宅建過去問
取引実務の過去問アーカイブス

 このディレクトリーは,学習上の参考資料〔宅建業法の事例問題の参考〕という位置づけです。現在は,登録実務講習制度があるので,税法その他の問題〔5問免除の問題〕として,取引実務についての問題が出題される可能性は低いと思われます(宅建業法の規定に係る事例問題としての出題は可能ですが)。

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■取引実務の過去問−出題年度別一覧

は,宅建業法分野で出題可能な肢問。

●昭和55年・問29
不動産の売買契約に際して,売主について実務上注意すべき事項に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1 売主が真の所有者か,または売却について権限を有する売主の代理人であるかどうかを調査することは,最も重要なことである。

2 不動産登記簿に所有権者として記載されている者であっても,真の所有権者であるとは限らない。

3 売主が個人であるときは,行為能力がない者と契約する場合があるので,売主が能力者かどうか確認する必要がある。

4 売主が法人であるときは,その法人が法人格を有し,かつ,その代表者が処分の権限を有するかどうかを調査するため,公証人役場で法人の登記簿を閲覧する必要がある。

【正解 : 4】

3 売主が制限行為能力者〔成年被後見人,被保佐人,補助人の同意を要する旨の審判を受けた被補助人,未成年〕の場合は,制限行為能力を理由とした取消しがなされる可能性があるので,注意しなければならない。

4 法人の登記簿の閲覧は,公証人役場ではなく,法務局(登記所)なので、誤り。

●昭和56年・問34
宅地建物取引業に関する実務についての記述で,最も不適切なものはどれか。

1 土地の取引に当たっては,その土地に水路,公道などが存する場合があるので,調査を十分に行う必要がある。

2 登記簿に記載されている宅地建物の所有権者は,真実の所有権者と異なる場合があるので,真実の所有権者であるかどうかをよく調査する必要がある。

3 宅地建物の取引に伴う税金の種類や額の計算は複雑な場合が多いので,土地家屋調査士に相談するようすすめるのがよい。

4 宅地建物取引業者は,信義を旨とし,誠実にその業を行うことを常に念頭におき,取引に関して後日,紛争が発生しないよう心がけなければならない。

【正解 : 3】

1 売買の目的物である土地に,すでに使われていない公有の水路や公道〔農道など〕があると,そのままでは敷地の一部が使えない (建物の建築に制限がかかる)。通常は,水路や公道の所有者に占用願いなどを申請することになる(占用使用料などを別途納める)が,買主にとっては代金以外に費用がかかるので,公図などで十分注意して調査しなければならない。

3 税務の相談は,税理士に相談するのが適切なので,誤り。

4 宅建業法でも,「宅建業者は,取引の関係者に対し,信義を旨とし,誠実にその業務を行なわなければならない。」(業務処理の原則,宅建業法31条) としている。

●昭和57年・問34
宅地建物取引業に関する実務についての次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

1 宅地建物取引業者は,宅地建物の売却の依頼を受けたときは,売主が真実の権利者であるかどうかをよく調査するべきである。

2 宅地建物取引業者は,顧客が物件の広告だけを見て,すぐに売買契約を締結したい旨申し出た場合には,顧客が物件を見ていなくても直ちに売買契約を締結すべきである。

3 宅地建物取引業者は,自ら売主となる宅地建物の売買契約を締結した場合には,売買契約書を2通作成し,売主,買主双方で保管すべきである。

4 宅地建物取引業者は,顧客と売買契約を締結するときは,後日の紛争を避けるため,契約内容はすべて書面化すべきである。

【正解 : 2】

2 顧客が広告だけを見て,物件を見ずに契約するのは,後日紛争が起きる可能性が高い。重要事項説明をしていたとしても,「紛争回避のために,契約締結前に,現地を実際に見ておいたほうがよい」と,顧客に進言するべきである。

●昭和58年・問34
宅地建物取引業者Aの次の行為のうち,宅地建物取引業者の実務として最も不適切なものはどれか。

1 は,宅地を売買するに当たって当該宅地の面積を実際に測定したところ公簿面積よりも大きかったので,実測面積を基準として価額を算出し売買契約を締結した。

2 は,売却の媒介を依頼された建物の柱の一部に白アリが発生していたので,その旨売主に指摘した。売主は,秘密にしておくようにに依頼したが,はこれを断り,その事実を購入希望者に対して告げた。

