法令上の制限 実戦篇
建築基準法の過去問アーカイブス 平成10年・問22 容積率・建ぺい率
下図のような敷地A(第一種住居地域内)及び敷地B(準工業地域内)に住居の用に供する建築物を建築する場合における当該建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合)及び建ぺい率 (建築面積の敷地面積に対する割合) に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。ただし,他の地域地区等の指定,特定道路及び特定行政庁の許可は考慮しないものとし,また,特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域でもないものとする。(平成10年・問22) |
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1.「敷地Aのみを敷地として建築物を建築する場合,容積率の最高限度は200%,建ぺい率の最高限度は60%となる。」 |
2.「敷地Bのみを敷地として建築物を建築する場合,敷地Bが街区の角にある敷地として特定行政庁の指定を受けているとき,建ぺい率の最高限度は20%増加して80%となる。」 |
3.「敷地Aと敷地Bをあわせて一の敷地として建築物を建築する場合,容積率の最高限度は264%となる。」 |
4.「敷地Aと敷地Bをあわせて一の敷地として建築物を建築する場合,建ぺい率の最高限度は74%となる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
●問題文の条件の意味 | ||||||
他の地域地区等の指定,特定道路及び特定行政庁の許可は考慮しないものとし,また,特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域でもないものとする。
・他の地域地区等の指定は考慮しない。 ⇒ 「特例容積率適用地区」や「高層住居誘導地区」内ではないものとする。 ・特定道路は考慮しない。 ⇒ 「特定道路」から70m以内にある敷地では,前面道路の幅員による容積率の制限を緩和する措置があるが,この措置は考えないということ。(建築基準法・52条8項) ・特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 ⇒ 「特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域」では,前面道路の幅員による容積率の限度を求めるときの法定乗数が原則と異なるので,本問題は原則どおりの法定乗数でよいということ。
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1.「敷地Aのみを敷地として建築物を建築する場合,容積率の最高限度は200%,建ぺい率の最高限度は60%となる。」 |
【正解:×】 ◆前面道路の幅員〔12m未満〕による制限
建ぺい率は,前面道路の幅員によって制限を受けないので,敷地A(第一種住居地域内)の建ぺい率の限度は都市計画で定められた6/10でよいのですが, 容積率は,前面道路の幅員が12m未満ならば,制限を受けます。敷地A(第一種住居地域内)の容積率の限度は,『都市計画で定められた限度』と『前面道路による容積率の限度』のうちの小さい方です。 計算すると,『前面道路による容積率の限度』のほうが小さいので,16/10〔160%〕が敷地Aの容積率の限度になります。これにより,本肢は誤りになります。
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●建ぺい率
原則 | 角地 | ▼防火+耐火 | 角地+防火+耐火 | |
住居地域
準住居地域 準工業地域 (住・準・準の地域) |
5/10
6/10 8/10 |
+1/10 |
+1/10
(8/10のときは 建ぺい率制限 は適用されない) |
+2/10
(8/10のときは 建ぺい率制限 は適用されない) |
●容積率
用途地域 | 容積率の最高限度 |
中高層住居専用地域 住居地域 準住居地域 近隣商業地域 準工業地域 |
10/10,15/10,20/10,30/10,40/10,50/10
のうち,都市計画で定められたもの |
●前面道路の幅員が12メートル未満である建築物の容積率 前面道路(前面道路が2以上あるときは,その幅員の最大のもの。)の幅員が12メートル未満である建築物の容積率は,当該前面道路の幅員のメートルの数値に,次の区分に従って定める数値を乗じたもの以下でなければならない。(建築基準法・52条2項)
※高層住居誘導地区内の建築物であって,その住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の3分の2以上であるものを除く。 |
2.「敷地Bのみを敷地として建築物を建築する場合,敷地Bが街区の角にある敷地として特定行政庁の指定を受けているとき,建ぺい率の最高限度は20%増加して80%となる。」 |
【正解:×】 ◆角地+特定行政庁の指定 ⇒ +1/10 街区の角にある敷地〔又はこれに準じる敷地〕で特定行政庁が指定する敷地の内にある建築物は,都市計画で定められた建ぺい率の最高限度に1/10を加えたものにすることができます(建築基準法53条3項2号)。 この問題の条件では,敷地Bは都市計画で定められた建ぺい率の最高限度は6/10ですから,これに1/10を加算した7/10になります。したがって,本肢は誤りです。 |
3.「敷地Aと敷地Bをあわせて一の敷地として建築物を建築する場合,容積率の最高限度は264%となる。」 |
【正解:○】昭和63年・問23,平成4年・問23・肢1,平成10年・問22・肢3, ◆敷地が容積率の異なる2以上の区域・地域にわたる場合の容積率
1 2つの区域ごとに,それぞれの容積率の限度を求める。 ⇒ 敷地Aと敷地Bをあわせて一の敷地としているので,
2 加重平均する。
次のように分母が100になるように約分してから計算すると速いです。
これにより,本肢は正しく,本問題の正解肢になります。 |
4.「敷地Aと敷地Bをあわせて一の敷地として建築物を建築する場合,建ぺい率の最高限度は74%となる。」 |
【正解:×】 ◆2以上の用途地域や区域にわたる場合→加重平均 建築物の敷地が建ぺい率の制限の異なる2以上の地域にわたる場合は,当該建築物の建ぺい率は,当該各地域内の建ぺい率の限度に,その敷地面積の中で当該各地域内の面積が占める割合を乗じて得たものの合計〔加重平均〕以下としなければいけません。(建築基準法・53条2項) ●建築物の敷地が,建ぺい率(容積率)の制限の異なる2以上の地域にわたる場合 その敷地が地域Aと地域Bにわたる場合の建ぺい率の最高限度を求める計算式は,以下のとおりです。
これを当てはめて計算すると次のようになりますが,本問題では,敷地A(第一種住居地域内)及び敷地B(準工業地域内)とも建ぺい率の最高限度はともに6/10ですから6/10のままで変わりません。したがって,計算する必要はありません。本肢は,74%としているので誤りです。 ●計算式●約分してから計算する
●計算の技術●約分してから計算する 分母が100になるように約分して計算すると速いです。
▼本問題では,<他の地域地区等の指定,特定道路及び特定行政庁の許可は考慮しない>としているので,特定行政庁の角地指定は考える必要はありません。 |