過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成元年・問14


 ガイド   持分と床面積・先取特権・建物の設置又は保存の瑕疵・建替え決議

建物の区分所有等に関する法律(以下この問において「区分所有法」という。)に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(宅建・平成元年・問14)

1.「共用部分の持分の割合は,規約で別段の定めをしない限り,その有する専有部分の床面積の割合により,かつ,各専有部分の床面積は,壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。」

2.「区分所有者は,共用部分について他の区分所有者に対して債権を有する場合は,その債権について,債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。」

3.「建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは,その瑕疵は,共用部分の設置又は保存にあるものと推定される。」

4.「区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数により行うことができる。」

【正解】

×

1.「共用部分の持分の割合は,規約で別段の定めをしない限り,その有する専有部分の床面積の割合により,かつ,各専有部分の床面積は,壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。」

【正解:×

◆共用部分の持分割合−内側線で囲まれた部分の水平投影面積

 本肢では,「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。」となっているので×です。

 各区分所有者の共用部分の持分は,原則として,その有する専有部分の床面積〔壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による〕の割合によることになっています。(14条1項・3項)

 ただし,持分の算定方法〔床面積以外のもの (専有部分の価格の割合等)を基準とする,均等にする等〕や床面積の測定方法〔壁心計算等〕については,規約で別段の定めをすることができます。(14条4項)

2.「区分所有者は,共用部分について他の区分所有者に対して債権を有する場合は,その債権について,債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。」

【正解:

◆先取特権

 区分所有法では,区分所有建物の維持・管理のために支出された性質の債権については,債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を認めています。

 被担保債権となるものは下記の三つに分けられます。

区分所有関係での「先取特権の被担保債権」となるもの (7条)

 ・共用部分,敷地,共用部分以外の附属施設について有する債権
  (区分所有者が立替えた場合)

 ・規約・集会の決議に基づく債権 (区分所有者の団体が有する債権)

 ・管理者・管理組合法人の業務執行により有する債権

3.「建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは,その瑕疵は,共用部分の設置又は保存にあるものと推定される。」

【正解:

◆建物の設置・保存の瑕疵

 区分所有法には,民法717条の「土地工作物の設置・保存に瑕疵があったときの責任」の特則とも言える「建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定」の規定があります。(9条)

 区分所有建物の一部が損壊して他人に怪我を負わせたり,損害を与えたときに,特定の専有部分の設置・保存に瑕疵があったのか,共用部分の設置・保存に瑕疵があったのかで,損害賠償義務等を負担するのが分かれるわけですが,瑕疵のあったのが特定の専有部分なのか共用部分なのか判断が難しい場合があります。

 そこで,区分所有法は,このように瑕疵のあった場所の特定が難しいときに,『共用部分の設置又は保存にあるものと推定される』としました。

   専有部分の瑕疵  共用部分の設置・保存の瑕疵
 損害賠償 

 責任主体

 (1次的) 
 その専有部分の占有者,
 占有者がいないときは,
 その専有部分の区分所有者

 (2次的) 
 占有者が損害の発生を防止する
 のに必要な注意をしていたときは
 その専有部分の区分所有者(貸主)

 区分所有者全員

 −不真正連帯債務−

  (占有者は,責任を負わない。)

 基づく法律   民法717条  区分所有法9条

※もともと分譲業者が欠陥のある区分所有建物を販売していた場合や,修理・工事等を請け負った請負業者に過失等があった場合は,それらの負担割合の範囲で求償することができます。

4.「区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数により行うことができる。」

【正解:

◆建替え決議

 区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数により行うことができます。このほかに区分所有法第62条第1項の建替えの要件としては,従前の敷地と新たに建築する建物の敷地が一部でも重なっていなければいけないというものがあります。

区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,平成14年法では,次のような手順を踏むことになりました。

建替え決議までの流れ

 建替え決議を会議の目的とする集会の招集は,集会の会日より少なくとも2ヵ月前に発する。〔この期間は,規約で伸長することができる。縮めることはできない。〕(62条4項)

   

 建替え決議を会議の目的とする集会を招集した者は,当該会日より少なくとも1月前までに,当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対して説明を行うための説明会を開催しなければならない。(62条5項)〔説明会開催の通知は,会日より少なくとも一週間前に発する。この期間は伸長することができる。縮めることはできない。〕(62条6項)

   

 建替え決議を会議の目的とした集会(62条1項)

●建替え決議
第62条第1項に規定する建替え決議・・・区分所有建物の建替え決議
第69条第1項に規定する建替え決議・・・団地内の建物の建替え決議
第69条第6項,第7項に規定する建替え決議・・・団地内の二以上の建物の建替え決議
第70条第1項に規定する建替え決議・・・団地内の建物全部の一括建替え決議
建替えでの法改正の整理(4) 使用目的の同一要件の撤廃
 改正前は,建替え決議により建物を建築する場合,「既存の建物と主たる使用目的を同一とする建物」でなければ建築することができませんでした。

 法改正により,この要件が撤廃されたため,新たに建築する建物が建替え前の建物の使用目的が異なる場合でも,それまでの敷地と少しでも重なっているのであれば,可能になりました。〔例・住宅のみのマンション→複合マンション〕


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