法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成6年・問23 用途制限


建築物の用途制限に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。ただし,特定行政庁の許可については考慮しないものとする。(平成6年・問23)

1.「第一種住居地域内においては,騒音の小さいカラオケボックスであれば,建築することができる。」

2.「火葬場は,公益上必要な施設であるので,第一種低層住居専用地域を除く全ての用途地域で,建築することができる。

3.「近隣商業地域内においては,床面積の合計が200平方メートル以下の個室付浴場であれば,建築することができる。」

4.「第一種中高層住居専用地域内においては,5階建ての大学を,建築することができる。」

【正解】

× × ×

1.「第一種住居地域内においては,騒音の小さいカラオケボックスであれば,建築することができる。」

【正解:×

◆カラオケボックス

 カラオケボックスは,第二種住居地域から建築できますが,第一種住居地域内では,騒音が小さくても,特定行政庁の許可なく,建築することはできません。

カラオケボックス・・・第二種住居地域から

   どこから建築可か 工業地域 工業専用
カラオケボックス 第2種住居地域から工業専用地域まで    
麻雀屋、ぱちんこ屋、

勝馬投票券発売所

第2種住居地域から工業地域まで    ×

2.「火葬場は,公益上必要な施設であるので,第一種低層住居専用地域を除く全ての用途地域で,建築することができる。

【正解:×☆例外的な問題☆

◆火葬場―用途地域とは違う規制に属する特殊建築物 (51条)

 火葬場等の処理施設は,1)48条の用途規制,2)51条の位置の指定の二つの規制を受けます。

 用途地域での建築物の制限を一覧表にしている別表第2には、火葬場の記載はどの用途地域にもありません。一見どこに作っても問題がないように思われますが(⇒48条の解釈による別解)、しかし、次のようなことに注意する必要があります。

 火葬場、ゴミ焼却場、汚物処理場、と畜場、卸売り市場など環境に影響を及ぼす一定の処理施設については、原則として都市計画でその位置を定めた場合にのみ、建築できる事になっています。(都市計画以外の建築では、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合、政令で定める規模の範囲内において新築・増築する場合にのみ建築できる。)

●48条の解釈による別解
 48条に係る建築基準法別表第二では,第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では『その用途地域に建築できる建築物』,第二種中高層住居専用地域〜工業専用地域では『その用途地域に建築できない建築物』が記載されています。

 そのどちらにも火葬場は書かれていないことを理由にして,

<第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では火葬場は建築できないが,第二種中高層住居専用地域〜工業専用地域では建築できる>

 とする解釈をすることが可能です。

  この解釈を踏まえると,次のような別解も考えられます。

 第一種・第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域では,火葬場を建築することはできないので,「第一種低層住居専用地域を除く全ての用途地域で,建築することができる。」とする本肢は誤りである。

●建築基準法51条についての通達・例規

1) 通達

住発第164号
昭和34年5月29日
建設省住宅局長から各都道府県知事あて

通達

五 都市における建築物に関する制限の整備について

(四) 卸売市場等の特殊建築物の位置の許可

 卸売市場、と畜場、火葬場、汚物処理場又はごみ焼却場の用途に供する建築物の敷地の位置の決定については、全域にわたる都市計画的見地から検討すべき性質のものと思料されるところから、これらの施設は、都市計画施設として決定することを原則とし、特定行政庁がその敷地の位置について許可しようとする場合においても、建築審査会の同意に替えて、都市計画審議会の議を経ることとし、更に、政令で定める軽微な規模の新築又は増築に関しては、許可を要しないこととしたものである。従つて、この種建築物の敷地の位置の決定については、都市計画審議会との間に密接な関連が生ずるので、あらかじめ、その組織、運営等について連絡協議されたい。

2) 例規

 昭和39年住指発第160号

法第54条[改正法第51条]ただし書による許可と法第49条[改正法第48条]各項ただし書による許可との関係

 昭和39年9月2日

建設省住宅局建築指導課長から愛知県建築部長宛
(照会)
 建築基準法第54条〔現51条〕に規定する特殊建築物で、その敷地の位置が都市計画の施設として決定されていないものの新築にあたつてその一部に法第49条〔現48条〕各項本文に抵触する部分がある場合は、法第54条ただし書による許可のみならず法第49条〔現48条〕各項ただし書による許可をも必要とするか、また、法第54条〔現51条〕ただし書の政令で定める範囲内の規定で新築または増築する場合はどうか。
(回答)
 建築基準法第54条〔現51条〕列記の建築物は、同条本文又はただし書により新築、増築できる場合でも、その建築物が法第49条〔現48条〕各項本文に抵触するときは、同条各項ただし書による許可をも必要とする。
 したがつて、貴質疑に係る場合はいずれも法第49条〔現48条〕各項ただし書による許可が必要と解する。

(昭和39年9月2日) 

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 建築基準法第51条の規定に係る特殊建築物には、その存在自体都市にとつて必要不可欠なものであつて、都市全体又は都市内の一定の区域において最適の位置を都市計画的視点から定める必要のあるものが該当すると考えるべきである。(昭和48年8月1日,昭和48年住街発第867号) 

3.「近隣商業地域内においては,床面積の合計が200平方メートル以下の個室付浴場であれば,建築することができる。」

【正解:×

◆個室付浴場

 個室付浴場は,規模に関係なく,商業地域内にのみ建築することができます。条文では,個室付浴場業に係る公衆浴場となっていますが,単なる公衆浴場とは似ても似つかぬ業種ですからマチガエないようにしてください。

個室付浴場・・・商業地域のみ。近隣商業地域もダメ。

   どこで建築できるか
公衆浴場 すべての用途地域で建築できる
個室付浴場 商業地域内のみ

商業地域内のみに建築できるもの・・・個室付浴場,ヌードスタジオ,ストリップ劇場,専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設,専ら性的好奇心をそそる写真その他の部品の販売を目的とする店舗

4.「第一種中高層住居専用地域内においては,5階建ての大学を,建築することができる。」

【正解:

◆大学

 大学を建築できるのは,第一種中高層住居専用地域からです。(階数や床面積の規模は関係ありません。)

   どこから建築可か 工業地域 工業専用
 幼稚園・小学校・
 中学校・高等学校
第1種低層住居専用地域から

準工業地域まで

 ×  ×
 大学,高等専門学校,
 専修学校,各種学校,
 病院
第1種中高層住居専用地域から

準工業地域まで

 ×  ×


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