過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和57年・問14


 ガイド   管理組合・規約の保管と閲覧・規約の設定と改廃・
 書面又は電磁的方法による合意

建物の区分所有等に関する法律(以下,本問において「区分所有法」という。)に関する次の記述は,○か×か。(宅建・昭和57年・問14)

1.「区分所有者全員によって構成される区分所有者の団体は,区分所有法に基づいて設立される法人である。」

2.「規約の保管は管理者が行わなければならず,その閲覧を請求できるのは,区分所有者に限られる。」

3.「規約の設定,変更または廃止は,規約に別段の定めがない限り,区分所有法第45条第2項に規定する区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意によるのが原則である。」

4.「区分所有法又は規約により区分所有者の集会において決議すべきものとされている事項については,区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があっても,集会の決議に代えることはできない。」

【正解】

× × × ×

 原題の設定は「正しいものはどれか」でしたが,昭和58年の法改正により,昭和37年法(1962)では正しかった記述の選択肢が昭和58年法(1983)では誤りのものになったため『解なし』になりました。

1.「区分所有者全員によって構成される区分所有者の団体は,区分所有法に基づいて設立される法人である。」

【正解:×

◆管理組合法人

 区分所有者の団体が『管理組合法人』とは限りません。区分所有者の団体が『管理組合法人』になるには,区分所有法に基づいて一定の手続をする必要があります。

 そのため,管理組合法人でないものがその名称中に「管理組合法人」という文字を用いてはならないことになっています。(48条2項)

〔団地の区分所有者の団体の場合でも,団地管理組合法人でないものがその名称中に「団地組合法人」という文字を用いてはいけません。(66条,48条2項)

管理組合法人になるメリット

・管理組合法人が権利義務の法律上の帰属主体となり法律関係が明確になる。
・管理組合の法人登記によって代表者等と共に公示され,取引の安全が図られる。
・管理組合法人の財産と区分所有者の個人財産との区別が明確になる。

 具体的には,以下の通りです。

管理組合法人名義で,修繕の請負契約や管理委託契約を締結できるようになる。
・管理組合法人には,
民事訴訟上当事者能力が与えられる。
管理組合法人名義で,
不動産登記ができるようになる。→法人格を有しない場合は,管理者等の名義で登記する。

管理組合法人になる手続と要件

 区分所有法第3条の区分所有者の団体 (団地では,法第65条に規定する団体) は,区分所有者及び議決権の各4分の3の多数による集会の決議で法人となる旨及びその名称及び事務所を定め,かつ,その主たる事務所の所在地において登記をすることによって法人となります。(47条,66条)

 管理組合法人となるには,その構成員が2名以上であることが必要です。(47条1項)

●原題
「区分所有者によって結成される管理組合は,区分所有法に基づいて設立される法人である。」

【正解:×

  このままでも概ね上の改題したものと解答する上で基本線は変わりませんが,『管理組合』という言葉については注意する必要があります。昭和37年法の『当時の管理組合』と昭和58年法・平成14年法での「第3条に規定する区分所有者の団体」とは,法的な位置付けが異なっているからです。

 第一に『管理組合』という用語は,現行の平成14年法では使われておりません。〔昭和37年法,昭和58年法でも同じ。〕本肢の原題は昭和37年法で出題されたものですが,当時管理組合は任意団体であり,管理組合の構成員となるか否かは各区分所有者の意思にゆだねられていました。そのため,任意団体での管理組合では次のような問題がありました。

・任意団体での管理組合が意思決定をしても,組合参加員以外にはその拘束力を及ぼすことができない。〔区分所有権が譲渡されたときに,買受人が任意団体での管理組合に加入する義務がない。〕

・任意団体での管理組合では,組合員の自由意思での脱退を認めざるを得ない。

 第二に現行法の「第3条の区分所有者の団体」(団地では,法第65条に規定する団体) は,その団体への加入は任意ではなく,何ら設立行為がなくても,区分所有関係の成立と同時に法律上当然に構成されるものであり,「昭和37年法当時での管理組合」(任意団体)よりも団体としての拘束力の強いものになっています。

 現行法の「第3条の区分所有者の団体」(団地では,法第65条に規定する団体) は,昭和58年法で新たに設けられた規定であることから,原題そのままの収録では本肢での出題意図を損なう恐れがあります。そのため,本肢は改題しました。

●区分所有法での用語
 単棟   区分所有者の団体
 区分所有法第3条に規定する団体

 区分所有法の条文中には,『管理組合』という用例はない。

 3条
 管理組合法人  47条2項 
 団地  区分所有法第65条に規定する団体

 区分所有法の条文中には,『管理組合』という用例はない。

 65条
 団地管理組合法人  66条
 47条2項

2.「規約の保管は管理者が行わなければならず,その閲覧を請求できるのは,区分所有者に限られる。」

【正解:×

◆規約の保管と閲覧

 規約は,原則として管理者〔管理組合法人では "理事が事務所において" 〕が保管することになっています。ただし,管理者がいないときは,建物を使用している区分所有者又はその代理人規約又は集会の決議で定める者が保管します。〔管理組合法人ではこの但書は準用しない。団地では 建物を使用している"団地建物所有者"又はその代理人(33条1項)

