法令上の制限 実戦篇
建築基準法の過去問アーカイブス 平成12年・問22 単体規定・防火壁・非常用昇降機
次の記述のうち,建築基準法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成12年・問22) |
1.「住宅は,敷地の周囲の状況によってやむを得ない場合を除き,その1以上の居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない。」 |
2.「高さ25mの建築物には,周囲の状況によって安全上支障がない場合を除き,有効に避雷設備を設けなければならない。」 |
3.「高さ25mの建築物には,安全上支障がない場合を除き,非常用の昇降機を設けなければならない。」 |
4.「延べ面積が2,000平方メートルの準耐火建築物は,防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し,かつ,各区画の床面積の合計をそれぞれ500平方メートル以内としなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「住宅は,敷地の周囲の状況によってやむを得ない場合を除き,その1以上の居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない。」 |
【正解:×】 ◆住宅の居室の日照の規定〔旧・29条〕は現在では削除されている 住宅の居室のうち居住のために使用されるものには,窓などの開口部の採光に有効な部分の面積はその居室の床面積に対して1/7以上と定められていますが(建築基準法・28条1項),建築基準法には現在,「居室の開口部が日照を受けることができるものでなければならない」という規定はありません。そのため,本肢は誤りです。 ●採光の有効面積割合の規定は,住宅の居室では「居住のために使用されるもの」に限られており,住宅内のすべての居室に適用されるのではないことに注意。 ---------------------------------------------------------------------- 旧29条は平成10年6月12日に施行された法改正により削除されていたにもかかわらず,出題当時,市販の一部の基本書や過去問集の解説(平成9年に旧29条の出題があったため)には法改正による削除前の記述が掲載されていました。恐らく,目ざとくそのことに目をつけた出題者が省コスト的に出題した典型例と思われます。このようなことがあるので,法改正を全く無視することはできません。 本問題は「正しいものはどれか」という設定ですが,このように改正前のものを選択肢の中に入れておけば,改正前のことしか知らない受験者は正しいものと思い,自動的にマチガエてしまうことになり,本問題での正答率は極端に低いものでした(30%台)。〔肢1にマークした受験者もほぼ30%だったことから考えると,本問題では4肢のうちの最初の肢1にポジショニングされていたことが正答率の低さにつながったと思われます。〕 ほかの3肢はさほど難しいものではないため,改正による旧29条の削除を知らなかった受験者が多かったものと推定できます。
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●類題 |
「地上階の居室の窓その他の開口部の採光に有効な部分の面積は,その居室の床面積の1/10としてよい。」(マンション管理士・平成14年・問20) |
【正解 : ×】1/10ではなく1/7以上。 |
2.「高さ25mの建築物には,周囲の状況によって安全上支障がない場合を除き,有効に避雷設備を設けなければならない。」 |
【正解:○】 ◆避雷設備 肢2と肢3に同じ高さ25mという数値を配置して混乱させるのが狙いの問題。数値を単に暗記するだけの学習だとこのような問題には弱いので注意。避雷設備と非常用昇降機の必要な高さを対比して覚えておきましょう。 高さ20mを超える建築物には,周囲の状況によって安全上支障がない場合を除き,有効に避雷設備を設けなければなりません。(建築基準法・28条1項,施行令・194条の14) この避雷設備は,建築物の高さ20mを超える部分を雷撃から保護するように設けなければなりません。(施行令・194条の14)
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●避雷設備 |
第33条 高さ20メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。 |
●類題 |
1.「高さ20メートルの住宅には避雷設備を設けなくてもよい。」(マンション管理士・平成14年・問20) |
【正解 : ○】高さ20メートルを超えるときは避雷設備が必要。20メートルならばギリギリ必要ではない。以上と超を混同している人をヒッカケる問題。 |
2.「高さ25mの建築物であれば,いかなる場合でも避雷設備を設けなければならない。」(管理業務主任者・平成16年・問25) |
【正解 : ×】宅建の平成12年の問題を参考に作問されたと思われる問題。高さ20mを超える建築物でも,周囲の状況によって安全上支障がない場合には設ける必要はない。 |
3.「高さ25mの建築物には,安全上支障がない場合を除き,非常用の昇降機を設けなければならない。」 |
【正解:×】平成11年・問22,12年・問22,15年・問20 ◆非常用の昇降機 高さ31mをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)は,非常用の昇降機を設けなければなりません。(建築基準法34条2項) しかし,本肢の建築物は高さ25mで高さ31m以下なので,非常用の昇降機を設ける必要はありません。 ▼非常用の昇降機とは,消防はしご車が届かない高層の建築物に火災が発生したときに消防隊が消火活動をすることができるように設置されるものです。 ▼高さが31mを超える建築物でも非常用の昇降機を設けなくてもよい場合がありますが,それは下記の施行令及び参考問題をご覧ください。↓ |
●昇降機 |
第34条 建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。 2 高さ31メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。 |
●非常用の昇降機の設置を要しない建築物 建築基準法施行令 |
(非常用の昇降機の設置を要しない建築物) 第129条の13の2 法第34条第2項 の規定により政令で定める建築物は、次の各号のいずれかに該当するものとする。 一 高さ31メートルをこえる部分を階段室、昇降機その他の建築設備の機械室、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する用途に供する建築物 二 高さ31メートルをこえる部分の各階の床面積の合計が500平方メートル以下の建築物 三 高さ31メートルを超える部分の階数が4以下の主要構造部を耐火構造とした建築物で、当該部分が床面積の合計100平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備でその構造が第112条第14項第1号イ及びハに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの(廊下に面する窓で開口面積が1平方メートル以内のものに設けられる法第2条第9号の二 ロに規定する防火設備を含む。)で区画されているもの 四 高さ31メートルをこえる部分を機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの |
●参考問題 |
以下の問題は覚える必要はありません。あくまでも参考程度です。 |
1.「高さ31メートルを超える部分を階段室及び建築設備の機械室のみに供している場合には,非常用の昇降機を設けなくてもよい。」(マンション管理士・平成14年・問20) |
【正解 : ○】施行令129条の13の2第1号そのままの出題。 |
4.「延べ面積が2,000平方メートルの準耐火建築物は,防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し,かつ,各区画の床面積の合計をそれぞれ500平方メートル以内としなければならない。」 |
【正解:×】〔例外〕平成11年・問22,12年・問22,〔原則〕15年・問20 ◆防火壁 延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物は,耐火建築物又は準耐火建築物である場合などを除き,防火上有効な構造の防火壁によつて有効に区画し,かつ,各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000平方メートル以内としなければなりません。(建築基準法・26条) しかし,本肢の場合は準耐火建築物なので,防火壁で区画する必要はありません。 |