法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成9年・問25


次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成9年・問25)

1.「建築物の敷地には,雨水及び汚水を排出し,又は処理するための適当な下水管,下水溝又はためますその他これらに類する施設をしなければならない。」

2.「鉄筋造の建築物でも,延べ面積が300平方メートルのものであれば,その設計図書の作成にあたって,構造計算により構造の安全性を確かめる必要はない。

3.「住宅は,敷地の周囲の状況によってやむを得ない場合を除くほか,その2以上の居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない。」

4.「住宅の居室,学校の教室又は病院の病室は,防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する場合を除き,地階に設けることはできない。

【正解】

× × ×

1.「建築物の敷地には,雨水及び汚水を排出し,又は処理するための適当な下水管,下水溝又はためますその他これらに類する施設をしなければならない。」

【正解:

◆敷地の衛生と安全

 建築物の敷地には,雨水及び汚水を排出し,又は処理するための適当な下水管・下水溝・ためますその他これらに類する施設を設置しなければなりません。(建築基準法・19条3項)

建築基準法では,建築物だけでなく,建築物の敷地の衛生と安全についても規定されています。これまでのところあまり出題はありませんが,常識の範囲でも対処できますから覚えるというよりもざっと見ておく程度で十分でしょう。

●建築基準法・19条
(敷地の衛生及び安全)
第19条  建築物の敷地は、これに接する道の境より高くなければならず、建築物の地盤面は、これに接する周囲の土地より高くなければならない。ただし、敷地内の排水に支障がない場合又は建築物の用途により防湿の必要がない場合においては、この限りでない。

2  湿潤な土地、出水のおそれの多い土地又はごみその他これに類する物で埋め立てられた土地に建築物を建築する場合においては、盛土、地盤の改良その他衛生上又は安全上必要な措置を講じなければならない。

3  建築物の敷地には、雨水及び汚水を排出し、又は処理するための適当な下水管、下水溝又はためますその他これらに類する施設をしなければならない。

4  建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

2.「鉄筋造の建築物でも,延べ面積が300平方メートルのものであれば,その設計図書の作成にあたって,構造計算により構造の安全性を確かめる必要はない。

【正解:×平成7年・問21・肢1,平成9年・問25・肢2,

◆構造計算

 建築物の構造を安全なものにするために,建築基準法では,構造耐力の規定(20条)があります。また,これに即して施行令では構造強度の規定〔施行令第3章〕があります。

 建築物は,安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合していなければなりませんが,建築物の構造や規模によってはこの技術的基準のみでは不充分なため,さらに構造計算で安全性を確認しなければいけないとしています。

 構造計算しなければならないのは,全国共通に建築確認を受けなければならない大規模建築物(建築基準法6条1項2号・3号)などです。(建築基準法20条)

 本肢は「鉄筋造,延べ面積が300平方メートル」ですから全国共通に建築確認が必要な大規模建築物であり,構造計算が必要になります。(建築基準法20条3号,6条1項3号)

●構造計算をしなければならない建築物
・木造の建築物で3以上の階数を有し,又は延べ面積が500平方メートル,高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの(建築基準法20条2号,3号)⇒平成7年・問21

・木造以外の建築物で2以上の階数を有し,又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの(建築基準法20条3号)⇒平成9年・問25

構造計算が必要な建築物は,(1)高さが60m超,(2)高さが60m以下の二つに大別され,施行令,告示などによっても規定されています。

3.「住宅は,敷地の周囲の状況によってやむを得ない場合を除くほか,その2以上の居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない。」

【正解:×平成9年・問25・肢3,平成12年・問22・肢1,

◆住宅の居室の日照の規定〔旧・29条〕は現在では削除されている

 住宅の居室のうち居住のために使用されるものには,窓などの開口部の採光に有効なな部分の面積はその居室の床面積に対して1/7以上と定められていますが(建築基準法・28条1項),建築基準法には現在,「居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない」という規定はありません。そのため,本肢は誤りです。

採光の有効面積割合の規定は,住宅の居室では「居住のために使用されるもの」に限られており,住宅内のすべての居室に適用されるのではないことに注意。

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 出題当時の狙いは下記の旧29条を見ればわかるように条文では「1以上の居室」となっていたことに気づくかどうかでした。しかし,この規定は出題後の平成10年6月12日に施行された法改正があり,現在では削除されているので,これよりもむしろ採光の規定に注意するべきでしょう。

●建築基準法・旧29条→現在は削除されている。
住宅は,敷地の周囲の状況によってやむを得ない場合を除く他,その1以上の居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない。

4.「住宅の居室,学校の教室又は病院の病室は,防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する場合を除き,地階に設けることはできない。

【正解:×昭和58年・問24・肢3,平成9年・問25・肢4,

◆地階における住宅等の居室

 平成12年6月1日施行の法改正により地階の居室を設置する場合には,壁・床の防湿・防水の措置について政令で定める「衛生上必要な技術的基準」に適合しなければならないとされました。(建築基準法・29条,施行令22条の2)

地階・・・床が地盤面下にある階で,床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さ〔床面から天井の位置までの高さ〕の3分の1以上のものをいう。(施行令1条2号)

 → 地階の部屋の天井の位置が地盤面より上にあってもよい。

●建築基準法・29条

(地階における住宅等の居室)
第29条 住宅の居室、学校の教室、病院の病室又は寄宿舎の寝室で地階に設けるものは、壁及び床の防湿の措置その他の事項について衛生上必要な政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。

●原題

【原題】「住宅の居室,学校の教室又は病院の病室は,防火上支障のない場合を除き,地階に設けることができない。」

原則禁止から法改正により技術的基準に適合したものに変更

 平成12年6月施行の法改正前は,地階における住宅等の居室は原則として禁止されており,例外的に衛生上支障がない場合は設置することができました。本肢は旧30条の「衛生上支障がない場合を除き」を「防火上支障のない場合を除き」として作問されたものです。

●建築基準法・旧30条→現在は29条に移動し内容も変更されている。

(地階における住宅等の居室の禁止)
第30条 住宅の居室、学校の教室、病院の病室又は寄宿舎の寝室は地階に設けてはならない。ただし、居室の前面にからぼりがある場合その他衛生上支障がない場合においては、この限りではない。


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