過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成9年・問13


 ガイド   保存行為・小規模滅失での復旧・大規模滅失での復旧・建替え決議

建物の区分所有等に関する法律(以下この問において「区分所有法」という。)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか(宅建・平成9年・問13)

1.「共用部分の保存行為については,各区分所有者は,いかなる場合でも自ら単独で行うことができる。」

2.「建物の価格の1/3に相当する部分が滅失したときは,規約に別段の定め又は集会の決議がない限り,各区分所有者は,自ら単独で滅失した共用部分の復旧を行うことはできない。」

3.「建物の価格の2/3に相当する部分が滅失したときは,集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で,滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。」

4.「区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,規約で別段の定めをすれば,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数により行うことができる。」

【正解】

× × ×

1.「共用部分の保存行為については,各区分所有者は,いかなる場合でも自ら単独で行うことができる。」

【正解:×

◆保存行為

 共用部分の保存行為は,管理者及び各区分所有者は,自ら単独で行うことができ,集会の決議を必要としません(18条1項但書)保存行為は比較的軽度なものか緊急を要する維持行為が想定されているため,特別な利害を有する者の承諾については規定がなく不要とされています。

 ただし,集会の決議を必要とせずに単独で行えるといっても,規約で別段の定めがあるとき〔例えば,保存行為については各区分所有者は管理者を通じて行うことにするなど〕には,それに従います。(18条2項)

 したがって,本肢では「いかなる場合でも自ら単独で行うことができる。」となっているので×になります。

●補充問題
「共用部分の保存行為については,規約で定めれば,特定の区分所有者のみが行うことができる。」(マンション管理士・平成15年・問4)
【正解:】規約で別段の定めがあるときには,それに従います。(18条2項)

2.「建物の価格の1/3に相当する部分が滅失したときは,規約に別段の定め又は集会の決議がない限り,各区分所有者は,自ら単独で滅失した共用部分の復旧を行うことはできない。」

【正解:×

◆小規模滅失の復旧

 建物の価格の1/3に相当する部分が滅失 ⇒ 建物価格の1/2以下に相当する部分が滅失

 建物価格の1/2以下に相当する部分が滅失したときは,各区分所有者は,滅失した共用部分及び自己の専用部分を復旧することができます。ただし,共用部分については,復旧の工事に着手するまでに,集会において,復旧の決議,建替えの決議,又は団地内建物の一括建替えの決議があった場合は,各区分所有者が単独で,復旧することはできません。(61条1項)

 本肢では,「規約に別段の定め又は集会の決議がない限り,各区分所有者は,自ら単独で滅失した共用部分の復旧を行うことはできない。」となっているので×になります。

3.「建物の価格の2/3に相当する部分が滅失したときは,集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で,滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。」

【正解:

◆大規模滅失の復旧

 建物の価格の2/3に相当する部分が滅失 ⇒ 建物価格の1/2を超える部分が滅失

 建物価格の2分の1を超える部分が滅失したときは,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の「特別決議」となり,この定数は規約によって,別段の定めをすることはできません(第61条5項)

4.「区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,規約で別段の定めをすれば,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数により行うことができる。」

【正解:×

◆建替え決議

 区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数により行うことができます。この5分の4以上規約で別段の定めをすることができません。このほかに区分所有法第62条第1項の建替えの要件としては,従前の敷地と新たに建築する建物の敷地が一部でも重なっていなければいけないというものがあります。

区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,平成14年法では,次のような手順を踏むことになりました。

建替え決議までの流れ

 建替え決議を会議の目的とする集会の招集は,集会の会日より少なくとも2ヵ月前に発する。〔この期間は,規約で伸長することができる。縮めることはできない。〕(62条4項)

   

 建替え決議を会議の目的とする集会を招集した者は,当該会日より少なくとも1月前までに,当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対して説明を行うための説明会を開催しなければならない。(62条5項)〔説明会開催の通知は,会日より少なくとも一週間前に発する。この期間は伸長することができる。縮めることはできない。〕(62条6項)

   

 建替え決議を会議の目的とした集会(62条1項)

区分所有法第62条第1項
 集会においては,区分所有者及び議決権の各各5分の4以上の多数で,建物を取り壊し,かつ,当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる。
区分所有法の建替えの規定の意義
 区分所有法に規定する建替え決議後の手続は,言うなければ,建物の取り壊し前に,売渡し請求の行使によって『建替え不賛成者・反対者のいる区分所有関係』から『建替え決議の内容により建替えの合意をした者のみの区分所有関係』を創出する狙いがあります。

 表現が妥当かどうかは疑問ですが,『建替えに反対する者を区分所有関係から一定の手続によって排除していくシステム』が区分所有法に規定する建替え決議後の手続です。

 区分所有法に規定する区分所有関係が『多数決原理で動くシステムであって私権が一定のものについては当然に制限される』と言っても,建替えに反対する区分所有者から区分所有権・敷地利用権を問答無用で取り上げるということはできません。

 決議のときは反対であってもその後翻意することもありますし,区分所有から離脱する者への配慮も必要です。区分所有法では,建替えに賛成する者と反対する者の衡平が維持されるように配慮した手続を区分所有者に要求しています。 


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