法令上の制限 実戦篇
建築基準法の過去問アーカイブス 平成15年・問20
防火地域内において, 地階を除く階数が5(高さ25メートル) ,延べ面積が800平方メートルで共同住宅の用途に供する鉄筋コンクリート造の建築物で,その外壁が耐火構造であるものを建築しようとする場合に関する次の記述のうち,建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。(平成15年・問20) |
1.「当該建築物は,防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画しなければならない。」 |
2.「当該建築物について確認をする場合は,建築主事は,建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長へ通知しなければならない。」 |
3.「当該建築物には,安全上支障がない場合を除き,非常用の昇降機を設けなければならない。」 |
4.「当該建築物は,外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「当該建築物は,防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画しなければならない。」 |
【正解:×】〔例外〕平成11年・問22,12年・問22,〔原則〕15年・問20 ◆防火壁 延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物は,耐火建築物又は準耐火建築物である場合などを除き,防火上有効な構造の防火壁によつて有効に区画し,かつ,各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000平方メートル以内としなければなりません。(建築基準法・26条) この建築物は,延べ面積が800平方メートルなので1,000平方メートル以内ですから,防火壁によって有効に区画する必要はありません。したがって,本肢は誤りです。 【参考】防火地域内の建築物は,原則として,階数や延べ面積によって耐火建築物か準耐火建築物のどちらかにしなければなりません(建築基準法・61条1号)。本肢では,防火地域内で面積が800平方メートルですから,耐火建築物にしなければならず,このことからも,防火壁によって区画する必要はありません。
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2.「当該建築物について確認をする場合は,建築主事は,建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長へ通知しなければならない。」 |
【正解:×】平成10年・問20,平成14年・問21,平成15年・問20, ◆消防同意 × 通知しなければならない。 → ○ 同意を得なければならない。 建築主事又は指定確認検査機関が建築確認をする場合には,原則として,当該建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長(消防本部を置かない市町村では,市町村長。)又は消防署長の同意を得なければ,当該確認をすることができません。(建築基準法・93条1項) |
●消防同意 |
(許可又は確認に関する消防長等の同意等) 第93条 特定行政庁、建築主事又は指定確認検査機関は、この法律の規定による許可又は確認をする場合においては、当該許可又は確認に係る建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長(消防本部を置かない市町村にあつては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長の同意を得なければ、当該許可又は確認をすることができない。 ただし、確認に係る建築物が防火地域及び準防火地域以外の区域内における住宅(長屋、共同住宅その他政令で定める住宅を除く。)である場合又は建築主事若しくは指定確認検査機関が第87条の2(建築設備への準用)において準用する第6条第1項若しくは第6条の2第1項の規定による確認をする場合においては、この限りでない。 |
3.「当該建築物には,安全上支障がない場合を除き,非常用の昇降機を設けなければならない。」 |
【正解:×】平成11年・問22,12年・問22,15年・問20 ◆非常用の昇降機 高さ31mをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)は,非常用の昇降機を設けなければなりません。(建築基準法34条2項) しかし,本肢の建築物は高さ25mで設置義務のない高さ31m以下なので,非常用の昇降機を設ける必要はありません。 ▼非常用の昇降機とは,消防はしご車が届かない高層の建築物に火災が発生したときに消防隊が消火活動をすることができるように設置されたものです。 |
●昇降機 |
第34条 建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。(昭和58年・問24・肢4) 2 高さ31メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。 |
●非常用の昇降機の設置を要しない建築物 |
(非常用の昇降機の設置を要しない建築物) 第129条の13の2 法第34条第2項 の規定により政令で定める建築物は、次の各号のいずれかに該当するものとする。 一 高さ31メートルをこえる部分を階段室、昇降機その他の建築設備の機械室、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する用途に供する建築物 二 高さ31メートルをこえる部分の各階の床面積の合計が500平方メートル以下の建築物 三 高さ31メートルを超える部分の階数が4以下の主要構造部を耐火構造とした建築物で、当該部分が床面積の合計100平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備でその構造が第112条第14項第1号イ及びハに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの(廊下に面する窓で開口面積が1平方メートル以内のものに設けられる法第2条第9号の二 ロに規定する防火設備を含む。)で区画されているもの 四 高さ31メートルをこえる部分を機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの |
4.「当該建築物は,外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」 |
【正解:○】昭和56年・問22,58年・問23,平成9年・問23,15年・問20 ◆隣地境界線に接する外壁−防火地域又は準防火地域内にある建築物− 防火地域・準防火地域内にあり外壁が耐火構造の建築物は外壁を隣地境界線に接して設けることができます。(建築基準法・65条) |
●外壁・壁面線の制限 |
・外壁後退距離 〔第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域〕 (54条1項,2項)(昭和55年・問20,61年・問22,平成6年・問21) ・壁面線の指定 壁面線が特定行政庁により指定されているときは,建築物の壁,柱,高さ2m超の門・へいを,壁面線を越えて建築してはならない。(46条,47条)(平成5年・問22) ・壁面の位置の制限 〔高度利用地区・特定街区〕建築物の壁又はこれに代わる柱は,建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き,原則として,都市計画で定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。(59条2項,60条2項)(昭和61年・問22) ・隣地境界線に接する外壁 防火地域・準防火地域内にあり外壁が耐火構造の建築物は外壁を隣地境界線に接して設けることができる。(65条)(昭和56年・問22,58年・問23,平成9年・問23,15年・問20) |