3 は,宅地を自ら売主として1,000万円の価額で販売していた。の案内所を訪れたは,当該宅地が気に入ったが,たまたま10万円しか持ち合わせていなかったので売買契約の締結はためらっていた。これに対し,が契約上の手付金は200万円とするが,そのうち10万円だけを受領し,残額の190万円は翌日でもかまわないと告げたところ,も売買契約を締結することに応じた。

4 は建売住宅を自ら売主として2,000万円で売却するとの売買契約を買主との間で締結した。銀行の住宅ローンをあっせんしたが,銀行の住宅ローンは,の年収に比し金額が過大であるとの理由で認められなかった。売買契約には,銀行の住宅ローンが認められないときは,又はは売買契約を解除することができるとの条項があったが,は,に対し更に他の金融機関のあっせんを希望した。はこれに応じず,既に受領していた手付金を返還して売買契約を解除した。

【正解 : 3】

1 公簿面積 (登記簿上の面積) は実測面積と異なることが多い。江戸時代から売買されたことがないような土地の場合は特にそのブレが大きく,東京都心部では,面積による差額は数億円規模にもなる。(測量費用などをケチることなく) 実側面積で売買契約を締結するべきである。

2 シロアリ発生は購入するかどうかを決定する重要な事項である。たとえ,売主に口止めされていても,買主になろうとする者に説明しない場合は,事実の不告知禁止の規定 (宅建業法47条1号) に違反する。

 手付金を分割受領することは,手付けについて貸付その他の信用の供与の禁止の規定 (宅建業法47条3号) に違反する。

4 他の金融機関からのローンを顧客が希望したときに,売主が契約条項に則って解除することが不適切とはいえない。(解除するときは,原状回復することが当事者の義務なので,手付金を返却する。)

●昭和59年・問33
宅地建物取引業者Aは,自ら売主となって買主Bとの間で価格3,000万円の建売住宅の売買契約を結ぶこととなったが,その際,Bは,自分が所有するマンションを売却し,その代金を当該建売住宅の購入資金にあてるため,Aにその媒介を依頼することとなった。この場合,Aの業務の処理として適切と思われるものは,次の記述のうちどれか。

1 が建売住宅を買えるかどうかは,のマンションの売却価額いかんによるところが大きいので,は当該マンションについて価格査定を行わずに,建売住宅の価格の80%である2,400万円で売却することとし,その広告を行った。

2 建売住宅の売買契約とマンションの売買の媒介契約とは,別々の契約であるので,媒介契約の期間中にのマンションが売れなかった場合の措置については,建売住宅の売買契約書に記載しなかった。

3 のマンションの価格査定をしたところ,2,500万円であったが,当該マンションの売却に係る専任媒介契約において,売買契約成立のための積極的な努力をし買主を探索してもなお買主が発見できないときは,は,の申出があれば,当該マンションをから2,450万円で買いとる旨の特約をした。

4 は,のマンションの売却について,国土交通省の定めた標準媒介契約約款による専任媒介契約書により媒介の依頼を受けたが,当該マンションは立地条件もよく買主が容易に見つかることが予想されたので,報酬を買主からも受けることを目的として,売却に関する情報を他の宅地建物取引業者に知らせないこととした。

【正解 : 3】

1 合理的な価格査定を行わずに,媒介契約を締結したり,媒介物件の広告をすることは,不適切である。

2 マンションが売れなければ,建売住宅の購入資金の出場所がない。マンションが売れなければ,Bとしては売買代金を支払えないのであるから,後日の紛争防止のために,マンションが売れなかった場合の措置を記載するべきである。

3 媒介契約を締結して,その物件が売れなかった場合に,価格査定の評価額よりも,若干,安い価格で宅建業者が買い取る旨の特約をしても,一概に,売主に不利とは言えない。(ただし,合理的な価格査定額よりも大幅に安い価格で宅建業者が買い取る旨の特約をした場合は,不適切である。)

4 宅建業者は,専任媒介契約を締結した場合は,指定流通機構に登録するなど,契約の成立に向けて積極的に努力する義務を負う (標準専任媒介契約約款7条2号)。他の宅建業者に知らせないということは契約成立のチャンスを失いかねないので,積極的に努力しているとはいえない。

