法令上の制限 基礎編

建築基準法・用途規制の問題1

●用途地域全体を見る視点の問題

正解・解説


【正解】

× × × × × ×

建築基準法の規定によれば、次の記述は○か、×か。

1.「建築物の敷地が複数の用途地域にわたる場合、用途規制については、

その敷地の全部について敷地の過半の属する地域に関する規定を受ける。」

【正解:

◆過半の地域

建築物の敷地が複数の用途地域にわたる場合、その敷地の全部について、防火

地域の場合と異なり、安全性には直接影響しないので(住環境の形成には若干

影響しますが)、用途規制については、敷地の過半の属する地域に関する規定が適用されます。

2.「老人ホーム・老人福祉センター・保育所は、その規模にかかわらず、全用途地域

内において建築することができる。」【類題】H12-23-2

【正解:×

◆老人ホームと老人福祉センターの区別 

どこから建築可か 工業地域 工業専用
老人ホーム 第1種低層住居専用地域から

工業地域まで

   ×
老人福祉センター

保育所

診療所

第1種低層住居専用地域から

工業専用地域まで(全ての地域)

   

 「老人ホーム」は、お年寄りが長期間滞在することが考えられるため、

工業専用地域では建築できません。住宅・図書館・老人ホームのグループ

 「老人福祉センター」は、その規模が600平方メートルを超えるとき、第1種・第2種低層住居専用地域において建築することはできません。

 「保育所」は、全ての用途地域で建築できます。

全ての用途地域で建築可能なのは…

神社、寺院、教会

保育所、診療所、公衆浴場

老人福祉センター、児童厚生施設(低層住居専用地域で規模の限定がある)

巡査派出所、公衆電話所等

3.「住宅は、すべての用途地域内において、建築することができる。」H4-24-4

【正解:×

◆住宅  

いかに「住宅」(共同住宅、下宿、老人ホーム、店舗付住宅、事務所付住宅を

含む)であっても、“○○石油コンビナート”等、大工場が林立、集中する

業専用地域においては建築できません。

住宅・兼用住宅(店舗・事務所が一定規模)・図書館・老人ホームのグループ

どこから建築可か 工業地域 工業専用
図書館、老人ホーム

住宅、

第1種低層住居専用地域から

工業地域まで

   ×

4.「病院は、工業地域、工業専用地域以外のすべての用途地域内において

建築することができる。」H12-23-1

【正解:×

◆病院 病院・大学グループ

 病院は、第1種・第2種低層住居専用地域、工業地域・工業専用地域では建築できません。病院の建築できる用途地域は、大学・専修学校・各種学校と同じです

どこから建築可か 工業地域 工業専用
診療所(入院患者19人以下)

収容施設なし

第1種低層住居専用地域から

工業専用地域まで(全ての地域)

   
病院(入院患者20人以上)

大学

第1種中高層住居専用地域から

準工業地域まで

 ×  ×

5.「大学は、工業地域、工業専用地域以外のすべての用途地域内において

建築することができる。」H12-23-4

【正解:×

◆大学 病院・大学グループ

 低層住居専用地域、工業地域,工業専用地域には建築できません。

どこから建築可か 工業地域 工業専用
診療所(入院患者19人以下)

収容施設なし

第1種低層住居専用地域から

工業専用地域まで(全ての地域)

   
病院(入院患者20人以上)

大学

第1種中高層住居専用地域から

準工業地域まで

 ×  ×

6.「図書館は、すべての用途地域内において建築することができる。」H12-23-3

【正解:×

◆図書館 図書館・老人ホームのグループ

 工業専用地域には建築できません。

住宅・兼用住宅(店舗・事務所が一定規模内)・図書館・老人ホームのグループ

どこから建築可か 工業地域 工業専用
図書館、老人ホーム

住宅、

第1種低層住居専用地域から

工業地域まで

   ×

7.「火葬場は、公益上必要な施設であるので、第一種低層住居専用地域を除く

全ての用途地域で、建築することができる。」H6-23-2

【正解:×☆例外的な問題☆

◆火葬場―用途地域とは違う規制に属する特殊建築物 (51条)

