければならない。」

【正解:

●準都市計画区域の指定

 <関係市町村・都道府県都市計画審議会の意見を聴く。>のは、都市計画区域の指定と同じです(5条の2第2項)。

3.「市町村は、準都市計画区域について都市計画を決定しようとするときは、

  あらかじめ、都道府県知事の意見を聴かなければならない。」

【正解:×

●準都市計画区域の都市計画の決定

 ×・・・「都道府県知事の意見を聴かなければならない。」

 ○・・・「都道府県知事協議し、その同意を得なければならない

 準都市計画区域についての都市計画の決定は、都道府県・市町村とも、することができます(15条1項)。→ 都市計画区域についての都市計画の決定と同じ。

 市町村は、準都市計画区域について一定の都市計画※を決定しようとするときは、
 あらかじめ、都道府県知事協議しなければなりません(町村では知事の同意が必要)。(19条3項)

 都道府県知事は、一の市町村の区域を超える広域の見地からの調整を図る観点、または、都道府県が定め、又は定めようとする都市計画との適合を図る観点から、協議を行う者とされています。(19条4項)

 また、協議に必要な場合は、関係市町村に対して、資料の提出・意見の開陳・説明その他の協力を求めることができます。(19条5項)

●市町村と都道府県知事のまとめ
市町村の都市計画の基本方針の決定 都道府県知事への通知
市町村の一定の都市計画の決定

(都市計画区域内・準都市計画区域内)

都道府県知事と協議する

(町村では知事の同意が必要)

4.「準都市計画区域についての都市計画では、必ず、用途地域、特別用途地区、

特定用途制限地域、高度地区、景観地区、風致地区、伝統的建造物群保存地区、

緑地保全地域を定めなければならない。」

【正解:×

●準都市計画区域に適用されるもの

用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、高度地区、景観地区、

風致地区、伝統的建造物群保存地区、緑地保全地域のうち、

必要なもののみを定めます。 (土地利用の整序及び環境の保全のため必要なものに限ります)

 したがって、準都市計画区域に必ず、これらのものを全て定めなければいけない

 というものではありません。(8条2項)

高度地区・・・高さの最高限度のみ、定めることができます

一定規模以上の開発行為に対する許可制度が適用されます。

 (3,000平方メートル、特に必要なら都道府県知事の判断で300平方メートルまで

引下げ可)、

建築確認制度が適用される。

建築基準法の第3章・都市計画区域等の建築物の敷地、構造及び建築設備

 (集団規定)が適用されます。(ただし、42条〜68条の8まで。)

 例えば、接道義務なども、都市計画区域と同じように適用されます。

5.「準都市計画区域についての都市計画では、都市施設・市街地開発事業・

地区計画については定めることはできない。」

【正解:

●準都市計画区域の都市計画に適用されないもの

都市施設・市街地開発事業・地区計画についての都市計画は定めません

高度利用地区、特定街区、高層住居誘導地区などは、

準都市計画区域の都市計画には定めません。

都市施設と建築基準法51条

・建築基準法では,都市計画区域内での卸売り市場 (これも都市施設です。) などの特殊建築物は原則として敷地の位置が都市計画で決定されない限り新築などができないことになっています。

 この51条の規定は,準都市計画区域では適用されません。建築基準法51条の都市施設は,都市計画区域内のみに定めることになっているからです。

 準都市計画区域については,都市施設に関する都市計画は決定されません

●Q&A : 準都市計画区域にある都市施設
Question 準都市計画区域は都市計画区域外にありますが,都市計画区域外でも都市施設を定めることができるという規定との整合性を教えてください。
Answer 都市計画法11条1項後段の都市計画区域外に都市施設を定めることができる規定のことですが,これは準都市計画区域とは次元が異なります。

 都市計画区域外の都市施設〔区域外都市施設〕に関する都市計画については,都道府県または市町村が,その都市計画区域について決定します。都市施設は,その都市計画区域の整備,開発及び保全の方針〔都市計画区域マスタープラン〕に即したものでなければなりません(都市計画法6条の2第3項)

 イメージ的には,準都市計画区域内に都市施設があるとしても,その都市施設は準都市計画区域についての都市計画で定められたものではなく,都市計画区域の都市計画において定められたものだということです。(道路や河川も都市施設ですから,準都市計画区域にこれらが全くないということはありえません。)

●準都市計画区域指定の効果
開発許可 原則として,3,000平方メートル以上の開発行為には開発許可が

      必要になる。

建築確認 一般建築物でも,原則として建築確認が必要。

集団規定 用途地域が指定されなくても,容積率・建ぺい率・斜線制限(高さ)

      ・道路制限(接道義務など)などの集団規定の導入が可能になる。

用途規制 用途地域の指定により,きめ細かな制限を必要な区域に導入できる。

      (用途地域に重ねて特別用途地区を指定することができる。用途地域

       を指定しなくても,特定用途制限地域を指定することもできる。)

地域地区 用途地域のほか,特別用途地区,特定用途制限地域,高度地区,

      景観地区,風致地区,伝統的建造物群保存地区,緑地保全地域が

      準都市計画区域内に指定できるようになる。

      (いずれも,都市計画区域及び準都市計画区域外には指定できない。)


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