法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成4年・問23 容積率・建ぺい率・日影規制・用途規制


下図のような近隣商業地域と第二種住居地域にまたがる敷地に建築物を建築する場合の制限に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。ただし,街区の角にある敷地として特定行政庁の指定を受けているものとし,また,他の地域地区等の指定及び特定道路による影響はなく,特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域でもないものとする。(平成4年・問23)

  <この図は,イメージ図で原図の意匠とは若干,異なります。>

  道路の向かい側    

←5m→

  

 

       

 近隣商業地域

 120平方メートル

 第二種住居地域

 80平方メートル

  

  隣接地 

                      ↑
                      5m
                      ↓
 都市計画で定められた容積率の最高限度
 近隣商業地域 40/10  第二種住居地域 20/10

 都市計画で定められた建ぺい率の最高限度
 近隣商業地域 8/10  第二種住居地域 6/10

1.「適用される建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合 (容積率) の最高限度は,260パーセントである。」

2.「適用される建築物の建築面積の敷地面積に対する割合 (建ぺい率) の最高限度は,72パーセントである。

3.「地方公共団体の条例により,建築基準法第56条の2の日影による中高層の建築物の高さの制限が適用されることはない。」

4.「倉庫業を営む倉庫は,特定行政庁の許可を受けなければ,建築することはできない。」

【正解】

× × ×

●問題文の条件の意味
他の地域地区等の指定は考慮しない

 「特例容積率適用地区」や「高層住居誘導地区」内ではないものとする。

特定道路は考慮しない

 「特定道路」から70m以内にある敷地では,前面道路の幅員による容積率の制限を緩和する措置があるが,この措置は考えないということ。(建築基準法・52条8項)

特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない

 「特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域」では,前面道路の幅員による容積率の限度を求めるときの法定乗数が原則と異なるので,本問題では原則どおりの法定乗数でよいということ。

 区域 原則としての法定乗数
住居系の用途地域内  10分の4
住居系以外の用途地域内・

用途地域の指定のない区域内

 10分の6

1.「適用される建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合 (容積率) の最高限度は,260パーセントである。」

【正解:昭和63年・問23,平成4年・問23・肢1,平成10年・問22・肢3,

敷地が容積率の異なる2以上の区域・地域にわたる場合の容積率

●敷地が容積率の異なる2以上の区域・地域にわたる場合の容積率

 計算の手順

  2つの区域ごとに,それぞれの容積率の限度を求める。

 (1) <道路の幅員×法定乗数>(前面道路の幅員による制限)を算出する。

 (2) (1)と都市計画で定められた容積率の限度と大小を比べ,
    小さいほうがその区域での容積率の限度となる。

  加重平均する。
  〔区域ごとに,『容積率の限度×その敷地での面積割合』を求め,その合計〕

  2つの区域ごとに,それぞれの容積率の限度を求める。

     近隣商業地域  第二種住居地域
都市計画で定められた限度   40/10   20/10
前面道路による容積率の限度
5m×
30
10 10
5m×
20
10 10
小さい方が容積率の限度になる
30
40
10 10
20
20
10 10
 近隣商業地域に属する敷地の部分の容積率の限度は,『前面道路の幅員による容積率の限度』になる。

 第二種住居地域に属する敷地の部分では,『都市計画で定められた限度』,算出した『前面道路による容積率の限度』とも同じなので,容積率の限度は20/10になる。

  加重平均する。
  〔区域ごとに,『容積率の限度×その敷地での面積割合』を求め,その合計〕

 容積率の限度   ( 30
× 120
――
20
× 80
――
) = 260
――
10 200 10 200 100

  次のように分母が100になるように約分してから計算すると速いです。

 ( 30
×  6
――
20
×  4
――
) = 260
――
100 100 100

 これにより,本肢は正しく,本問題の正解肢になります。

2.「適用される建築物の建築面積の敷地面積に対する割合 (建ぺい率) の最高限度は,72パーセントである。

【正解:×

◆2以上の用途地域や区域にわたる場合→加重平均

 建築物の敷地が建ぺい率の制限の異なる2以上の地域にわたる場合は,当該建築物の建ぺい率は,当該各地域内の建ぺい率の限度に,その敷地面積の中で当該各地域内の面積が占める割合を乗じて得たものの合計〔加重平均〕以下としなければいけません。(建築基準法・53条2項)

 このとき,この敷地は<街区の角にある敷地として特定行政庁の指定を受けている>ので,近隣商業地域・第二種住居地域とも,都市計画で定められた建ぺい率の最高限度に1/10を加算するのを忘れないでください。(建築基準法・53条3項2号)

 近隣商業地域  8/10     1/10を加算する  → 9/10 
 第二種住居地域  6/10  → 7/10 

建築物の敷地が,建ぺい率の制限の異なる2以上の地域にわたる場合

 その敷地が地域と地域にわたる場合の建ぺい率の最高限度を求める計算式は,以下のとおりです。

 建築物の 

 建ぺい率

 その地域の建ぺい率(容積率)×敷地内での地域の面積割合
 その地域の建ぺい率(容積率)×敷地内での地域の面積割合

 これを当てはめて計算すると次のようになります。本肢は,72パーセントとしているので誤りです。

計算式約分してから計算する

 建ぺい率
× 120
――

×  80
――
 82
――
・・・(計算結果)
10 200 10 200 100

計算の技術約分してから計算する

 分母が100になるように約分して計算すると速いです。

 建ぺい率
×  6
――

×  4
――
 82
――
100 100 100

3.「地方公共団体の条例により,建築基準法第56条の2の日影による中高層の建築物の高さの制限が適用されることはない。」

【正解:×

◆日影規制と用途地域

 近隣商業地域と第二種住居地域のどちらも区域内の建築物に,地方公共団体の条例で日影規制を適用することができるので,本肢は誤りです。

 なお,日影時間の制限の異なる2つの区域にわたるときは,建築物は両方の区域の規制に適合しなければいけません。(施行令・135条の13)

日影規制が適用される建築物
低層住居専用地域  軒の高さ7mを超えるか,又は,
 地階を除き階数3以上の建築物・・・(1)
低層住居専用地域以外の適用区域

(低層住居専用地域以外の5つの住居系

+近隣商業+準工業)

 高さが10 m超・・・(2)
用途地域の指定のない区域  ・・・(1),(2)のどちらか
 地方公共団体が条例で決めます

4.「倉庫業を営む倉庫は,特定行政庁の許可を受けなければ,建築することはできない。」

【正解:×

◆2以上の用途地域にわたる場合 → 面積の過半を占める用途地域の用途制限

 建築物の敷地が2以上の用途地域にわたる場合の用途規制は,その敷地の過半が属する用途地域の制限が適用されます。(建築基準法・91条)

 本問題では,『近隣商業地域 : 120平方メートル』,『第二種住居地域 : 80平方メートル』で,近隣商業地域が過半を占めているので,この敷地全体は近隣商業地域の用途制限に従うことになります。

 倉庫業を営む倉庫は,準住居地域から工業専用地域で,特定行政庁の許可を受けなくても建築することができるので,近隣商業地域でも特定行政庁の許可を受けなくても建築することができます。(建築基準法・48条6項,7項,別表第二(へ)5号,(ト))


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