過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成2年・問14


 ガイド   管理組合法人の監事・公正証書による規約・占有者の義務と権利・
 共用部分の変更

建物の区分所有等に関する法律(以下この問において「区分所有法」という。)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(宅建・平成2年・問14)

1.「区分所有法第3条に規定する団体〔管理組合〕は,区分所有者が2人以上であるとき,所定の手続きを経て法人となることができるが,その際監事を置かなければならない。」

2.「規約は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議でのみ設定することができ,最初に建物の専有部分の全部を所有する分譲業者は,規約を設定することはできない。」

3.「区分所有法は,建物の区分所有者相互間の関係について規定しており,区分所有者から専有部分を賃借している者等の占有者の権利及び義務については,規定していない。」

4.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決められるが,この区分所有者の定数は,規約の定めによっても減じることはできない。」

【正解】

× × ×

1.「区分所有法第3条に規定する団体〔管理組合〕は,区分所有者が2人以上であるとき,所定の手続きを経て法人となることができるが,その際監事を置かなければならない。」

【正解:

◆管理組合法人の監事

 管理組合法人には,「法人を代表し,かつ,法人の執行機関である」理事と「その財産の状況や理事の職務執行の状況を監視する監督機関である」監事を置かなければいけません。(49条1項,50条1項)

 理事や監事になれる者は区分所有法では特に定めはありませんが,「区分所有者でなくてもよいが,法人はなることができない」と考えられています。(新しいマンション法・p.261)

 ただし,監事の場合は,理事を監督する立場にあることから,理事や管理組合法人の使用人が兼務することはできません。(50条2項)

監事の職務

 ・管理組合法人の財産の状況の監査

 ・理事の職務執行の状況を監査

 ・財産の状況又は業務の執行について不正の事実があることを発見したときは集会で報告する。

 ・報告するため必要があるときは集会を招集する。(以上は,50条2項,民法59条等)

 ・管理組合法人と理事との利益が相反する事項については監事が管理組合法人を代表する。(51条)

類題 「管理組合法人は,理事を置かなければいけないが,監事は必ずしも置く必要はない。」(管理業務主任者・平成13年・問33)

【正解:×

●関連問題
「管理組合法人と理事との利益が相反する事項については監事が管理組合法人を代表する。」(管理業務主任者・平成15年・問35)
【正解:

2.「規約は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議でのみ設定することができ,最初に建物の専有部分の全部を所有する分譲業者は,規約を設定することはできない。」

【正解:×

◆公正証書による規約

 規約は本来,区分所有者の意思に基づいて集会の決議で設定されるべきものですが,重要なものに限っては,分譲業者が規約で定めておく必要があります。

 規約共用部分や規約敷地の定め,敷地利用権の割合,分離処分ができるか等の定めをあらかじめ決めておけば,後日の紛争を回避することができ,分譲時点で買受人の共有持分が確定しているので,買受人も安心です。

 ただし,分譲業者が単独で設定できるといっても,その内容を客観的に明らかにしておく必要があり,そのために区分所有法では,公正証書で定めるものとしています。

 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は,単独で,公正証書によって,以下のものに限って単独で定めることができます。(32条)

規約共用部分に関する定め → 本肢はこれにあたる。

規約敷地の定め

・専有部分と敷地利用権の分離処分を可能にする定め

敷地利用権の割合に関する定め

 ただし,これらの事項を第三者に対抗するためにはその旨の登記が必要です。

3.「区分所有法は,建物の区分所有者相互間の関係について規定しており,区分所有者から専有部分を賃借している者等の占有者の権利及び義務については,規定していない。」

【正解:×

◆占有者の権利と義務

 区分所有法では,区分所有者だけではなく,占有者の義務と権利についても以下のように規定してあります。

占有者の義務

 区分所有者以外で専有部分を占有している者(賃借人・使用借人等)は,区分所有者の団体の構成員ではありませんが,建物を占有して使用する以上は,建物等の使用方法について区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負います。(46条2項)

占有者の権利

 ・集会での意見陳述権〔議題に利害関係があるとき〕 (44条1項)

 ・集会招集の掲示〔意見陳述権の確保〕 (44条2項)

 ・弁明の機会〔占有者に対する引渡し請求〕 (60条3項)

 ・規約の閲覧 (33条2項)

4.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決められるが,この区分所有者の定数は,規約の定めによっても減じることはできない。」

【正解:×

◆共用部分の変更

 共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,区分所有者数及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議がなければ,することができません。

 ただし,区分所有者の定数は,規約でその過半数まで減ずることができます。(17条)

    区分所有者数  議決権
 区分所有法の規定  4分の3以上  4分の3以上
 規約  過半数まで

 減ずることができる。

 4分の3以上

共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,特定の専有部分の使用に『特別の影響』を与える場合は,その専有部分の所有者の承諾を得なければいけません。したがって,特別決議があっても『特別の影響』を受ける専有部分の所有者の承諾がなければ共用部分の変更をすることはできません。


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