過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和54年・問12
ガイド | 他の専有部分の使用請求・共用部分の持分・管理者の解任・規約の効力 |
建物の区分所有に関する次の記述のうち,誤りはどれか。(宅建・昭和54年・問12) |
1.「区分所有者は,その専有部分を改良するため必要な範囲内において他の区分所有者の専有部分の使用を請求することができる。」 |
2.「各共有者の共用部分の持分は,規約で別段の定めをしない限り,各自平等である。」 |
3.「管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは,各区分所有者は,その解任を裁判所に請求することができる。」 |
4.「規約は,区分所有者の特定承継人に対してもその効力を生ずる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「区分所有者は,その専有部分を改良するため必要な範囲内において他の区分所有者の専有部分の使用を請求することができる。」 |
【正解:○】 ◆他の専有部分の使用請求 区分所有者は,その専有部分又は共用部分を保存し,又は改良するため必要な範囲内において,他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができます。(6条2項前段) この場合,他の区分所有者が損害を受けたときは,その償金を支払わなければいけません。(6条2項後段) ▼民法209条1項・2項の隣地使用権の区分所有法ヴァージョンです。 |
2.「各共有者の共用部分の持分は,規約で別段の定めをしない限り,各自平等である。」 |
【正解:×】 ◆共用部分の持分割合 共用部分の専有部分の床面積によるのが原則であり,それと異なる持分の算定方法によるには規約で別段の定めをすることになります。本肢では,「規約で別段の定めをしない限り,各自平等である。」となっているので×になります。 ▼各共有者の共用部分の持分は,規約で別段の定めをしない限り,原則としてその専有部分の床面積の割合によります。〔面積の測定方法は,規約で別段の定めをしない限り,壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によります。〕(14条2項) したがって,原則として,区分所有者全員の専有部分の床面積が全て同一であれば持分は同じになります。つまり,全員の専有部分の床面積が全て同一でない限り,共用部分の持分が均等になるとは言えません。 しかし,持分の算定方法〔床面積以外のもの (専有部分の価格の割合等) を基準とする,均等にする等〕や床面積の測定方法について〔壁心計算とするなど〕は,規約で別段の定めをすることができるので(14条4項),共用部分の持分を均等にするには規約による別段の定めが必要です。〔規約の設定・変更には区分所有者及び議決権の4分の3以上の集会の決議が必要です。〕 ▼民法上の共有では『各共有者の持分は相均しきものと推定す』(250条)という規定がありますが,区分所有法14条2項での「共用部分の共有」では民法250条の規定を適用しません。 |
3.「管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは,各区分所有者は,その解任を裁判所に請求することができる。」 |
【正解:○】 ◆管理者の解任 1 管理者の選任・解任は,規約にその定めがあるときはそれに従い,規約に定めがないときは集会の普通決議によって行います。(25条1項) ただし,規約で定めた管理者を解任する場合には規約の変更をすることになるので,区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成を必要とします。 2 管理者に不正な行為等その職務を行うに適しない事情があるときは,各区分所有者は,単独でその解任を裁判所に請求することができます。(25条2項)
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4.「規約は,区分所有者の特定承継人に対してもその効力を生ずる。」 |
【正解:○】 ◆規約・集会の決議の効力 規約〔32条の原始規約含む〕や集会の決議〔書面・電磁的方法による合意や決議も含む〕の効力は,包括承継人はもちろん,特定承継人にも及びます。〔占有者には,建物等の使用方法についての規約や集会の決議の効力が及びます。〕(46条1項) 一般に,合意による取り決めは,当事者や包括承継人を拘束するだけで,特定承継人には及びませんが,区分所有法では,特定承継人も拘束される例外的な規定になっています。 売買などで区分所有者が替わった場合に,規約や集会の決議の効力が及ばないとすると,建物の保存や維持管理の面で重大な齟齬をきたすからです。
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