過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成3年・問14
ガイド | 共同利益に反する行為〔行為停止の請求・競売請求・引渡しの請求・ 使用禁止の請求〕 |
区分所有者の共同の利益に反する行為をした者に対する措置に関する次の記述のうち,建物の区分所有等に関する法律(以下この問において「区分所有法」という。)の規定によれば,正しいものはどれか。(宅建・平成3年・問14) |
1.「区分所有者が区分所有法第6条第1項に規定する共同の利益に反する行為をした場合,管理組合法人は,同法第57条の当該行為の停止等を請求する訴訟及び第58条の使用禁止を請求する訴訟を提起できるが,当該区分所有者の区分所有権の競売を請求する訴訟は提起できない。」 |
2.「占有者が区分所有法第6条第1項に規定する共同の利益に反する行為をした場合,管理組合法人は,当該占有者の専有部分の引渡しを請求する訴訟を提起することはできない。」 |
3.「区分所有法第57条の行為の停止等を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によらなければ,提起できない。」 |
4.「区分所有法第58条の使用禁止を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によらなければ,提起できない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
●共同利益に反する行為への裁判上の行使とその要件
行為の停止・ 行為の結果の除去・ 行為の予防措置等の請求 |
集会で普通決議
(区分所有者及び |
個々の各区分所有者も, 特段の事情があるときは, 差止め請求することができる。 |
専有部分の使用禁止請求 |
集会で特別決議
(区分所有者及び |
各区分所有者は 単独では 訴訟主体にはなれない。 |
区分所有権・敷地利用権 の競売請求 |
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賃貸借契約解除・ 占有者に対する引渡し請求 |
●盲点 共同利益に反する行為への請求裁判での訴訟主体 (訴訟追行)
・当該違反者を除く他の区分所有者全員
〔必ず全員で訴訟を提起しなければならないとすると著しく不便なため,区分所有法では,集会の決議により,他の区分所有者全員のために,訴訟追行権を付与された『管理者』または『集会において指定された区分所有者』が訴訟を提起することができるとした。〕(57条3項・58条4項・59条2項・60条2項) ・管理組合法人 |
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⇒ 義務違反者への訴訟の場合は,請求訴訟提起の決議に加えて,57条3項等により,管理者が訴訟を提起するには,それについての集会の決議を必要とするので注意。
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1.「区分所有者が区分所有法第6条第1項に規定する共同の利益に反する行為をした場合,管理組合法人は,同法第57条の当該行為の停止等を請求する訴訟及び第58条の使用禁止を請求する訴訟を提起できるが,当該区分所有者の区分所有権の競売を請求する訴訟は提起できない。」 |
【正解:×】 ◆義務違反者への訴訟 管理組合法人は,行為停止等の請求〔57条〕,使用禁止の請求〔58条〕,競売請求〔59条〕,占有者への賃貸借等の契約解除・引渡し請求〔60条〕の訴訟のいずれも裁判所に提起することができます。〔法人ではない管理組合の場合,請求主体は義務違反者を除く区分所有者全員。(他の区分所有者全員のために,集会の決議により,訴訟追行権を付与された『管理者』または『集会において指定された区分所有者』が訴訟を提起します。)(57条3項・58条4項・59条2項・60条2項)〕 ▼区分所有者・占有者が共同の利益に反する行為をした場合は,それらの要件を満たしている限り,行為停止等の請求をすることなく,直ちに使用禁止の請求〔58条〕,競売請求〔59条〕,占有者への賃貸借等の契約解除・引渡し請求〔60条〕の訴訟をすることができる,と考えられます。ただし,行為停止等の請求訴訟でその目的を達成できるときには,58条〜60条の請求訴訟ができないのは言うまでもありません。(新しいマンション法p.307,大阪高裁の裁判例・平成14.5.16など。) ●競売請求について ▼区分所有法第59条の競売を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の特別決議によります。 ▼競売請求とは,「行為停止等の請求」や「使用禁止の請求」などの他の方法では共同生活の維持を図ることができない場合に認められます。〔使用禁止請求が一時的な排除を求めるものであるのに対して,競売請求は永久に排除することを求めるものです。〕 ▼判決後に競売の申立てによって行われる競売では,「義務違反者本人」や「その者の計算において買い受けようとする者」は買受けの申し出をすることができません。〔59条4項〕 ▼競売を認める判決が確定した日から6ヵ月を経過したときは,競売を申し立てることはできなくなります。〔59条3項〕判決が確定したのに何もしないというのでは,当該区分所有者の地位を長期間不安定な状態にしておくことになり不相当と考えられるからです。 |
2.「占有者が区分所有法第6条第1項に規定する共同の利益に反する行為をした場合,管理組合法人は,当該占有者の専有部分の引渡しを請求する訴訟を提起することはできない。」 |
【正解:×】 ◆契約解除及び引渡しの請求 占有者が共同利益に反する行為をしたときは,当該専有部分の区分所有者には賃貸借等の契約解除の請求,かつ,占有者に対して引渡し請求をすることができます。〔占有者が無権原のときは,占有者に引き渡し請求をすることになります。〕〔60条〕 この区分所有法第60条の使用禁止を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の特別決議によります。 ▼引渡しの請求とは,占有者に対する行為停止等の請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難な場合に認められます。この請求が認められると,裁判所は,占有者が使用・収益する契約の解除を宣言し,かつ,当該専有部分を原告に引き渡すことを命じます。(その引渡しの強制執行の後で遅滞なく,原告は当該専有部分を,その区分所有者に引き渡すことになります。) |
3.「区分所有法第57条の行為の停止等を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によらなければ,提起できない。」 |
【正解:×】 ◆行為停止等の請求 区分所有法第57条の行為の停止等を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各過半数による集会の普通決議によります。(第57条2項) |
●行為停止等の請求の根底事項 |
区分所有者が,建物の保存に有害な行為(耐震外壁に窓を取り付ける など)その他、建物の使用に関し,共同の利益に反する行為をしたとき,他の区分所有者の全員又は管理組合法人は,過半数による集会の決議に基づくことなく,停止請求等をすることができます(第57条1項)。 ただし,上記の事項に関して訴訟を提起するためは,集会の決議によらなければなりません(〃2項)。(区分所有者および議決権の各過半数) ≪停止請求等≫ 条文では,「その行為を停止し,その行為の結果を除去し,又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求する」となっています。 |
4.「区分所有法第58条の使用禁止を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によらなければ,提起できない。」 |
【正解:○】 ◆使用禁止の請求 区分所有法第58条の使用禁止を請求する訴訟は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の特別決議によります。 ▼使用禁止の請求とは,行為停止等の請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難な場合に認められ,当該行為に係る区分所有者又はその占有補助者〔家族等〕は,相当期間の間,専有部分を使用することが禁止されます。ただ,他人に賃貸して使用収益することは許されます。区分所有権は剥奪されません。 |
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