税法その他 実戦篇

建物の過去問アーカイブス 平成19年・問50 

建築物の構造−木ぐい,速度圧,積雪荷重,耐久性等関係規定


建築物の構造に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 (平成19年・問50)

1 防火地域内に建築する仮設建築物の基礎に木ぐいを用いる場合、その木ぐいは、平家建ての木造の建築物に使用する場合を除き、常水面下にあるようにしなければならない。 

2 建築物に近接してその建築物を風の方向に対して有効にさえぎる他の建築物、防風林その他これらに類するものがある場合においては、その方向における速度圧は、一定程度まで減らすことができる。

3 積雪荷重の計算に当たり、雪下ろしを行う慣習のある地方においては、その地方における垂直積雪量が1mを超える場合においても、積雪荷重は、雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1mまで減らして計算することができる。

4 高さが60mを超える建築物を建築する場合、国土交通大臣の認定を受ければ、その構造方法を耐久性等関係規定に適合させる必要はない。

<コメント>  
 全問とも近時では初出題です。常識的に,肢2,肢3は○とわかりますが,肢1の「防火地域内に建築する仮設建築物」〔適用が除外されているんじゃないの?という惑い〕には迷ったと思います。

 肢4は,詳しく知らなくても,超高層建築物に耐久性規定が適用されないということはないだろうという常識的な判断でも,誤りと判断することができます。

●出題論点●
 

【正解】

×

 正答率  50.5%

1 防火地域内に建築する仮設建築物の基礎に木ぐいを用いる場合、その木ぐいは、平家建ての木造の建築物に使用する場合を除き、常水面下にあるようにしなければならない。 

【正解:≒初出題

◆木ぐい

 建築物の基礎に木ぐいを使用する場合,その木ぐいは,平家建の木造の建築物に使用する場合を除き,常水面下にあるようにしなければなりません(建築基準法施行令38条6項)

  本肢では,防火地域内の仮設建築物の場合となっていますが,防火地域内の応急仮設建築物でも建築基準法令の規定は適用されるので(建築基準法85条1項など),本肢は正しい記述です。

●建築基準法・仮設建築物に対する制限の緩和
(仮設建築物に対する制限の緩和)

第85条  非常災害があつた場合において、その発生した区域又はこれに隣接する区域で特定行政庁が指定するものの内においては、災害により破損した建築物の応急の修繕又は次の各号のいずれかに該当する応急仮設建築物の建築でその災害が発生した日から1月以内にその工事に着手するものについては、建築基準法令の規定は、適用しないただし、防火地域内に建築する場合については、この限りでない。

一  国、地方公共団体又は日本赤十字社が災害救助のために建築するもの

二  被災者が自ら使用するために建築するもので延べ面積が30平方メートル以内のもの

2  災害があつた場合において建築する停車場、官公署その他これらに類する公益上必要な用途に供する応急仮設建築物又は工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物については、第6条から第7条の6まで、第12条第1項から第4項まで、第15条、第18条(第23項を除く。)、第19条、第21条から第23条まで、第26条、第31条、第33条、第34条第2項、第35条、第36条(第19条、第21条、第26条、第31条、第33条、第34条第2項及び第35条に係る部分に限る。)、第37条、第39条及び第40条の規定並びに第三章の規定は、適用しないただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が50平方メートルを超えるものについては、第63条の規定〔防火地域・準防火地域の屋根の構造〕の適用があるものとする

2 建築物に近接してその建築物を風の方向に対して有効にさえぎる他の建築物、防風林その他これらに類するものがある場合においては、その方向における速度圧は、一定程度まで減らすことができる。

【正解:初出題

◆速度圧の緩和規定

 風圧力は,速度圧に風力係数を乗じて計算します(施行令87条1項)

 本肢は,この速度圧を緩和する規定から出題されています。

 速度圧は,原則として施行令87条2項で定める方法により計算しますが,建築物に近接してその建築物を風の方向に対して有効にさえぎる他の建築物,防風林その他これらに類するものがある場合,その方向における速度圧は,施行令87条2項の方法で求めた数値の二分の一まで減らすことができます(施行令87条3項)

 建築物を風の方向にさえぎるものがあれば,建築物の受ける風は弱まるはずなので,常識的にも理解できますね。

3 積雪荷重の計算に当たり、雪下ろしを行う慣習のある地方においては、その地方における垂直積雪量が1mを超える場合においても、積雪荷重は、雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1mまで減らして計算することができる。

【正解:初出題

◆積雪荷重

 雪下ろしを行う慣習のある地方で,その地方における垂直積雪量が1mを超える場合であっても,積雪荷重は,雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1mまで減らして計算することができます。

 要するに,この緩和規定は,<雪下ろしをする慣習がある地域内では,積雪量を多少減らして,積雪荷重を計算してもよい>としたものです。

●参考知識●建築基準法施行令・積雪荷重

 積雪荷重は,積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算します(建築基準法施行令86条1項)

 積雪の単位荷重は、積雪量1cmごとに1平方メートルにつき20N(ニュートン)以上としなければなりません (特定行政庁は,規則で,国土交通大臣が定める基準に基づいて多雪区域を指定し,その区域につきこれと異なる定めをすることができる)。

4 高さが60mを超える建築物を建築する場合、国土交通大臣の認定を受ければ、その構造方法を耐久性等関係規定に適合させる必要はない。

【正解:×初出題

◆耐久性関係規定 

 高さが60mを超える建築物では,構造方法について以下の基準に適合するものでなければなりません(建築基準法20条1項1号)

 (1)高さ60m超の建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。

 (2)その構造方法は,政令で定める基準に従った構造計算によって安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。

 (1)については,施行令36条1項に<政令で定める技術的基準は,耐久性等関係規定に適合する構造方法を用いることとする。>とあります。

 したがって,「国土交通大臣の認定を受ければ,その構造方法を耐久性等関係規定に適合させる必要はない」とする本肢は誤りです。 


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