法令上の制限 実戦篇
土地区画整理法の過去問アーカイブス 平成2年・問27
土地の分割・合併,仮換地指定,保留地,換地処分に伴う登記
土地区画整理事業に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成2年・問27) |
1.「土地区画整理事業の施行者は,土地区画整理事業の施行のため必要がある場合においては,土地の所有者及び借地権者の同意を得たときに限り,土地の分割又は合併の手続きを行うことができる。」 |
2.「仮換地の指定があった場合,従前の宅地について権原に基づき使用し,又は収益することができる者は,仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで,従前の宅地の使用又は収益を行うことができない。」 |
3.「保留地を購入した者は,土地区画整理事業の施行者の承諾を得ることなく,当該保留地において建築物の新築を行うことができる。」 |
4.「換地処分の公告があった日後においては,土地区画整理事業の施行による変動に係る登記がされるまでは,施行地区内の土地について他の登記をすることは,原則としてできない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「土地区画整理事業の施行者は,土地区画整理事業の施行のため必要がある場合においては,土地の所有者及び借地権者の同意を得たときに限り,土地の分割又は合併の手続きを行うことができる。」 |
【正解:×】 ◆土地の分割・合併の手続 施行者は,土地区画整理事業の施行のために必要がある場合には,所有者に代わって土地の分割又は合併の手続をすることができる。(82条1項) <土地の所有者及び借地権者の同意を得たときに限り>という規定はなく,本肢は誤りである。 |
●条文の確認 |
(土地の分割及び合併) 第82条 施行者は、土地区画整理事業の施行のために必要がある場合においては、所有者に代わつて土地の分割又は合併の手続をすることができる。 2 施行者は、次条の規定による届出〔土地区画整理事業の認可等の公告に伴う登記所への届出〕をする場合において、一筆の土地が施行地区の内外又は二以上の工区にわたるときは、その届出とともに、その土地の分割の手続をしなければならない。 |
2.「仮換地の指定があった場合,従前の宅地について権原に基づき使用し,又は収益することができる者は,仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで,従前の宅地の使用又は収益を行うことができない。」 |
【正解:○】 ◆仮換地指定の効力 従前の宅地について権原に基づき使用し,又は収益することができる者=従前の宅地の所有者等。 仮換地の指定がされると,従前の宅地について権原に基づいて使用収益できる者は,仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで,仮換地については従前の宅地と同じ権利内容で使用収益することができるが,従前の宅地については使用収益することはできなくなる。(99条1項)
|
3.「保留地を購入した者は,土地区画整理事業の施行者の承諾を得ることなく,当該保留地において建築物の新築を行うことができる。」 |
【正解:○】昭和60年・問25・肢3,平成2年・問27・肢3, ◆保留地 保留地を購入すれば,当該保留地を使用収益する権利を取得する。保留地を購入した者が使用収益することについて,土地区画整理事業の施行者の承諾を得る必要はない。 ただし,換地処分の公告の日までの間に,施行区域内の土地に,建築物・工作物の建築,土地の形質の変更,移動が容易でない5t以上の物件を設置・堆積する場合には,都道府県知事等〔個人・組合・区画整理会社・市の施行では,当該市の市長の許可〕〔国土交通大臣施行の場合は国土交通大臣〕の許可が必要になる。(76条1項) ▼保留地の売買については換地処分の公告の日後(事業が完了した段階)に所有権移転登記を行うことになるので,その間土地の使用収益はできるが,土地登記簿に所有権は記載されない。 ▼保留地と公共施設の用地(道路,公園など)は減歩によって生み出される。保留地は換地処分の公告のあった日の翌日に施行者が取得する。(104条11項)したがって,換地処分の公告の日より前は,厳密には,「保留地予定地」である。保留地予定地は施行者が管理する土地(100条の2,仮換地に指定されない土地の管理)であり,保留地予定地の売買は,「施行者が所有権を取得することを停止条件とした売買」と考えられている。〔保留地予定地には抵当権を設定することもできない。〕 |
4.「換地処分の公告があった日後においては,土地区画整理事業の施行による変動に係る登記がされるまでは,施行地区内の土地について他の登記をすることは,原則としてできない。」 |
【正解:○】原則=平成2年・問27・肢4,例外も含めて=10年・問23・肢3, ◆換地処分の公告のあった日後は,換地処分に伴う登記がなされるまでは,それ以外の登記をすることはできない。 換地処分の公告があった日後においては,土地区画整理事業の施行による変動に係る登記がされるまでは,施行地区内の土地について他の登記をすることは,原則としてできない。(107条3項) 例外=公告前に登記原因が生じたものについては,登記することができる(107条3項但書)。換地処分に伴う登記がなされていないときに,換地処分の公告前に登記原因が生じたものについて登記しても,混乱が生じないからである。 |
●条文確認 |
(換地処分に伴う登記等) 第107条 施行者は、第103条第4項の公告〔換地処分の公告〕があつた場合においては、直ちに、その旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知しなければならない。 2 施行者は、第103条第4項の公告〔換地処分の公告〕があつた場合において、施行地区内の土地及び建物について土地区画整理事業の施行に因り変動があつたときは、政令で定めるところにより、遅滞なく、その変動に係る登記を申請し、又は嘱託しなければならない。 3 第103条第4項の公告〔換地処分の公告〕があつた日後においては、施行地区内の土地及び建物に関しては、前項に規定する登記がされるまでは、他の登記をすることができない。但し、登記の申請人が確定日付のある書類によりその公告前に登記原因が生じたことを証明した場合においては、この限りでない。 4 施行地区内の土地及びその土地に存する建物の登記については、政令で、不動産登記法 (明治32年法律第24号)の特例を定めることができる。 |
過去問アーカイブス・法令制限に戻る 土地区画整理法の過去問アーカイブスに戻る