 火葬場等の処理施設は,1)48条の用途規制,2)51条の位置の指定の二つの規制を受けます。

 用途地域での建築物の制限を一覧表にしている別表第2には、火葬場の記載はどの用途地域にもありません。一見どこに作っても問題がないように思われますが、しかし、次のようなことに注意する必要があります。

 火葬場、ゴミ焼却場、汚物処理場、と畜場、卸売り市場など環境に影響を及ぼす一定の処理施設については、原則として都市計画でその位置を定めた場合にのみ、建築できる事になっています。(都市計画以外の建築では、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合、政令で定める規模の範囲内において新築・増築する場合にのみ建築できる。)

 つまり、本設問は、特定行政庁の許可がなくても建築できる用途地域の規定だけで答えることはできない問題です。

 本設問を当問題集に収録するのは迷いましたが、宅建の試験ではこのような出題をすることもあると知っておく必要があると考え、敢えて掲載しました。 

●48条の解釈による別解
 48条に係る建築基準法別表第二では,第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では『その用途地域に建築できる建築物』,第二種中高層住居専用地域では『その用途地域に建築できない建築物』が記載されています。

 そのどちらにも火葬場は書かれていないことを理由にして,

<第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では火葬場は建築できないが,第二種中高層住居専用地域〜工業専用地域では建築できる>

 とする解釈をすることが可能です。

  この解釈を踏まえると,次のような別解も考えられます。

 第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では,火葬場を建築することはできないので,「第一種低層住居専用地域を除く全ての用途地域で,建築することができる。」とする本肢は誤りである。
●建築基準法51条についての通達・例規

1) 通達

住発第164号
昭和34年5月29日
建設省住宅局長から各都道府県知事あて

通達

五 都市における建築物に関する制限の整備について

(四) 卸売市場等の特殊建築物の位置の許可

 卸売市場、と畜場、火葬場、汚物処理場又はごみ焼却場の用途に供する建築物の敷地の位置の決定については、全域にわたる都市計画的見地から検討すべき性質のものと思料されるところから、これらの施設は、都市計画施設として決定することを原則とし、特定行政庁がその敷地の位置について許可しようとする場合においても、建築審査会の同意に替えて、都市計画審議会の議を経ることとし、更に、政令で定める軽微な規模の新築又は増築に関しては、許可を要しないこととしたものである。従つて、この種建築物の敷地の位置の決定については、都市計画審議会との間に密接な関連が生ずるので、あらかじめ、その組織、運営等について連絡協議されたい。

2) 例規

 昭和39年住指発第160号

法第54条[改正法第51条]ただし書による許可と法第49条[改正法第48条]各項ただし書による許可との関係

 昭和39年9月2日

建設省住宅局建築指導課長から愛知県建築部長宛
(照会)
 建築基準法第54条〔現51条〕に規定する特殊建築物で、その敷地の位置が都市計画の施設として決定されていないものの新築にあたつてその一部に法第49条〔現48条〕各項本文に抵触する部分がある場合は、法第54条ただし書による許可のみならず法第49条〔現48条〕各項ただし書による許可をも必要とするか、また、法第54条〔現51条〕ただし書の政令で定める範囲内の規定で新築または増築する場合はどうか。
(回答)
 建築基準法第54条〔現51条〕列記の建築物は、同条本文又はただし書により新築、増築できる場合でも、その建築物が法第49条各項本文に抵触するときは、同条各項ただし書による許可をも必要とする。
 したがつて、貴質疑に係る場合はいずれも法第49条〔現48条〕各項ただし書による許可が必要と解する。

(昭和39年9月2日) 

【豆知識】<建築許可>

 各用途地域において用途規制で本来建築できない建築物でも、特定行政庁が公益上やむをえないと認め、あらかじめ利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行い、かつ建築審査会の同意を得た上で、特定行政庁の許可があれば、建築することは可能(改築、増築、移転では意見の聴取および建築審査会の同意は不要)です。(許可の要件については、公益上のほかには、良好な住居環境を害する恐れがない、商業の利便を害する恐れがない、安全上防火上の危険の度衛生上の有害の度が低い、工業の利便を害する恐れがないなど各用途地域に応じて異なるものもあります)


引き続き、用途規制の問題2を解く

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