過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成4年・問16


 ガイド   持分割合・敷地利用権の分離処分・管理者の行為に対する責任割合・建替え

建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(宅建・平成4年・問16)

1.「共用部分に関する各共有者の持分は,その有する専有部分の床面積の割合によることとされており,規約で別段の定めをすることはできない。」

2.「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合,区分所有者はその有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないこととされており,規約で別段の定めをすることはできない。」

3.「管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は,規約の定めのいかんにかかわらず,各区分所有者の共用部分の持分割合によることとされている。」

4.「建物の区分所有等に関する法律第62条による建替えは,集会において区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数による決議で行うことができることとされており,規約で別段の定めをすることはできない。」

【正解】

× × ×

1.「共用部分に関する各共有者の持分は,その有する専有部分の床面積の割合によることとされており,規約で別段の定めをすることはできない。」

【正解:×

◆持分割合

 各共有者の共用部分の持分割合は,その有する専有部分の床面積の割合(壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積),つまり内のりによるのが原則(第14条1項)ですが,床面積の測定方法持分の算定方法について規約によって別段の定めをすることができます(〃4項)

持分の算定方法

 例えば,規約で,専有部分の価格割合によるとしたり,1棟の各専有部分の面積の間に大差がなければ,各専有者の共有部分に関する持分は,簡便化の要請から,その面積によらず同一とすることもできる,ということです。

床面積の測定方法 (壁心計算など)

 例えば,規約で,内のり計算ではなく,「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(壁心計算)による」等とすることです。

2.「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合,区分所有者はその有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないこととされており,規約で別段の定めをすることはできない。」

【正解:×

◆敷地利用権の分離処分は原則として禁止

 専有部分と敷地利用権を分離して処分することは,法律的に錯雑な状態をもたらすため,原則として,できません(第22条1項本文)

 しかし,いわゆる棟割長屋等の小規模な区分所有建物(平屋建の2〜3戸位),又は他の敷地を利用しないいわゆるタウンハウスなどの場合には,縦割りに分割することも可能であり,また,区分所有者が専有部分と敷地利用権の一体化を望まない場合もあり,法律上において建物と土地は別個の不動産(民法第86条1項)なので,規約によって,別段の定めをすることもできます(第22条1項但書)

●分離処分禁止の例外 〔敷地利用権の分離処分については代表的なケース〕
 敷地利用権  規約で別段の定めがあるとき (22条1項但書)
 共用部分  法律〔区分所有法〕で別段の定めがあるとき (15条2項)

 ・管理所有の場合 (11条2項/27条1項)
 ・規約の設定・変更により持分割合を変更した場合 (14条4項)

3.「管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は,規約の定めのいかんにかかわらず,各区分所有者の共用部分の持分割合によることとされている。」

【正解:×

◆管理者の行為に対する責任割合

 管理者の行為による区分所有者の責任の割合は,その持分割合によるのが原則です(第29条1項本文)。

 しかし,規約によって管理に関する経費につき,負担の割合が定められているときは,当然その割合によります(〃〃但書)。

 区分所有者が,管理者の第三者との間にした行為について責任を負うのは,その職務の範囲内においてであり,以下のものです。

保存行為
規約の定めを実行したとき
集会の決議を実行したとき

 ただし,規約や集会の決議に基づかないで行われたものであっても,民法の表見代理の規定が適用される場合は,区分所有者が責任を負います。

4.「建物の区分所有等に関する法律第62条による建替えは,集会において区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数による決議で行うことができることとされており,規約で別段の定めをすることはできない。」

【正解:

◆建替え決議

 「建替え決議」は,区分所有者及び議決権の各5分の4以上(第62条1項)とされ,この割合は規約によって別段の定めができる旨の規定はなく,したがって,全員の決議を要するとか,4分の3の決議であればよい,などとすることはできません。このほかに区分所有法第62条第1項の建替えの要件としては,従前の敷地と新たに建築する建物の敷地が一部でも重なっていなければいけないというものがあります。

<参考>

・「政令指定災害により建物が全部滅失した場合の再建」では,被災マンション法 (被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法が適用されます。(平成7年3月24日法律第43号)

区分所有法第62条第1項
 集会においては,区分所有者及び議決権の各各5分の4以上の多数で,建物を取り壊し,かつ,当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる。
建替えでの法改正の整理(5) 建替え決議の招集手続
 改正前は,建替え決議の招集の通知でも,通常の集会と同じで,開催日の一週間以上前に発すればよいとされていました。

 しかし,建替え決議という重大なものであるのに,わずか1週間以上前に通知を出せばよいというのでは,熟慮する時間もないため著しく不適当なケースも考えられました。

 法改正によって,次のように改められました。

・建替え決議の招集の通知は2ヵ月以上前に発すること。

・建替えの要否を判断する上で必要な事項を,会議の目的たる事項のほかに,議案の要領として招集の通知で知らせること。

・建替えについての質儀応答や説明をするための説明会を建替え決議開催日の1ヵ月以上前に開催すること。


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