法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 昭和60年・問20 仮設建築物・建築確認(工作物)


建築基準法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和60年・問20)

1.「特定行政庁から建築の許可を受けた仮設建築物については,建ぺい率 (建築物の建築面積の敷地面積に対する割合) に関する規定の適用はない。」

2.「高さ4mを超える広告塔を建築しようとする場合には,建築主事の建築確認が必要である。

3.「階数が3の木造の旅館を新築しようとする場合には,建築主事の建築確認を受けなくてもよい。」

4.「階数が2の木造の建築物で延べ面積が100平方メートルであるものの設計図書の作成に当たっては,構造計算はしなくてもよい。」

【正解】

×

1.「特定行政庁から建築の許可を受けた仮設建築物については,建ぺい率 (建築物の建築面積の敷地面積に対する割合) に関する規定の適用はない。」

【正解:昭和60年・問20,平成16年・問21

◆仮設建築物に対する制限の緩和

 特定行政庁は,仮設興行場,博覧会建築物,仮設店舗その他これに類する仮設建築物について安全上,防火上及び衛生上支障がないと認める場合,1年以内の期間を定めてその建築を許可することができます。(建築基準法・85条5項前段)

 特定行政庁から建築の許可を受けた仮設建築物については,集団規定は適用されないため,建ぺい率 に関する規定も適用されません。(建築基準法・85条5項後段)

 集団規定 良好な市街地環境を確保する規定  都市計画区域及び
 
準都市計画区域内にのみ適用
 単体規定 建築物の安全性と衛生を確保する規定  全国どこでも一律に適用

集団規定は,良好な市街地環境を確保する規定であり,

 建築物と敷地との関係や道路,壁面線,用途規制,容積率,建ぺい率,敷地面積,外壁後退距離,建築物の高さの制限,建築物の各部分の高さ〔道路斜線制限,隣地斜線制限,北側斜線制限〕,建築物の日影制限,地域地区等〔高層住居誘導地区,高度地区,高度利用地区,特定街区,都市再生特別地区,防火地域,特定防災街区整備地区,景観地区,準景観地区,地区計画等〕

 などの建築基準法の第3章の規定を指します。

2.「高さ4mを超える広告塔を建築しようとする場合には,建築主事の建築確認が必要である。

【正解:

◆工作物への建築確認

 建築設備〔エレベーター,エスカレーター,特定行政庁が指定するもの〕の設置や工作物〔政令で定めるもの〕の築造は,日本全国どの区域においても,建築確認が必要です。(建築基準法・87条の2,88条)

 本肢の「高さ4mを超える広告塔」は建築確認の必要な政令で定める工作物に該当します。(建築基準法・88条1項,施行令138条1項)

●建築確認の規定の準用
 用途変更への準用 建築基準法・87条1項  完了検査の申請→完了の届出
 建築設備への準用 建築基準法・87条の2  −
 工作物への準用 建築基準法・88条  −

●建築確認の必要な,政令で定める工作物 (建築基準法88条,施行令138条)
・高さ2mを超える擁壁,
・高さ6mを超える煙突,
・高さ15mを超える鉄筋コンクリート造の柱,鉄柱,木柱その他これらに類するもの,
高さ4mを超える広告塔,広告板,装飾塔,記念塔その他これらに類するもの
・高さ8mを超える高架水槽,サイロ,物見塔その他これらに類するもの,

・観光のための昇降機,ジェットコースター,飛行塔その他これらに類する工作物で政令で指定するもの

・用途地域によって政令で指定される工作物〔製造施設,貯蔵施設,遊戯施設,処理場,自動車車庫の用途に供する工作物等。〕

3.「階数が3の木造の旅館を新築しようとする場合には,建築主事の建築確認を受けなくてもよい。」

【正解:×

◆木造の大規模建築物

 本肢の建築物は<階数が3>なので,木造の大規模建築物に該当し,新築するには,どの区域にあっても建築確認が必要です。

●木造の大規模建築物
地階を含む階数が3以上  ⇒   建築確認が必要

 新築,*増築,*改築,*移転
 大規模の修繕
 大規模の模様替え
 100平方メートル超の特殊建築物への用途変更

*増築・改築・移転は
 (防火・準防火地域外) 『10平方メートル超』のとき,確認要。
 (防火・準防火地域内) 面積に関係なく,確認が必要。

延べ面積500平方メートル超
高さ13m超
軒高9m超

4.「階数が2の木造の建築物で延べ面積が100平方メートルであるものの設計図書の作成に当たっては,構造計算はしなくてもよい。」

【正解:

◆構造計算・構造耐力

 構造計算しなければならないのは,全国共通に建築確認を受けなければならない大規模建築物(建築基準法6条1項2号・3号)などです。(建築基準法20条)

 本肢は「階数が2の木造の建築物で延べ面積が100平方メートル」なので,全国共通に建築確認が必要な大規模建築物には該当しないため,構造計算は必要ではありません。

●構造計算をしなければならない建築物
・木造の建築物で3以上の階数を有し,又は延べ面積が500平方メートル,高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの(建築基準法20条2号,3号,6条1項2号の建築物)⇒平成7年・問21

・木造以外の建築物で2以上の階数を有し,又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの(建築基準法20条3号,6条1項3号)⇒平成9年・問25

構造計算が必要な建築物は,(1)高さが60m超,(2)高さが60m以下の二つに大別され,施行令,告示などによっても規定されています。


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