法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 昭和61年・問23

容積率と高さの規定の緩和・特定街区・高度地区・高度利用地区


建築基準法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和61年・問23)

1.「敷地内に広い空地を有する建築物で特定行政庁が市街地環境の整備改善に資すると認めて認可したものについては,その許可の範囲内で建ぺい率 (建築物の建築面積の敷地面積に対する割合) の制限が緩和される。」

2.「特定街区内においては,建築物の壁は,原則として,特定街区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。

3.「高度地区内においては,建築物の高さは,高度地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。」

4.「高度利用地区内においては,建築物の建築面積は,原則として,高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。」

【正解】

×

1.「敷地内に広い空地を有する建築物で特定行政庁が市街地環境の整備改善に資すると認めて認可したものについては,その許可の範囲内で建ぺい率 (建築物の建築面積の敷地面積に対する割合) の制限が緩和される。」

【正解:×

◆敷地内に広い空地を有する等の建築物の特例 (総合設計制度)

 ⇒ 容積率・低層住居専用地域の高さの限度・斜線制限の緩和

 敷地内に政令で定める空地を有する等の一定の要件を備えた建築物で特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものについては,その許可の範囲内において,容積率・特例容積率適用地区内の容積率・低層住居専用地域内の高さの限度・道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限の限度を超えることができる緩和措置がありますが(建築基準法・59条の2・第1項,施行令136条)建ぺい率の制限の緩和はありません

 ⇒ 総合設計制度の概要については,国土交通省のページをご覧ください。中高層マンション・高層の商業ビル等ではよく用いられています。

●特定行政庁が許可する要件
・敷地内に政令で定める空地を有すること。〔都市計画での指定建ぺい率によって異なる。施行令136条1項〕

・敷地面積が政令で定める規模以上であること。〔用途地域によって異なる。施行令136条3項〕

・交通上・安全上・防火上・衛生上支障がなく,建ぺい率・容積率・各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものであること。

・建築審査会の同意を得ること。

●建築基準法・59条の2
(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例)
第59条の2  その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第52条第1項から第9項まで、第55条第1項、第56条又は57条の2第6項の規定による限度を超えるものとすることができる。

2  第44条第2項の規定は、前項の規定による許可をする場合に準用する。

壁面線の指定による建ぺい率の制限の緩和
(法第53条4項、施行令第135条の19、施行規則第10条の4の3)

 木造住宅密集市街地などにおいて、「隣地側の壁面線が指定されている場合」や「条例による壁面の位置の制限がある場合」は、採光・通風などの居住環境を保持できるので、特定行政庁が許可したときは、その許可の範囲内で、都市計画で定められた建ぺい率の制限を超えることができます。

 →老朽建築物の更新を促進するための建ぺい率の制限を緩和する制度です。

●建築基準法・53条4項
◆建築基準法53条4項

4  隣地境界線から後退して壁面線の指定がある場合又は第68条の2第1項の規定に基づく条例で定める壁面の位置の制限(隣地境界線に面する建築物の壁又はこれに代わる柱の位置及び隣地境界線に面する高さ2メートルを超える門又は塀の位置を制限するものに限る。)がある場合において、当該壁面線又は壁面の位置の制限として定められた限度の線を越えない建築物(ひさしその他の建築物の部分で政令で定めるものを除く。)で、特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したものの建ぺい率は、前三項の規定にかかわらず、その許可の範囲内において、前三項の規定による限度を超えるものとすることができる。

◆建築基準法施行令135条の19

(建ぺい率の制限の緩和に当たり建築物から除かれる部分)

法第53条第4項 の政令で定める建築物の部分は、次に掲げるものとする。

 一  軒、ひさし、ぬれ縁及び国土交通省令で定める建築設備
 二  建築物の地盤面下の部分
 三  高さが二メートル以下の門又は塀

◆建築基準法施行規則 10条の4の3

令第135条の19 第1号の国土交通省令で定める建築設備は、
かごの構造が壁又は囲いを設けている昇降機以外の建築設備とする。

2.「特定街区内においては,建築物の壁は,原則として,特定街区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。

【正解:関連・昭和63年・問24・肢4, 

◆特定街区−容積率の最高限度・高さの最高限度・壁面の位置の制限

●特定街区の都市計画で定めるもの  

     容積率の最高限度,高さの最高限度,壁面の位置の制限,

                            (都市計画法・8条3項・2号リ)

 特定街区の建築物については,都市計画で<容積率の最高限度,高さの最高限度,壁面の位置の制限>が定められています。(都市計画法・8条3項・2号リ)

 このため,都市計画で定められた<容積率の最高限度,高さの最高限度>以下でなければならず,都市計画で定められた<壁面の位置の制限>に反して建築することはできません。(建築基準法・60条1項・2項)

●特定街区で適用されない規定

  特定街区の建築物では,

     容積率,建ぺい率,敷地面積の最低限度,
     日影規制,道路斜線制限,隣地斜線制限,北側斜線制限

 等の建築基準法の規定は適用されない。(建築基準法・60条3項)

3.「高度地区内においては,建築物の高さは,高度地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。」

【正解:昭和61年・問23・肢3,平成11年・問21・肢3,

◆高度地区−建築物の高さ

 高度地区内での建築物の高さは,高度地区に関する都市計画で定められた内容に適合するものでなければいけません。(建築基準法・58条)

●高度地区の都市計画で定めるもの  

     高さの最高限度または最低限度,

     (準都市計画区域内では高さの最高限度のみ。)

                            (都市計画法・8条3項・2号ト)

4.「高度利用地区内においては,建築物の建築面積は,原則として,高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。」

【正解:

◆高度利用地区−建築面積

 高度利用地区内での建築物の建築面積は,原則として,都市計画で定められた内容に適合するものでなければいけません。(建築基準法・59条1項)

●高度利用地区の都市計画で定めるもの  

     容積率の最高限度及び最低限度,建ぺい率の最高限度,

     建築面積の最低限度,壁面の位置の制限,

                            (都市計画法・8条3項・2号チ)


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