過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和53年・問11
ガイド | 区分所有権の目的となる要件・法定共用部分・共用部分たる旨の登記・ 管理所有 |
建物の区分所有等に関する法律についての次の記述のうち,誤っているものはどれか。(宅建・昭和53年・問11) |
1.「区分所有権の目的となるためには,一棟の建物の中で構造上区分された部分であること,独立して住居,店舗,事務所等の用途に供することができること,という二つの要件を満たすことが必要である。」 |
2.「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室などの,構造上区分所有者の全員又は一部の共用に供される部分,および専有部分に属しない建物の付属物(ガス,水道の配管,電気の配線など)は,法律で共用部分とされ,登記する必要がない。」 |
3.「専有部分となるべき部分であっても規約で共用部分とすることができ,この場合,その旨の登記をしなければ,第三者に対抗することができない。」 |
4.「区分所有者全員の規約で,管理人室を共用部分の一部とすると共に,共用部分の全体を管理者の管理所有とすることに定めた場合,管理人室は管理者の名義で登記されることになる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
1.「区分所有権の目的となるためには,一棟の建物の中で構造上区分された部分であること,独立して住居,店舗,事務所等の用途に供することができること,という二つの要件を満たすことが必要である。」 |
【正解:○】 ◆区分所有権の目的となる2つの要件 本肢は,区分所有権の目的となる要件 (第1条) を示したものです。 『一棟の建物の中で構造上区分された部分であること』 (構造上の独立性) 『独立して住居,店舗,事務所等の用途に供することができること』 (利用上の独立性) ●区分所有関係の構成
区分所有権とは,専有部分を目的として区分所有法によって創設された物権です。民法の所有権の適用がありますが,その所有権の内容は区分所有法によって規定されています。 この区分所有権には,共用部分に対する共有部分は含まれません。 敷地利用権は,区分所有者が専有部分を所有するための「建物の敷地」に関する権利です。(2条6項) |
●参考問題 |
「区分所有法及び不動産登記法の規定によれば,専有部分を規約により共用部分とすることができ,また,区分所有法上当然に共用部分とされる部分 (法定共用部分という。) を規約により専有部分とすることができる」 (マンション管理士・平成13年・問4・肢1) |
【正解:×】後半部分が×。 |
2.「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室などの,構造上区分所有者の全員又は一部の共用に供される部分,および専有部分に属しない建物の付属物(ガス,水道の配管,電気の配線など)は,法律で共用部分とされ,登記する必要がない。」 |
【正解:○】 ◆法定共用部分は登記なくして対抗できる 構造上区分所有者の全員又は一部の共用に供される部分 (数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室など),および専有部分に属しない建物の付属物(ガス,水道の配管,電気の配線など。但し,本管は法定共用部分だが,枝管は専有部分に該当すると考えられている) は,法定共用部分です。 法定共用部分については,登記なくしてその物権変動を第三者に対抗できるとされています。(11条3項) |
3.「専有部分となるべき部分であっても規約で共用部分とすることができ,この場合,その旨の登記をしなければ,第三者に対抗することができない。」 |
【正解:○】 ◆共用部分たる旨の登記−第三者への対抗要件 規約によって共用部分になることができるのは,専有部分となるべき建物の部分や附属の建物〔附属の建物の全部でも又構造上区分される一部であってもよい〕の2つです。 共用部分になると法律上専有部分と独立して処分することはできなくなり(15条),権利に関する登記もできなくなります。(11条3項) このように強い制限がかかるため,規約により共用部分とした場合には,その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができないとされています。(4条2項) ▼規約共用部分たる旨の登記は第三者への対抗要件とされますが,その登記は強制されているわけではなく,申請期間も特に定められているわけではありません。 ▼規約共用部分の登記は『共用部分たる旨の登記』を表題部に記入する表示の登記であり,『共用部分たる旨の登記』がされると従来の表題部の所有者の表示又は所有権その他の権利に関する登記も抹消されます。(不動産登記法99条の4) |
●参考問題 |
「共用部分たる旨を定めた規約を設定したときは,共用部分の所有者は,1ヵ月以内に共用部分たる旨の登記を申請しなければならない。」 (土地家屋調査士・昭和49年) |
【正解:×】申請期間は特に定められているわけではありません。 |
4.「区分所有者全員の規約で,管理人室を共用部分の一部とすると共に,共用部分の全体を管理者の管理所有とすることに定めた場合,管理人室は管理者の名義で登記されることになる。」 |
【正解:×】 ◆管理所有 管理所有とは,『規約の特別の定めによって管理者 (又は特定の区分所有者) を共用部分の所有者とする制度』です。(11条2項,27条1項)〔管理者は保存行為以外は,規約の定め又は集会の決議に基づいて行わなければいけませんが,これでは緊急の場合に迅速に対処することができません。そこで管理者の判断で管理を円滑に行うことができるようにしたのが“管理所有”です。〕 ⇒ 管理所有の対象となるのは,共用部分〔法定共用部分・規約共用部分〕の全部でも一部でもかまいません。 しかし,管理所有になっていてもあくまでも便宜的なものであり,実質的な所有者は区分所有者全員ですから,管理者には,共用部分を処分する権限〔譲渡や担保権設定〕や変更する権限はなく,管理所有になってもその登記はされません。〔もともと,共用部分については権利の登記をすることはできませんでしたね。〕(11条3項) 本肢では,規約で,管理人室を規約共用部分とし,共用部分の全体を管理者の管理所有とすることに定めています。この管理人室に『(規約)共用部分たる旨の登記』がされれば,権利に関する登記をすることはできないので,管理所有になったからといって所有権移転の登記がされるわけではありません。 ▼ポイント 管理所有の対象にならないもの 敷地や共用部分以外の附属施設は管理所有の対象にならないことに注意。 |
●関連問題 |
「共用部分については,規約に特別の定めをしても,管理者はそれを所有することはできない。」(管理業務主任者・平成15年・問37) |
【正解:×】管理所有とは,『規約の特別の定めによって管理者 (又は特定の区分所有者) を共用部分の所有者とする制度』です。(11条2項,27条1項) |
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