法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成6年・問21 第一種低層住居専用地域内の制限

高さ制限・敷地面積の最低限度・隣地斜線制限・外壁の後退距離


第一種低層住居専用地域内の建築物の制限に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成6年・問21)

1.「3階建ての住宅 (高さ10m) は,特定行政庁の許可を得なければ,建てることができない。」

2.「建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を都市計画で定める場合, 200平方メートルを超えない範囲で,定めなければならない。

3.「隣地斜線制限 (建築基準法第56条第1項第2号の制限をいう。) は,適用される。」

4.「都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては,2mを超えない範囲で,定めなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「3階建ての住宅 (高さ10m) は,特定行政庁の許可を得なければ,建てることができない。」

【正解:×昭和62年・問24・肢4,平成2年・問24・肢2,平成5年・問22・肢1,平成6年・問21・肢1,平成13年・問21・肢2,

◆低層住居専用地域内における建築物の高さの限度−10m又は12m

 高さ10mの建築物は,特定行政庁の許可を得なくても建てることができます。

 第一種・第二種低層住居専用地域内では,原則として,
建築物の高さは10m以下,又は,12m以下にしなければならない。

 第一種・第二種低層住居専用地域内では,10m又は12m〔どちらかが都市計画で建築物の高さの限度として定められています〕を超える建築物を建築できません。(建築基準法・55条1項)→註

 ただし,以下の場合,この高さの限度は適用されないので,本肢は誤りです。

・『その敷地の周囲に広い公園,広場,道路その他の空地を有する建築物で,特定行政庁が,低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認め,建築審査会の同意を得て,許可した場合』,(建築基準法・55条3項1号)

・『学校その他の建築物で,特定行政庁が,その用途によってやむを得ないと認め,建築審査会の同意を得て許可した場合(建築基準法・55条3項2号)

 註 高さの限度が10mの地域での例外

 建築物の高さの限度が10mと定められている地域内であっても,その敷地内に政令で定める空地を有し,かつ,その敷地面積が政令で定める規模以上〔原則として1,500平方メートル以上〕である建築物で,特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものの場合は,高さの限度を12mとすることができます。(建築基準法・55条2項)
 

2.「建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を都市計画で定める場合, 200平方メートルを超えない範囲で,定めなければならない。

【正解:

◆敷地面積の最低限度

 土地が虫食い状態に細分化されたり,分割されると,防災上危険な密集地区になります。このようなことにならないよう,良好な都市環境や良好な街並みの形成を図るためには,敷地面積の最低限度を定める必要があります。(建築基準法・53条の2・第1項)

 建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を都市計画で定める場合, 200平方メートルを超えない範囲で,定めなければなりません。(建築基準法・53条の2・第2項)

●建築基準法・53条の2
(建築物の敷地面積)
第53条の2  建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該最低限度以上でなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の敷地については、この限りでない。

一  前条第5項第1号に掲げる建築物 〔建ぺい率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物〕

二  公衆便所、巡査派出所その他これらに類する建築物で公益上必要なもの

三  その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物であつて、特定行政庁が市街地の環境を害するおそれがないと認めて許可したもの

四  特定行政庁が用途上又は構造上やむを得ないと認めて許可したもの

2  前項の都市計画において建築物の敷地面積の最低限度を定める場合においては、その最低限度は、200平方メートルを超えてはならない。

4  第44条第2項の規定は、第1項第3号又は第4号の規定による許可をする場合に準用する。

●予想問題
「用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められているときは,建ぺい率の限度が8/10とされている地域内で,かつ,防火地域にある耐火建築物の場合でも,敷地面積は当該最低限度以上でなければならない。」
【正解:×

 建築物の敷地面積は,用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められているときは,当該最低限度以上でなければなりませんが,『建ぺい率の限度が8/10とされている地域内で,かつ,防火地域にある耐火建築物』の場合は,最低限度よりも小さい敷地面積であってもよいとされています。(建築基準法・53条の2・第1項・1号)

 この例外規定は建ぺい率が適用されない場合の一つ(建築基準法・53条・第5項・1号)と同じだということを知っておく必要があります。

3.「隣地斜線制限 (建築基準法第56条第1項第2号の制限をいう。) は,適用される。」

【正解:×平成5年・問23・肢2,平成6年・問21・肢3,

◆隣地斜線制限は低層住居専用地域以外の区域に適用される。

 隣地斜線制限は,都市計画区域及び準都市計画区域内の第一種・第二種低層住居専用地域を除いた区域に適用されます。(建築基準法・56条・1項・2号)

 したがって,隣地斜線制限は,第一種低層住居専用地域には適用されないので,本肢は誤りです。

   北側斜線制限  隣地斜線制限  道路斜線制限
 低層住居専用地域   ある  × ない

 この地域での高さは
 10m又は12mを
 超えることができない
 ので不要。

  ある
 中高層住居専用地域   ある

 日影規制の対象
 なっているときは
 
適用されない。

  ある   ある
 上記以外の用途地域,

 用途地域の指定のない区域

 × ない   ある   ある

4.「都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては,2mを超えない範囲で,定めなければならない。」

【正解:×昭和55年・問20,61年・問22,平成6年・問21,

◆外壁後退距離1m or 1.5m

 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域では,日照,通風をよくして,災害防止などを図るため,都市計画で外壁の後退距離の限度が定められることがあります。

 外壁後退距離〔外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離〕は,都市計画でその限度〔1m,又は,1.5m〕が定められた場合は,政令で定める場合(施行令135条の21を除いて,当該限度以上でなければいけません。し(54条1項,2項)

 この外壁の後退距離に関する制限が適用されるのは,第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域に限られます。(54条1項)

●外壁・壁面線の制限
外壁後退距離 〔第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域〕
(54条1項,2項)(昭和55年・問20,61年・問22,平成6年・問21)

壁面線の指定 壁面線が特定行政庁により指定されているときは,建築物の壁,柱,高さ2m超の門・へいを,壁面線を越えて建築してはならない。(46条,47条)(平成5年・問22)

壁面の位置の制限 〔高度利用地区・特定街区〕建築物の壁又はこれに代わる柱は,建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き,原則として,都市計画で定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。(59条2項,60条2項)(昭和61年・問22)

隣地境界線に接する外壁 防火地域・準防火地域内にあり外壁が耐火構造の建築物は外壁を隣地境界線に接して設けることができる。(65条)(昭和58年・問28,平成9年・問23,15年・問20)


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