法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成7年・問21 建築物の構造


建築物の構造に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成7年・問21)

1.「高さ13m又は軒の高さ9mを超える建築物は,常に主要構造部である壁を木造としてはならない。」

2.「建築物には,常に異なる構造方法による基礎を併用してはならない。

3.「高さ13mを超える建築物で,その最下階の床面積1平方メートルにつき100キロニュートン (SI単位) を超える荷重がかかるものの基礎ぐいの先端は,必ず良好な地盤に達していなければならない。」

4.「木造の建築物で階数が3であるものは,必ず構造計算によって,その構造が安全であることを確かめなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「高さ13m又は軒の高さ9mを超える建築物は,常に主要構造部である壁を木造としてはならない。」

【正解:×昭和58年・問24,平成7年・問21

◆高さ13m超 or 軒高9m超の建築物では,主要構造部に可燃材料を用いるときは,原則として,主要構造部を耐火構造等にしなければならない

 高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超える建築物で主要構造部に木造などの可燃材料を用いても,主要構造部を耐火構造または政令で定める技術的基準に適合する性能をもつものにしていればよいので(建築基準法21条1項),<常に主要構造部である壁を木造としてはならない>とする本肢は誤りです。

●主要構造部に可燃材料を用いた建築物→耐火構造等にしなければならない
(大規模の建築物の主要構造部)
第21条  高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超える建築物
(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、第2条第9号の2イに掲げる基準に適合するもの〔主要構造部が耐火構造または政令で定める基準に適合するもの〕としなければならない。ただし、構造方法、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物(政令で定める用途に供するものを除く。)は、この限りでない。

2 延べ面積が3,000平方メートルを超える建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の前項の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、第2条第9号の2イに掲げる基準に適合するものとしなければならない。

2条9号の2  耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1) 耐火構造であること。
(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。→ 耐火性能検証法
(i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

2.「建築物には,常に異なる構造方法による基礎を併用してはならない。

【正解:×

◆建築物の基礎

 建築物の基礎については,地震などの災害時だけでなく,通常のときでも荷重などで沈下しないように,構造方法が定められています。

 建築物には,原則として,異なる構造方法による基礎を併用してはいけませんが,建築物の基礎について国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合には,異なる構造方法による基礎を併用することができます。(施行令38条2項,4項)

 したがって,<常に異なる構造方法による基礎を併用してはならない>とする本肢は誤りです。

基礎の構造は地耐力に応じて決められます。

●建築基準法施行令
(基礎)
第38条  建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。

2  建築物には、異なる構造方法による基礎を併用してはならない。

3  建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。この場合において、高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超える建築物で、当該建築物に作用する荷重が最下階の床面積1平方メートルにつき100キロニュートンを超えるものにあつては、基礎の底部(基礎ぐいを使用する場合にあつては、当該基礎ぐいの先端)を良好な地盤に達することとしなければならない。

4  前二項の規定は、建築物の基礎について国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、適用しない。

5  打撃、圧力又は振動により設けられる基礎ぐいは、それを設ける際に作用する打撃力その他の外力に対して構造耐力上安全なものでなければならない。

6  建築物の基礎に木ぐいを使用する場合においては、その木ぐいは、平家建の木造の建築物に使用する場合を除き、常水面下にあるようにしなければならない。

3.「高さ13mを超える建築物で,その最下階の床面積1平方メートルにつき100キロニュートン (SI単位) を超える荷重がかかるものの基礎ぐいの先端は,必ず良好な地盤に達していなければならない。」

【正解:×

◆基礎ぐい

 建築物の基礎の構造は,建築物の構造,形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければなりません。

 高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超える建築物で,当該建築物に作用する荷重が最下階の床面積1平方メートルにつき100 kN(キロニュートン,SI単位) を超える荷重がかかるものの基礎ぐいの先端は,基礎の底部を良好な地盤に達することとしなければなりませんが,建築物の基礎について国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合には,基礎ぐいの先端は,必ずしも良好な地盤に達していなくても構いません(施行令38条3項,4項)

 したがって,<必ず良好な地盤に達していなければならない>とする本肢は誤りです。

4.「木造の建築物で階数が3であるものは,必ず構造計算によって,その構造が安全であることを確かめなければならない。」

【正解:平成7年・問21・肢1,平成9年・問25・肢2,

◆構造計算

 建築物の構造を安全なものにするために,建築基準法では,構造耐力の規定(20条)があります。また,これに即して施行令では構造強度の規定〔施行令第3章〕があります。

 建築物は,安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合していなければなりませんが,建築物の構造や規模によってはこの技術的基準のみでは不充分なため,さらに構造計算で安全性を確認しなければいけないとしています。

 構造計算しなければならないのは,全国共通に建築確認を受けなければならない大規模建築物(建築基準法6条1項2号・3号)などです。(建築基準法20条)

 本肢は「木造の建築物で階数が3」ですから全国共通に建築確認が必要な大規模建築物であり,構造計算が必要になります。(建築基準法20条3号,6条1項2号)

●構造計算をしなければならない建築物
・木造の建築物で3以上の階数を有し,又は延べ面積が500平方メートル,高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの(建築基準法20条2号,3号,6条1項2号の建築物)⇒平成7年・問21

・木造以外の建築物で2以上の階数を有し,又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの(建築基準法20条3号,6条1項3号)⇒平成9年・問25

構造計算が必要な建築物は,(1)高さが60m超,(2)高さが60m以下の二つに大別され,施行令,告示などによっても規定されています。


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