法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成18年・問22 

北側斜線制限・隣地斜線制限・天空率などによる制限の緩和・日影規制


建築基準法 (以下この問において 「法」 という。) に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(平成18年・問22)

1 第二種中高層住居専用地域内における建築物については、法第56条第1項第3号の規定による北側斜線制限は適用されない。

2 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域内における建築物については、法第56条第1項第2号の規定による隣地斜線制限が適用される。

3 隣地境界線上で確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして一定の基準に適合する建築物については、法第56条第1項第2号の規定による隣地斜線制限は適用されない。

4 法第56条の2第1項の規定による日影規制の対象区域は地方公共団体が条例で指定することとされているが、商業地域、工業地域及び工業専用地域においては、日影規制の対象区域として指定することができない。

<コメント>  
 建築基準法の建築物の各部分の高さ制限(斜線制限)と日影規制が,単独問題 として出題されたのは久しぶりで,おそらくは「このへんは余り勉強していな いだろう」と確信して,出題者は出題したものと思われます。

 案の定,肢3の天空率による適用除外を除けば,後は過去問の類題ばかりで ある割には正答率が低すぎる問題でした。

 近年の出題傾向に惑わされず,宅建試験対策で建築基準法上重要なものは何 であるのかを見つめなおす必要があるかもしれません。

 試験のための知識という意識の仕方だと,上滑りになり,単なる「アンキモ ノ」(暗記物)と化してしまうため,出題者に足元をすくわれます。 

●出題論点●
 (肢1) 中高層住居専用地域内では,日影規制の対象区域になっていると「北側斜線制限」は適用されない。  

 (肢2) 隣地斜線制限は,都市計画区域及び準都市計画区域内の第一種・第 二種低層住居専用地域を除いた区域に適用される。

 (肢3) 天空率等による隣地斜線制限の適用除外

 (肢4) 日影規制は,<商業地域,工業地域,工業専用地域>には, 指定されない。

【正解】

× × ×

 正答率  51.8%

1 第二種中高層住居専用地域内における建築物については、法第56条第1項第3号の規定による北側斜線制限は適用されない。

【正解:×昭和63年・問24・肢2,平成18年・問22・肢1,

◆北側斜線制限

 第一種・第二種中高層住居専用地域には,

                日影規制北側斜線制限のどちらか一方がある。

 第一種・第二種中高層住居専用地域のうち,日影規制の適用がない区域の建築物には,北側斜線制限が適用されます(建築基準法56条1項3号)

第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
 日影規制がない区域  北側斜線制限がある
 日影規制がある区域  北側斜線制限はない

 したがって,「北側斜線制限は適用されない。」とする本肢は誤りです。

2 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域内における建築物については、法第56条第1項第2号の規定による隣地斜線制限が適用される。

【正解:×平成5年・問23・肢2,平成6年・問21・肢3,平成18年・問22・肢2,

◆隣地斜線制限

 第一種・第二種低層住居専用地域では,隣地斜線制限よりも厳しい10mまたは12mの高さ制限があるので,隣地斜線制限を適用する意味がないので,隣地斜線制限は適用されません(建築基準法56条1項2号)

 したがって,『適用される』とする本肢は誤りです。

   北側斜線制限  隣地斜線制限  道路斜線制限
 低層住居専用地域   ある  × ない

 この地域での高さは
 10m又は12mを
 超えることができない
 ので不要。

  ある
 中高層住居専用地域   ある

 日影規制の対象
 なっているときは
 
適用されない。

  ある   ある
 上記以外の用途地域,

 用途地域の指定のない区域

 × ない   ある   ある

3 隣地境界線上で確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして一定の基準に適合する建築物については、法第56条第1項第2号の規定による隣地斜線制限は適用されない。

【正解:×初出題

◆天空率等による隣地斜線制限の適用除外

 誤 : 隣地境界線上で確保される

 正 : 隣地境界線からの水平距離が一定の距離だけ外側の線上の政令で定める位置で

 一定の位置(斜線制限により異なる)において確保される採光,通風等と同程度以上の採光,通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については,北側斜線制限,隣地斜線制限,道路斜線制限とも,適用されません。

政令で定める基準として天空率が用いられています。  

●天空率 (施行令135条の5)  

 確保される採光・通風等の指標として,天空率を建築基準法施行令で定義。 天空率とは,政令で定める,地上の一定の位置から見上げたときの,見える 空の割合 (大雑把にわかりやすく言えば,その点に魚眼レンズを置いたときに魚眼レンズに映る空の割合) を数値化したもので,天空率の高い建物は採光や通風が確保される とし,一定の条件を満たせば,その区域の都市計画で定められた斜線制限の数値に適合しない建築物でも 一定範囲ならば建築可能になる。→建築基準法56条7項

●適用される斜線制限 ⇒ 道路斜線,隣地斜線,北側斜線 (施行令135条の6〜135条の8)

(注意) 日影規制には、天空率による適用除外はない。

4 法第56条の2第1項の規定による日影規制の対象区域は地方公共団体が条例で指定することとされているが、商業地域、工業地域及び工業専用地域においては、日影規制の対象区域として指定することができない。

【正解:頻出・平成5年・問23・肢4,

◆日影規制の対象区域

 日影規制は,<商業地域,工業地域,工業専用地域>以外の用途地域で,地方公共団体が条例で指定する区域に適用されます(建築基準法56条の2第1項)


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