過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成18年・問16 

集会の招集通知,通知した事項以外の決議,議事録の署名・押印,
規約・議事録の保管場所の掲示,


 ガイド   集会の招集通知,通知した事項以外の決議,議事録の署名・押印,規約・議事録の保管場所の掲示,

建物の区分所有法等に関する法律 (以下この問において「法」という。) に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(宅建・平成18年・問16)

1.「集会の招集の通知は、会日より少なくとも2週間前に発しなければならないが、この期間は規約で伸縮することができる。」

2.「集会においては、法で集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除き、規約で別段の定めをすれば、あらかじめ通知した事項以外についても決議することができる。」

3.「集会の議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名しなければならないが、押印は要しない。」

4.「規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないが、集会の議事録の保管場所については掲示を要しない。」

<コメント>  
 すべてが初出題

 今回の出題内容は大半の受験者にとって想定外だったと思われます。正答率も5割を切っており,苦戦したことが窺えます。

 内容的には基本的な出題ですが,これまでの過去問ではあまり出題されてこなかったものを意図的に選んで出題したようにも見えます。

●出題論点●
 

【正解】

× × ×

1.「集会の招集の通知は、会日より少なくとも2週間前に発しなければならないが、この期間は規約で伸縮することができる。」

【正解:×

◆集会の招集通知

 × 2週間前 ⇒  1週間前

 集会の招集の通知は,会日より少なくとも一週間前に,会議の目的たる事項<議題>を示して,区分所有者全員に発しなければなりません。

 事前に通知するのは,各区分所有者が,会議の目的たる事項について,集会の会日までに十分に検討できるようにするためです。

 招集通知を発する期間は,規約で伸縮することができます(区分所有法35条1項)

事前に通知されなかった区分所有者は,集会があることさえ知らされずに,決議に従わなければならないことになります。決議内容によっては不利益を被ることもあるので,区分所有者全員に事前の通知がされなければなりません。

●議案の要領も通知しなければならない場合
 区分所有法で集会の決議につき特別の定数が定められている事項については,会議の目的たる事項<議題>だけでなく,議案の要領も,事前に通知しなければなりません(区分所有法37条5項)

2.「集会においては、法で集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除き、規約で別段の定めをすれば、あらかじめ通知した事項以外についても決議することができる。」

【正解:

◆通知した事項以外の決議

 集会では,原則として,事前に通知した会議の目的たる事項<議題>についてのみ決議をすることができます。

 しかし,法で集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除き,規約で別段の定めをすれば,あらかじめ通知した事項以外についても決議することができます(区分所有法37条1項)

*盲点のため,要注意

 区分所有法では特別決議が必要とされていないが,規約では特別決議が必要と定めているものについては,<規約で禁じていなければ>,事前に通知されていなくても,決議できることに注意してください。

●区分所有法で集会の決議につき特別の定数が定められている事項

  ⇒ 議案の要領を事前に通知する義務があり,事前に議題を通知していなければ決議できないもの

 ・共用部分の変更〔形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕(17条1項)

 ・区分所有者の共有に属する敷地または附属施設の変更(21条)

 ・規約の設定・変更・廃止(31条1項)

 ・管理組合法人の成立(47条1項),解散(55条1項3号,2項)

 ・専有部分の使用禁止請求(58条1項,2項),競売請求(59条1項,2項),占有者に対する引渡し請求(60条1項,2項)

 ・大規模の滅失での復旧(61条5項)

 ・建替え決議(62条1項),団地内の建物の建替え承認(69条1項,7項),団地内の建物の一括建替え決議(69条1項,7項)

 ・団地の規約を定めることへの各建物の区分所有者の承認(68条1項)

3.「集会の議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名しなければならないが、押印は要しない。」

【正解:×

◆議事録の署名押印

 × 署名しなければならないが、押印は要しない。 ⇒  署名・押印とも必要。

 集会の議事については,議長は,書面または電磁的記録により,議事録を作成し,議事録には,議事の経過の要領及びその結果を記載または記録しなければなりません(区分所有法42条1項,2項)

 議事録が書面で作成されているときは,議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印することが義務付けられています(区分所有法42条3項)

4.「規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないが、集会の議事録の保管場所については掲示を要しない。」

【正解:×

◆規約・議事録の保管場所の掲示

 規約の保管場所・集会の議事録の保管場所とも,建物内の見やすい場所に掲示しなければならない(区分所有法33条3項,42条5項)ので,本肢は誤りです。

●参考問題
1.「規約については,区分所有者全員に,その写しを交付しているので,保管場所についての掲示はしていない。これは,区分所有法の規定に違反することはない。」
【正解:×

 規約は,区分所有者だけでなく,それ以外の利害関係人〔中古物件となった専有部分を購入しようと考えている者,専有部分を賃借しようとしている者など〕にも閲覧させる義務があるので,その保管場所を掲示しなければ,規約の閲覧を請求することを事実上拒んでいることになる(区分所有法33条2項)

 区分所有者全員に,その写しを交付していても,その保管場所については,建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

2.「区分所有者全員が区分所有法に規定する集会に出席しており,既に周知のことであるから,その議事録の保管場所については特に掲示はしなかった。この場合,区分所有法の規定に違反することはない。」
【正解:×

 集会の議事録についても,区分所有者だけでなく,それ以外の利害関係人に対しても閲覧を拒むことはできない(区分所有法47条5項)

 このため,議事録の保管場所についても,建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。


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