法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成11年・問21 容積率 

延べ面積不算入・高度地区・


建築物の容積率 (延べ面積の敷地面積に対する割合) に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成11年・問21)

1.「容積率の算定に当たり,建築物の延べ面積の1/3を限度として,地下室の床面積を建築物の延べ面積に算入しないとする特例は,住宅以外の用途に供する部分を有する建築物には適用されない。」

2.「容積率の算定に当たっては,共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は,その建築物の延べ面積には算入しない。

3.「高度地区内においては,容積率は,高度地区に関する都市計画で定められた内容に適合しなければならない。」

4.「商業地域内で,かつ,防火地域内にある耐火建築物については,容積率制限は適用されない。」

【正解】

× × ×

1.「容積率の算定に当たり,建築物の延べ面積の1/3を限度として,地下室の床面積を建築物の延べ面積に算入しないとする特例は,住宅以外の用途に供する部分を有する建築物には適用されない。」

【正解:×

◆住宅の地階部分の延べ面積不算入は,住宅の用途に供する部分の床面積の1/3が限度

 容積率の算定の基礎となる延べ面積には,いくつか緩和措置があります。

 建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1メートル以下にあるものの住宅の用途に供する部分の床面積は,当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の1/3を限度として,延べ面積には算入しません。(建築基準法・52条3項)

 本肢には3つの誤りがあります。

・建築物の延べ面積の1/3を限度。→ <住宅の用途に供する部分の床面積の合計の1/3>を限度とする。

・地下室の床面積を建築物の延べ面積に算入しない 

 → 地階にあるならどんな用途でもいいということではない。延べ面積に算入しないのは,<建築物の地階で住宅の用途に供する部分の床面積>。地下室では不十分。

・住宅以外の用途に供する部分を有する建築物には適用されない。

 → 住宅以外の用途に供する部分を有する建築物にも適用される。<住宅の用途に供する部分>を有する建築物であれば,この緩和措置の適用が受けられる。

●延べ面積不算入となるもの
住宅の地階部分

 当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の1/3を限度として,延べ面積に算入しない。(建築基準法・52条3項)

共同住宅の廊下または階段

 容積率の算定の基礎となる延べ面積には,共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は,算入しない(建築基準法・52条5項)

自動車又は自転車の停留や駐車のための施設

 自動車又は自転車の停留や駐車のための施設の部分〔誘導車路,操車場所,乗降場を含む。〕の床面積は,その建築物の各階の床面積の合計の1/5を限度として,延べ面積に算入しない。(建築基準法・施行令・2条1項4号,3項)

2.「容積率の算定に当たっては,共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は,その建築物の延べ面積には算入しない。

【正解:

◆共同住宅の廊下または階段の延べ面積不算入

 容積率の算定の基礎となる延べ面積には,共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は,算入しません(建築基準法・52条5項)

3.「高度地区内においては,容積率は,高度地区に関する都市計画で定められた内容に適合しなければならない。」

【正解:×昭和61年・問23・肢3,平成11年・問21・肢3,

◆高度地区−建築物の高さ

 「容積率」ではなく,「建築物の高さ」です。

 高度地区内での建築物の高さは,高度地区に関する都市計画で定められた内容に適合するものでなければいけませんが,高度地区に関する都市計画で容積率を定めるという規定はありません。(建築基準法・58条)

 高度地区は,用途地域内において市街地の環境を維持し,また土地利用の増進を図るため,建築物の高さの最高限度又は最低限度を定めるものです(都市計画法8条3項2号ト,9条17号)

 高度地区は,用途地域内に重ねて指定されるものであり,容積率は,当該用途地域に関する都市計画で既に定められています。用途地域内では,都市計画に必ず容積率を定めなればならないからです(都市計画法8条3項2号イ)

●高度地区の都市計画で定めるもの  

     高さの最高限度または最低限度,

     (準都市計画区域内では高さの最高限度のみ。)

                            (都市計画法・8条3項・2号ト)

4.「商業地域内で,かつ,防火地域内にある耐火建築物については,容積率制限は適用されない。」

【正解:×

◆防火地域+耐火建築物 ⇒ 建ぺい率8/10以外の区域では1/10の加算

 容積率でこのような規定はありません。容積率と建ぺい率との混同に注意してください。

建ぺい率について

 都市計画で定められた建ぺい率  防火地域内の耐火建築物の場合
 建ぺい率の限度8/10  建ぺい率の制限は適用されない。
 建ぺい率の限度8/10  1/10が加算されるだけ。

 商業地域内で,かつ,防火地域内の耐火建築物

 商業地域 (都市計画で建ぺい率の限度が8/10と定められている。) 内で,かつ,防火地域内の耐火建築物の場合は建ぺい率の制限は適用されません。(建築基準法・53条5項1号)

●参考●

4.「近隣商業地域及び商業地域内で,かつ,防火地域内にある耐火建築物については,建ぺい率制限は適用されない。」

【正解:×

 宅建試験では,『問題文の一部にワザと改正前の記述を紛れ込ませて,違和感を感じさせ,受験者を混乱させる』というお家芸があるので,原題が出題されても対処できるようにしておきましょう。

<註>ここは近年改正があったところです。改正前は,近隣商業地域・商業地域とも都市計画で定める建ぺい率の最高限度は8/10のみであり,近隣商業地域・商業地域内にあって,かつ,防火地域内の耐火建築物の場合は建ぺい率の制限は適用されませんでした。(建築基準法・旧・53条4項1号)

  原則 角地 防火+耐火 角地防火+耐火
 近隣商業地域

 建ぺい率6/10のとき

6/10 +1/10  +1/10

+2/10

 近隣商業地域

 建ぺい率8/10のとき

8/10

+1/10

建ぺい率制限

は適用されない)

建ぺい率制限

は適用されない

 商業地域 8/10

+1/10

建ぺい率制限

は適用されない

建ぺい率制限

は適用されない


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