●昭和60年・問34
宅地建物取引業者の従事者が戸建住宅の販売に際して行った次の行為のうち,最も不適切なものはどれか。

1 客の自宅を訪れ,当該戸建住宅についてパンフレット等を示し説明し,購入を促した。

2 客が手附金を持ち合わせていなかったので,とりあえず売買契約書に記名押印してもらい,後日,事務所において手附金を受け取ることにした。

3 当該戸建住宅は,3階建以上の建物は建てられない旨の建築協定が締結されている区域内にあったので,宅地建物取引主任者の資格はなかったが,その旨説明した。

4 当該戸建住宅は,当該従事者が従事している宅地建物取引業者の所有するものではなかったが,これを取得する契約を締結していたので,当該宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約であると説明した。

【正解 : 2】

1 迷惑行為となるものでなければ(深夜・早朝に訪問するなど),顧客の自宅を訪問して,(威迫行為等をしないという限定はつくが) 購入を促すのは不適切とはいえない。

2 手付金を後で受け取ることにして売買契約を締結することは,手付けについて貸付その他の信用の供与の禁止の規定 (宅建業法47条3号) に違反する。

3 35条の重要事項説明としてでなければ,取引主任者以外の者が,物件にかかる法令上の制限の説明をしても特に問題はない。

4 現在は他人物であっても,その所有者から取得する契約 (予約を含む) を締結していれば,その宅建業者は自ら売主として売買契約を締結できるので(宅建業法33条の2第1号),自ら売主であると表示しても不適切とはいえない。

●昭和62年・問33
宅地建物取引業者Aは,BよりB本人所有の宅地の売却の依頼を,また,Cより宅地の購入の依頼を受けた。この場合,Aの業務処理に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

1 は,と宅地の売却に関する専任媒介契約を締結したので,早速当該宅地に関する情報を流通機構に登録した。

2 が売り急いでいたため,は,登記済証で当該宅地の所有名義人を確認したうえで,にこの物件を紹介し,BC間の売買契約を成立させた。

3 は,所有の宅地の売却に関する媒介契約の締結に当たり,に対して周辺の宅地に比べてかなり高額の売却希望価格を申し入れた。は,これでは高すぎて売れないと思い,周辺の宅地並みの売り出し価格を設定したが,に対し価格の査定根拠について特段の説明をしなかった。

4 は,が手持金が少ないことから,契約の締結をためらっていたので,手附金300万円のうち5万円の支払いをすれば残額はあとでよいと告げて,BC間の契約を締結させた。

【正解 : 1】

1 専任媒介契約,専属専任媒介契約では,指定流通機構への登録は義務付けられている(宅建業法34条の2第5項)。一般媒介契約では,指定流通機構への登録は義務付けられてはいないが,登録することは可能である(一般媒介契約でも,媒介契約書面に,指定流通機構への登録をするかどうか記載しなければならない)。

2 登記名義人が真の所有者とは限らない〔相続の登記をしていない,売買があっても移転登記がされていないなど〕ので,登記済証を確認するだけでなく,現地調査や固定資産税の納税状況,家族などに事情を聴くなど,真の所有者を確定する作業をしなければならない。

3 宅建業者が売買価額について意見を述べるときは,その根拠を明示してしなければならないので(宅建業法34の2第2項) ,周辺の宅地並みというだけで価格設定するのは不適切である。

4 手付金を分割受領することは,手付けについて貸付その他の信用の供与の禁止の規定 (宅建業法47条3号) に違反する。

●意見の根拠について (宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,国土交通省)
 意見の根拠としては、価格査定マニュアル(財団法人不動産流通近代化センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものであることとする

 なお、その他次の点にも留意することとする。

(1) 依頼者に示すべき根拠は、宅地建物取引業者の意見を説明するものであるので、必ずしも依頼者の納得を得ることは要さないが、合理的なものでなければならないこと

(2) 根拠の明示は、口頭でも書面を用いてもよいが、書面を用いるときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書でないことを明記するとともに、みだりに他の目的に利用することのないよう依頼者に要請すること。

(3) 根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。


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