過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和55年・問13


 ガイド   規約で区分所有法と異なる定めをすることができるものとできないものを区別しておく必要が
 あります。
 なお,本問題の原題は “昭和37年法” の条文そのままの出題であったため,平成14年法に
基づいて全般的に改題しました。
 肢1・2・4での『各共有者』という表現には少しドキっとするかもしれませんが,平成14年法の
条文でも出てくる言い方です。
(昭和37年法での言い方を平成14年法でも受け継いでいる部分があります。)

次の記述は,建物の区分所有等に関する法律中の共用部分の共有に関する規定の一部である。これらのうち,区分所有者間の規約でこれと違った内容を定めることができないのはどれか。(宅建・昭和55年・問13)

1.「各共有者の持分は,その有する専有部分の床面積の割合による。」

2.「各共有者は,法定共用部分をその用方に従って使用することができる。」

3.「共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,区分所有者数及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議がなければ,することができない。」

4.「各共有者は,その持分に応じて,共用部分の負担に任じ,共用部分から生ずる利益を収取する。」

【正解】

註 規約で区分所有法と異なる内容を定めることができるものを○としています。

×

1.「各共有者の持分は,その有する専有部分の床面積の割合による。」

【正解:

◆共用部分の持分の割合

 各区分所有者の共用部分の持分は,原則として,その有する専有部分の床面積〔壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による〕の割合によることになっています。(14条1項・3項)

 ただし,持分の算定方法〔床面積以外のもの (専有部分の価格の割合等)を基準とする,均等にする等〕や床面積の測定方法〔壁心計算にするなど〕については,規約で別段の定めをすることができます。(14条4項)

2.「各共有者は,法定共用部分をその用方に従って使用することができる。」

【正解:×

◆法定共用部分の用方を規約で制限することはできない

 区分所有者は,全体共用部分の全部をその用方に従って使用することができます。〔一部共用部分は,それを共有する一部の区分所有者だけが使用することができます。〕

 この共用部分を使用する権利は,剥奪することはできません。

 区分所有者は,共用部分の性質や構造に反する使用は許されず,もし用方に違反した使用をすると区分所有者の共同利益に反する行為となり,他の区分所有者はその者に対して行為の差止め請求や原状回復請求をすることができます。(6条1項,57条1項)

 本肢での法定共用部分の用方は,構造上の使用目的や位置によって当然に定まっており規約によってさらに制限を付加することは原則としてできないものとされています。〔ただし,管理のために必要で,合理的な範囲内ならば,集会の決議で制限を加えることはできます。〕

●用方のまとめ
 法定共用部分  用方は,構造上の使用目的・位置によって当然に定まる
 規約によってその用方を制限することはできない
  ただし,管理のため,合理的な範囲内で集会の決議により
 制限をすることはできる。(18条1項)
 規約共用部分  用方は,規約によって定められる

法定共用部分の用方に違反する例 

 廊下・階段を荷物置き場にする,法定共用部分のバルコニーをサンルームに改造etc。
●補充問題
「各共有者は,共用部分について,共有持分に応じ,その用方に従って使用することができる。」
【正解:×

 「共有持分に応じ,使用することができる。」というのは,×です。

 共有持分に応じて使用できるということは,例えば,「年間を通してエレベーターに乗れる回数は持分による」,「共用部分の照明は持分に応じて使用できる」などというバカげた話になってしまいます。もっともらしく書いてあっても,ダマされないようにしましょう。

民法上の共有の規定では,「各共有者は共有物の全部につきその持分に応じたる使用を為すことを得」〔民法249条〕となっていますが,区分所有法ではこのような規定はありません。

3.「共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,区分所有者数及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議がなければ,することができない。」

【正解:

◆共用部分の変更

 共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,区分所有者数及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議がなければ,することができません。

 ただし,区分所有者の定数は,規約でその過半数まで減ずることができます。(17条)

    区分所有者数  議決権
 区分所有法の規定  4分の3以上  4分の3以上
 規約  過半数まで

 減ずることができる。

 4分の3以上

共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,特定の専有部分の使用に『特別の影響』を与える場合は,その専有部分の所有者の承諾を得なければいけません。したがって,特別決議があっても『特別の影響』を受ける専有部分の所有者の承諾がなければ共用部分の変更をすることはできません。

4.「各共有者は,その持分に応じて,共用部分の負担に任じ,共用部分から生ずる利益を収取する。」

【正解:

◆持分に応じた費用の負担と利益の収取

 共用部分の共有者である区分所有者は,その持分に応じて,費用〔管理費・共役費等〕を負担しなければならず,共用部分から生じた利益の配分を受けることができます。(19条)

 しかし,規約で別段の定めをすれば,持分割合 (専有部分の床面積比) と異なるものを基準にしたり,あるいは共有者が平等に負担・収取することもできます。(19条)

●補充問題
「各共有者は,規約に別段の定めがない限り,各自平等に,共用部分の負担に任じ,共用部分から生ずる利益を収取する。」(マンション管理士・平成13年・問10)
【正解:×

規約で別段の定め

 区分所有法では、「規約で別段の定めをすることができる。」という条文が何度も出てきます。「なぜ、別段の定めが必要なのか」イメージを浮かべることも重要です。ただ、「別段の定めをすることができる」だけ覚えても、問題を解くときには理由づけができないために、ヒッカケ問題にひっかかることになります

 これはコツでも公式でも何でもなく、法律を学ぶ以上、当然のことです

定数について、規約で「別段の定め」ができるものは、(できるものは少ない。)

 ・1/5の「集会の召集」、

 ・3/4の「共用部分の重大な変更」(区分所有者の人数のみ)

共用部分・専有部分・敷地利用権で、規約で「別段の定め」ができないものは、

 ・専有部分と共用部分を分離処分できない (分離処分できるのは区分所有法に定めのあるとき)

共用部分

 共用部分とは、専有部分以外の建物部分をいいますが、「法定共用部分」と「規約共用部分」に分かれます。

 規約共用部分・・・表題部に、その旨の登記をしないと第3者に対抗できない。

            (例 集会室・管理人室・附属の建物の倉庫など)

 法定共用部分・・・登記はされないが、第3者に対抗できる。

            (例建物全体の玄関・階段・廊下・エレベータ、
             配管・配線・機械等の建物の附属物)

●原題
1.「各共有者の持分は,その有する専有部分の床面積の割合による。」
 (昭和37年法の第10条1項)

2.「各共有者は,共用部分をその用方に従って使用することができる。」
 (昭和37年法の第9条)

3.「共用部分の変更は,共有者全員の合意がなければ,することができない。」
 (昭和37年法の第12条1項の本文) ⇒ その後昭和58年法で3/4以上に改正。

4.「各共有者は,その持分に応じて,共用部分の負担に任じ,共用部分から生ずる利益を収取する。」
 (昭和37年法の第14条)


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