 規約を保管する者は,利害関係人から閲覧の請求があったときには,正当な理由がある場合を除き,規約の閲覧を拒むことはできません。(33条2項)

 註 利害関係人 … 区分所有者,区分所有権を取得しようとしている者,占有者,
               専有部分を賃借しようとしている者,区分所有権等に抵当権を
               有する者又は抵当権の設定をしようとしている者,区分所有者
               の団体(または管理組合法人)に債権を有している者又は取引
               しようとしている者,etc。

 規約の保管場所は,建物内〔団地では "団地内" 〕の見やすい場所に掲示しなければいけません。(33条3項)〔管理組合法人では "理事が事務所において保管"するので保管場所の掲示は規定されていない。 〕

   規約の保管  保管場所の掲示場所
 管理者がいる  管理者  建物内の見やすい場所
 管理者がいない  建物を使用している区分所有者
 又はその代理人
 
規約又は集会の決議で定める者
 管理組合法人  理事 (事務所に保管)  ―
 団地・管理者がいる  管理者  団地内の見やすい場所
 団地・管理者がいない  建物を使用している団地建物所有者
 又はその代理人
 
規約又は集会の決議で定める者
 団地管理組合法人  理事 (事務所に保管)  ―

規約は,平成14年法により,従来の書面によるもののほか,法務省令で定める電磁的記録でも作成できるようになりました。

●関連問題
「規約は,書面のほか,法務省令で定める電磁的記録により作成することができる。」(管理業務主任者・平成15年・問32)
【正解:】規約や集会の議事録は,書面のほか,法務省令で定める電磁的記録により作成することができる。

3.「規約の設定,変更または廃止は,規約に別段の定めがない限り,区分所有法第45条第2項に規定する区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意によるのが原則である。」

【正解:×

◆規約の設定・改廃

 このような規定はありません。かく乱・困惑問題です。

 区分所有法又は規約により集会で決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は,集会の決議と同一の効力を有する。(45条3項)

 規約の設定,変更または廃止は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によります。しかし,集会を開かなくても,区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意や区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による区分所有者全員の書面または電磁的方法による決議があれば,規約の設定,変更または廃止を行うことができます

規約の設定・改廃での留意事項

1) 一部の区分所有者の権利に特別の影響を与えるときは,その区分所有者全員の承諾を得なければなりません。(31条1項)

2) 総合的に考慮して区分所有者間の利害の衡平を図ること。(30条3項)

 〔専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき,これらの形状,面積,位置関係,使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して,区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。 〕

3) 区分所有者以外の者の権利を害することができない。(30条4項)

●原題
「規約の設定,変更または廃止は,規約に別段の定めがない限り,区分所有者全員の書面による合意によるのが原則である。」

【正解:×】旧・昭和37年法・24条1項,3項による出題。出題時はだったが,昭和58年法による改正で×になった。

4.「区分所有法又は規約により区分所有者の集会において決議すべきものとされている事項については,区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があっても,集会の決議に代えることはできない。」

【正解:×

◆全員の書面・電磁的方法による合意 ⇒ 集会の決議と同一の効力を持つ

 「区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意」や「区分所有者全員の書面又は電磁的方法による決議」は,集会の決議と同一の効力を持つので,本肢は×です。

区分所有者全員の

書面または電磁的方法による合意

 集会の決議と同一の効力を持つ
書面又は電磁的方法による決議

 集会の決議と同一の効力を持つ

(集会を開催しないでこの決議方法をとることに
区分所有者の全員の承諾があるとき)

 区分所有者が全国に分散しているリゾート・マンションや大規模マンションのように,全員が集まって集会を開催するのが困難な場合があります。このような場合に,集会の開催をせずに,簡便な意思決定の方法として「区分所有者全員の書面又は電磁的方法による決議」が平成14年法で認められました。区分所有者が一同に会して討議を行う過程を省略するという意味においては集会決議の重大な例外と言えます。〔電磁的方法は,法務省令で定めるものに限る。〕

条文の確認

 区分所有法又は規約により集会で決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は,集会の決議と同一の効力を有する。(45条3項)

 区分所有法又は規約により集会で決議すべきものとされた事項については,区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意があったときは,書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす。(45条2項)

 区分所有法又は規約により集会で決議すべき場合において,区分所有者の全員の承諾があるときは,書面又は電磁的方法による決議をすることができる。(45条1項)

電磁的方法による議決権の行使

 区分所有者は,規約又は集会の決議により書面による議決権の行使に代えて,法務省令で定める電磁的方法によって議決権を行使することができる。(39条3項)

●補充問題
「電磁的方法により決議しようとする場合,集会を招集する者は,区分所有者全員の承諾を得なければならない。」(マンション管理士・平成15年)

【正解:

●原題
「区分所有法又は規約により区分所有者の集会において決議すべきものとされている事項については,区分所有者全員の書面による合意があっても,集会の決議に代えることはできない。」

【正解:×


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