過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和56年・問12
ガイド | 区分所有権の目的・敷地利用権・規約共用部分・特定承継人 |
建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(宅建・昭和56年・問12) |
1.「この法律の適用の対象となる建物は,住居としての用途に供される建物又は建物の部分に限定されている。」改 |
2.「区分所有権は,建物の部分のみならず,その敷地の部分にも及ぶのが原則である。」 |
3.「規約により共用部分とされた建物の部分は,その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができない。」 |
4.「規約は,区分所有者の包括承継人に対してはその効力を生じるが,区分所有者の特定承継人に対してはその効力を生じない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「この法律の適用の対象となる建物は,住居としての用途に供される建物又は建物の部分に限定されている。」改 |
【正解:×】 ◆区分所有権の対象となる建物 区分所有法の対象となる建物〔区分所有権の対象となる建物。専有部分〕は,構造上の独立性かつ利用上の独立性を備えた部分です。 したがって,この二つを備えているものであればよく,住居だけではなく,店舗,事務所,倉庫などの用途に供されるものも対象になります。(1条) ▼区分所有建物という用語が示す範囲には,専有部分が住居のみというマンションだけではなく,「複合マンション」〔下層階の専有部分が店舗・事務所,中高層階の専有部分が住居部分という構成のマンション。下駄履きマンションとも言われる。〕,「専有部分が店舗・事務所等のみで構成される雑居ビル」〔このようなケースも少数だがある〕も含まれます。 ▼区分所有法・第2条第3項では,“区分所有権の目的たる建物の部分”を専有部分と呼んでいますが,不動産登記法では,「区分所有権の目的たる建物」,「一棟の建物を区分したる建物」となっています。 |
●各法律での用語の定義 |
宅建試験では,以下の用語の区別を覚える必要はありません。しかし,法律によってテリトリーが異なっていることは知っておく必要があります。
●区分所有建物・・・区分所有法第2条第3項に規定する専有部分が属する一棟の建物(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法・第2条第1項) ●マンション・・・(マンションの管理の適正化の推進に関する法律・第2条第1号) 一 マンション 次に掲げるものをいう。 イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設 ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設 ●マンション・・・(マンションの建替えの円滑化等に関する法律) 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 マンション 二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものをいう。 |
●類題 |
専有部分とすることができる建物の部分は,当該部分の用途に住宅を含んでいる場合に限られる。(旧・管理業務主任者・平成12年) |
【正解:×】 |
2.「区分所有権は,建物の部分のみならず,その敷地の部分にも及ぶのが原則である。」 |
【正解:×】 ◆区分所有権と敷地利用権の区別 区分所有権は,(規約共用部分とされたものを除いて)一棟の建物を区分した建物の部分を目的とする所有権と規定しており,敷地利用権は区分所有権とは別扱いになっています。 敷地については「敷地利用権」の規定があり、敷地利用権は,“専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利”となっています。(第2条6項) 区分所有法では,原則として「専有部分と敷地利用権との分離処分は禁止」になっていますが〔22条〕,この分離処分禁止と本肢を混同してはいけません。 ●区分所有関係の構成
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3.「規約により共用部分とされた建物の部分は,その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができない。」 |
【正解:○】 ◆共用部分たる旨の登記−第三者への対抗要件 規約によって共用部分になることができるのは,専有部分となるべき建物の部分や附属の建物〔附属の建物の全部でも又構造上区分される一部であってもよい〕の2つです。 規約共用部分になると法律上専有部分と独立して処分することはできなくなり(15条),権利に関する登記もできなくなります。(11条3項) このように強い制限がかかるため,規約により共用部分とした場合には,その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができないとされています。(4条2項) |
4.「規約は,区分所有者の包括承継人に対してはその効力を生じるが,区分所有者の特定承継人に対してはその効力を生じない。」 |
【正解:×】 ◆特定承継人 規約〔32条の原始規約含む〕や集会の決議〔書面・電磁的方法による合意や決議も含む〕の効力は,包括承継人はもちろん,特定承継人にも及びます。〔占有者には,建物等の使用方法についての規約や集会の決議の効力が及びます。〕(46条1項) 一般に,合意による取り決めは,当事者や包括承継人を拘束するだけで,特定承継人には及びませんが,区分所有法では,特定承継人も拘束される例外的な規定になっています。 売買などで区分所有者が替わった場合に,規約や集会の決議の効力が及ばないとすると,建物の保存や維持管理の面で重大な齟齬をきたすからです。
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