過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成8年・問14
ガイド | 招集の通知・占有者の意見陳述権・特別の影響を及ぼすときの承諾・ 義務違反行為の予防措置請求訴訟 |
建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか(宅建・平成8年・問14) |
1.「建物内に住所を有する区分所有者又は通知を受ける場所を通知しない区分所有者に対する集会の招集の通知は,規約に特別の定めがある場合は,建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。」 |
2.「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は,会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には,集会に出席して意見を述べ,自己の議決権を行使することができる。」 |
3.「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべき場合は,その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」 |
4.「占有者が,建物の保存に有害な行為をするおそれがある場合,管理組合法人は,区分所有者の共同の利益のため,集会の決議により,その行為を予防するため必要な措置を執ることを請求する訴訟を提起することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「建物内に住所を有する区分所有者又は通知を受ける場所を通知しない区分所有者に対する集会の招集の通知は,規約に特別の定めがある場合は,建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。」 |
【正解:○】 ◆招集通知の掲示 規約に特別の定めがある場合は,建物内に住所を有する区分所有者又は通知を受ける場所を通知しない区分所有者に対する集会の招集の通知は,建物内の見やすい場所に掲示してすることができます。(35条4項) 招集の通知を掲示した場合は,その掲示をしたときに到達したものとみなします。(35条4項) ●管理者が招集の通知を出す場所 (35条3項)
●集会招集の通知はいつ出すか? (35条1項) 集会の招集通知は,会日より少なくとも一週間前に,会議の目的たる事項を示して,各区分所有者に発しなければなりません。(35条1項) この通知は,会議の目的たる事項が以下の決議事項のときは,その議案の要領も通知しなければなりません。(35条5項,69条4項,70条4項)
⇒ 全て特別決議事項になっているものですが,管理組合法人化・解散,義務違反者への請求訴訟〔使用禁止・競売・引渡し〕は議案の要領の通知は必要になっていません。 |
2.「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は,会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には,集会に出席して意見を述べ,自己の議決権を行使することができる。」 |
【正解:×】 ◆占有者の意見陳述権 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は,会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には,集会に出席して意見を述べることはできますが,議決権を行使することはできません。(44条1項) しかし,占有者に意見陳述権が与えられているといっても,利害関係を有する集会が開かれるかどうかを通知されなければ,意見陳述権があるといっても『絵に描いた餅』なので,意見陳述権を確保するために,以下のように集会の開催について掲示することになっています。 占有者が会議の目的たる事項について利害関係を有する場合は,集会を招集する者は,召集の通知を発した後,遅滞なく,集会の日時,場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません。(44条2項) ⇒ 肢1の35条の掲示に準じた扱いになっています。 ⇒ ただし,この掲示には「占有者は当該事項について集会に出席して意見を述べることができる」旨の明示までは,区分所有法では義務付けていません。 |
3.「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべき場合は,その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」 |
【正解:○】 ◆共用部分の変更−特別な影響を与える場合の措置 共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,特定の専有部分の使用に『特別の影響』を与える場合は,その専有部分の所有者の承諾を得なければいけません。したがって,特別決議があっても『特別の影響』を受ける専有部分の所有者の承諾がなければ共用部分の変更をすることはできません。(17条)
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4.「占有者が,建物の保存に有害な行為をするおそれがある場合,管理組合法人は,区分所有者の共同の利益のため,集会の決議により,その行為を予防するため必要な措置を執ることを請求する訴訟を提起することができる。」 |
【正解:○】 ◆行為の予防措置等の請求 各区分所有者は,建物の管理又は使用に関して,区分所有者の共同の利益に反することはできないと定めています。(6条1項) このため,区分所有法では,共同利益背反行為をする者又はその恐れがある者〔区分所有者・占有者〕に対して,行為の停止や行為の結果の除去,行為の予防措置等を求める請求の訴えを,義務違反者を除く他の区分所有者全員又は管理組合法人は裁判所にすることができるとしました。(57条1項) この訴訟による行為停止等の請求は,集会で区分所有者及び議決権の過半数の決議によらなければなりません。 法人ではない管理組合の場合は,管理者又は集会で指定された区分所有者が〔管理組合法人では,管理組合法人が〕,集会の決議により,義務違反者を除く他の区分所有者全員のために,訴訟を提起することができます。(57条3項) ⇒ 各区分所有者は,義務違反者を除く他の区分所有者全員のために,訴訟を提起することはできませんが,各区分所有者は,民法上の「専有部分の所有権に基づく物権的請求権」,「共用部分や敷地の持分権に基づく物権的請求権」,「人格権に基づく差止請求権」,「不法行為に基づく差止請求権」を行使することは制限されない,と考えられています。(新しいマンション法・p.286) ●共同利益に反する行為への裁判上の行使とその要件
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