法令上の制限 実戦篇

土地区画整理法の過去問アーカイブス 平成10年・問23 換地処分・保留地


土地区画整理事業における換地処分に関する次の記述のうち,土地区画整理法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成10年・問23)

1.「換地処分は,換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事がすべて完了した場合でなければ,することができない。」

2.「土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の換地計画において保留地が定められた場合,当該保留地は,換地処分の公告のあった日の翌日においてすべて土地区画整理組合が取得する。

3.「換地処分の公告があった日後においては,施行地区内の土地及び建物に関して,土地区画整理事業の施行による変動に係る登記が行われるまで,他の登記をすることは一切できない。」

4.「土地区画整理事業の施行により公共施設が設置された場合,施行者は,換地処分の公告のあった日の翌日以降に限り,公共施設を管理する者となるべき者にその管理を引き継ぐことができる。」

 ガイド   肢1・肢3・肢4については例外まで含めて正誤を判定しなければならない。

【正解】

× × ×

1.「換地処分は,換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事がすべて完了した場合でなければ,することができない。」

【正解:×原則=平成3年・問26・肢2,例外も含めて=平成10年・問23・肢1

◆換地処分の時期

 換地処分は,原則として換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において行わなければならないが(103条2項)例外もある

 規準・規約・定款などで別段の定めがあれば区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了していなくても,換地処分をすることができる。(103条2項但書)

 したがって,<工事がすべて完了した場合でなければ,することができない>とする本肢は誤りである。

平成3年の問題では,『原則として』という文言が入っているのでになるが,平成10年の問題では『原則として』という文言が入っていないために×というのは少しイジワルかもしれない。

●対比問題

.「換地処分は,原則として換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において行わなければならない。(平成3年・問26・肢2)

【正解:

2.「土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の換地計画において保留地が定められた場合,当該保留地は,換地処分の公告のあった日の翌日においてすべて土地区画整理組合が取得する。

【正解:昭和56年・問26・肢2,平成元年・問26・肢1,4年・問27・肢4,10年・問23・肢2

◆保留地の取得

 換地計画において定められた保留地は,換地処分の公告があった日の翌日に,施行者が取得する。(104条11項)

 本肢での施行者は土地区画整理組合なので,保留地は土地区画整理組合が取得する。

3.「換地処分の公告があった日後においては,施行地区内の土地及び建物に関して,土地区画整理事業の施行による変動に係る登記が行われるまで,他の登記をすることは一切できない。」

【正解:×原則=平成2年・問27・肢4,例外も含めて=10年・問23・肢3,

◆換地処分の公告のあった日後は,換地処分に伴う登記がなされるまでは,それ以外の登記をすることはできない。

 換地処分の公告があった日後においては,土地区画整理事業の施行による変動に係る登記がされるまでは,施行地区内の土地について他の登記をすることは,原則としてできない。(107条3項)

 例外=公告前に登記原因が生じたものについては,登記することができる(107条3項但書)。換地処分に伴う登記がなされていないときに,換地処分の公告前に登記原因が生じたものについて登記しても,混乱が生じないからである。

肢1でみたのと全く同じ出題履歴構成である。このような出題方法は改善していただきたい。

4.「土地区画整理事業の施行により公共施設が設置された場合,施行者は,換地処分の公告のあった日の翌日以降に限り,公共施設を管理する者となるべき者にその管理を引き継ぐことができる。」

【正解:×原則=平成6年・問26・肢2,平成15年・問22・肢4,例外も含めて=10年・問23,

◆設置された公共施設の管理の引継ぎ

 原則=土地区画整理事業の施行により新たに設置された公共施設は,換地処分の公告があった日の翌日に,原則として,その公共施設の所在する市町村の管理に属する。(管理すべき者について,他の法律・規準・規約・定款・施行規程に別段の定めがある場合を除く。)(106条1項)

原則としては換地処分の公告があった日の翌日に公共施設の管理を引き継ぐことになっているが,公共施設の工事の進捗状況によっては,管理の引継ぎの日は下記のようにスライドできる。例外1のように,換地処分の公告がある日以前に引継ぎができる場合があるので,<換地処分の公告のあった日の翌日以降に限り>とする本肢は誤りである。

 例外(1) 換地処分の公告の前に引き継ぐ場合
 施行者は,換地処分の公告がある日以前においても,公共施設に関する工事が完了した場合においては,その公共施設を管理する者となるべき者にその管理を引き継ぐことができる。 (106条2項)

 例外(2) 換地処分の公告の後に引き継ぐ場合
 施行者は,換地処分の公告があった日の翌日において,公共施設に関する工事を完了していない場合においては,その工事が完了したときに,その公共施設を管理すべき者にその管理を引き継ぐことができる。(106条3項)


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