宅建過去問 法令上の制限
宅地造成等規制法の過去問アーカイブス 平成20年・問22
宅地造成等規制法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、この問における都道府県知事とは、地方自治法に基づく指定都市、中核市、特例市にあってはその長をいうものとする。 (平成20年・問22) |
1 宅地造成工事規制区域内において、森林を宅地にするために行う切土であって、高さ3mのがけを生ずることとなるものに関する工事を行う場合には、造成主は、都市計画法第29条第1項又は第2項の許可を受けて行われる当該許可の内容に適合した工事を除き、工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならない。 |
2 宅地造成工事規制区域内の宅地において、高さが3mの擁壁の除却工事を行う場合には、宅地造成等規制法に基づく都道府県知事の許可が必要な場合を除き、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならず、届出の期限は工事に着手する日の前日までとされている。 |
3 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、宅地造成工事規制区域又は造成宅地防災区域の指定のため測量又は調査を行う必要がある場合においては、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入ることができる。 |
4 都道府県知事は、造成宅地防災区域内の造成宅地について、宅地造成に伴う災害で、相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの防止のため必要があると認める場合は、その造成宅地の所有者のみならず、管理者や占有者に対しても、擁壁等の設置等の措置をとることを勧告することができる。 |
<コメント> |
正解肢の2を除いて,法改正が絡む問題で,肢4は19年問23肢4に続いて連続出題。デジャブ〔既視感覚〕かと思った方も多かったでしょう。正誤まで前年と全く出題というのはマレな出題ですが,サービス問題とは思えません。作問しているときに他に思いつかなかったとかではなく,何らかの意図があったものと思われます〔苦手意識を持つ方が多いので,出題者としては,どうせ過去問もロクに見てないだろうと思って,タカをくくった出題だったかもしれません。〕。
肢3は,こんな規定があったのかと思った方もいたでしょう。指定しようとする際に手続き上当然考えられるものなので,これをマチガイとした方は少ないと思います。 肢1は,法改正で追加された規定で,「開発許可を受けて,それに適合するものについては,規制区域での宅地造成工事の許可は要らない」というものです。この改正点を知らなかった方は迷ったかもしれません。 正解肢の2は,直近では,平成18年に出題されたものをチョコッと変えた肢であり,正解肢2をマークするのに,さほど難しい問題ではありませんでした。 |
●出題論点● |
(肢1) 開発許可を受けて,それに適合するものについては,規制区域での宅地造成工事の許可は要らない (肢2) 除却工事の届出−14日前まで (肢3) 測量又は調査のための土地の立入り (肢4) 災害防止措置の勧告 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
正答率 | 90.5% |
1 宅地造成工事規制区域内において、森林を宅地にするために行う切土であって、高さ3mのがけを生ずることとなるものに関する工事を行う場合には、造成主は、都市計画法第29条第1項又は第2項の許可を受けて行われる当該許可の内容に適合した工事を除き、工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならない。 |
【正解:○】法改正による初出題 ◆開発許可処分に適合した造成工事は,規制区域での許可不要 宅地造成工事規制区域内〔以下,規制区域〕では,森林を宅地にするために行う切土で,高さ2m超〔3mはこれに該当〕のがけを生ずることとなるものに関する工事〔宅地造成工事〕を行う場合には,原則として,造成主は,工事に着手する前に,都道府県知事〔指定都市の長等〕の許可を受けなければなりません(8条1項)。 ただし,都市計画法第29条の開発許可を受けて行われ,かつ,当該許可の内容に適合した工事については,規制区域内の宅地造成工事について都道府県知事の許可を受ける必要はありません(8条1項但書)。 |
2 宅地造成工事規制区域内の宅地において、高さが3mの擁壁の除却工事を行う場合には、宅地造成等規制法に基づく都道府県知事の許可が必要な場合を除き、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならず、届出の期限は工事に着手する日の前日までとされている。 |
【正解:×】昭和57年・問25・肢3,平成18年・問23・肢1, ◆一定の除却工事の届出 誤 : 工事に着手する日の前日までに (18年は,工事に着手する日までに) 正 : その工事に着手する日の14日前までに 宅地造成工事規制区域内の宅地で擁壁〔高さ2m超〕等に関する工事その他の工事で政令で定めるもの※を行おうとする者(宅地造成工事の許可,変更の許可を受け、または変更の届出をした者を除く。)は,その工事に着手する日の14日前までに,その旨を都道府県知事に届け出なければなりません(宅地造成等規制法15条2項)。 ▼「擁壁等に関する工事その他の工事で政令で定めるもの」とは,下記の除却工事のことです。(施行令18条) ※除却工事・・・高さ2m超の擁壁,地表水・地下水を排除するための排水施設,地滑り抑止ぐい等の全部または一部の除却工事 (青字は,18年改正で追加されたもの) |
●施行令 |
(届出を要する工事) 第18条 法第15条第2項 の政令で定める工事は、高さが2mを超える擁壁、地表水等を排除するための排水施設又は地滑り抑止ぐい等の全部又は一部の除却の工事とする。 ※地表水等・・・雨水その他の地表水又は地下水 (施行令5条3号) |
〔解説〕従来は,<高さが2mを超える擁壁、雨水その他の地表水を排除するための排水施設の全部又は一部の除却の工事>だったが,平成18年に2回にわたって施行令の改正が行われ,その結果,地下水を排除するための排水施設,地滑り抑止ぐい等が加わった。 |
3 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、宅地造成工事規制区域又は造成宅地防災区域の指定のため測量又は調査を行う必要がある場合においては、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入ることができる。 |
【正解:○】初出題 ◆区域指定のための測量や調査での立ち入り 都道府県知事,知事が命じた者・委任した者は,宅地造成工事規制区域の指定や造成宅地防災区域の指定のため,他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行う必要がある場合は,その必要の限度において,他人の占有する土地に立ち入ることができます(4条1項,20条3項)。 |
4 都道府県知事は、造成宅地防災区域内の造成宅地について、宅地造成に伴う災害で、相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの防止のため必要があると認める場合は、その造成宅地の所有者のみならず、管理者や占有者に対しても、擁壁等の設置等の措置をとることを勧告することができる。 |
【正解:○】平成19年・問23・肢4〔2年度連続で,正誤まで同じ出題〕, ◆造成宅地防災区域−災害防止措置の勧告 都道府県知事は,造成宅地防災区域内の造成宅地について,災害の防止のため必要があると認める場合は,その造成宅地の所有者,管理者,占有者に対して,擁壁等の設置や改造その他災害の防止のため必要な措置をとることを勧告することができます(21条2項)。 ▼造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者,管理者,占有者は,災害が生じないように,その造成宅地に擁壁等の設置や改造その他必要な措置を講ずるように努めなければなりません(21条1項)。 知事が勧告するのは,造成宅地の所有者,管理者,占有者の災害防止措置が不十分な場合です。 |
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