法令上の制限 実戦篇

土地区画整理法の過去問アーカイブス 昭和53年 保留地


土地区画整理事業における保留地の取得に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和53年)

1.「土地区画整理事業の施行地区の全域について仮換地の指定が完了すれば,保留地の保存登記をすることができる。」

2.「土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業においては,換地処分の公告があった日の翌日において,土地区画整理組合が保留地を取得する。

3.「土地区画整理事業の施行者と保留地の譲渡契約を締結した者は,換地処分のなされる前においても保留地の所有権を取得することができる。」

4.「市町村が施行する土地区画整理事業においては,換地処分に伴う登記が完了した日において,当該市町村が保留地を取得する。」

【正解】

× × ×

1.「土地区画整理事業の施行地区の全域について仮換地の指定が完了すれば,保留地の保存登記をすることができる。」

【正解:×平成2年・問27・肢4,10年・問23・肢3,

◆換地処分に伴う登記−保留地の登記

 不動産登記簿に,保留地という地目はなく,換地計画で保留地にする予定の宅地は,換地処分の公告の日までは,土地区画整理事業で「保留地予定地」の扱いをされるだけです。(保留地については,換地処分の公告の日まで所有権の登記ができない。)

 換地処分の公告の日の翌日に,施行者が保留地を原始取得し,不動産登記簿が作成(施行者が保留地の表示登記・保存登記を申請・嘱託する)されます。⇒換地処分の公告があった場合,施行者は,直ちに,その旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知して(107条1項),遅滞なく,その変動に係る登記を申請または嘱託しなければならない(107条2項)

 それまでは,保留地について登記がされることはありません。

 したがって,<仮換地の指定が完了すれば,保留地の保存登記をすることができる>とする本肢は誤りです。

●条文確認
(換地処分に伴う登記等)
第107条  施行者は、第103条第4項の公告〔換地処分の公告〕があつた場合においては、直ちに、その旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知しなければならない。

2  施行者は、第103条第4項の公告があつた場合において、施行地区内の土地及び建物について土地区画整理事業の施行に因り変動があつたときは、政令で定めるところにより、遅滞なく、その変動に係る登記を申請し、又は嘱託しなければならない。

3  第103条第4項の公告があつた日後においては、施行地区内の土地及び建物に関しては、前項に規定する登記がされるまでは、他の登記をすることができない。但し、登記の申請人が確定日付のある書類によりその公告前に登記原因が生じたことを証明した場合においては、この限りでない。

4  施行地区内の土地及びその土地に存する建物の登記については、政令で、不動産登記法 (明治32年法律第24号)の特例を定めることができる。

2.「土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業においては,換地処分の公告があった日の翌日において,土地区画整理組合が保留地を取得する。

【正解:昭和56年・問26・肢2,平成元年・問26・肢1,4年・問27・肢4,10年・問23・肢2

◆保留地の取得

 換地計画で定められた保留地は、換地処分の公告があった日の翌日に,施行者が取得します。(104条11項)

 本肢では土地区画整理組合の施行なので土地区画整理組合が保留地を取得します。

3.「土地区画整理事業の施行者と保留地の譲渡契約を締結した者は,換地処分のなされる前においても保留地の所有権を取得することができる。」

【正解:×昭和60年・問25・肢3,平成2年・問27・肢3,

◆保留地の譲渡

 保留地と公共施設の用地(道路,公園など)は減歩によって生み出され,保留地は換地処分の公告のあった日の翌日に施行者が取得します。(104条11項)

 したがって,換地処分の公告の日より前は,厳密には,「保留地予定地」です。保留地予定地は施行者が管理する土地(100条の2,仮換地に指定されない土地の管理)であり,保留地予定地の売買は,「施行者が所有権を取得することを停止条件とした保留地の売買」と考えられています。

 本肢では,<換地処分のなされる前においても保留地の所有権を取得することができる>となっていますが,換地処分のなされる前の段階では施行者はまだ保留地の所有権を取得していないわけですから,施行者と保留地の譲渡契約を締結した者は,まだ保留地の所有権を取得していないことになるので,誤りです。

保留地の売買については換地処分の公告の日後(事業が完了した段階)に所有権移転登記を行うことになるので,その間(移転登記が行われるまで)土地の使用収益はできるが,土地登記簿に所有権は記載されない。〔保留地予定地には抵当権を設定することもできない。〕

 ⇒ 換地処分の前に,施行者と保留地(保留地予定地)の譲渡契約を締結した者は,(通常は)施行者が『保留地台帳』に登載されることになります。登記簿には記載できないのでこのようにしているわけです。これは土地区画整理法には規定されていませんが,現実にはこのようなことが行われています。

4.「市町村が施行する土地区画整理事業においては,換地処分に伴う登記が完了した日において,当該市町村が保留地を取得する。」

【正解:×

◆保留地を施行者が取得するのは,換地処分の公告のあった日の翌日

 換地計画において定められた保留地は,換地処分の公告があった日の翌日に,施行者が取得し (104条11項),換地処分の公告の日後,施行者は,遅滞なく,その変動に係る登記を申請または嘱託しなければなりません(107条2項)

 本肢では市町村が施行する土地区画整理事業なので,市町村が取得することになります。

 しかし,市町村が保留地を取得するのは換地処分の公告があった日の翌日なので、<換地処分に伴う登記が完了した日>ではありません。


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