過去問で学ぶ 区分所有法入門 

区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和59年・問14


 ガイド   共用部分の変更・規約の設定と変更・集会招集の請求・建替え決議

建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか(宅建・昭和59年・問14)

1.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,原則として,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってする。」

2.「規約の設定,変更又は廃止は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってする。」

3.「区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者は,管理者に対し,会議の目的たる事項を示して,集会の招集を請求することができる。」

4.「集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議をすることができる。」

【正解】

×
1.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,原則として,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってする。」

【正解:

◆共用部分の変更

 共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,区分所有者数及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議がなければ,することができません。

 ただし,区分所有者の定数は,規約でその過半数まで減ずることができます。(17条)

    区分所有者数  議決権
 区分所有法の規定  4分の3以上  4分の3以上
 規約  過半数まで

 減ずることができる。

 4分の3以上

共用部分の変更〔その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。〕は,特定の専有部分の使用に『特別の影響』を与える場合は,その専有部分の所有者の承諾を得なければいけません。したがって,特別決議があっても『特別の影響』を受ける専有部分の所有者の承諾がなければ共用部分の変更をすることはできません。

2.「規約の設定,変更又は廃止は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってする。」

【正解:

◆規約の設定・変更・廃止

 規約の設定,変更又は廃止は,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってすることができます。

規約の設定・改廃での留意事項

1) 一部の区分所有者の権利に特別の影響を与えるときは,その区分所有者全員の承諾を得なければなりません。(31条1項)

2) 総合的に考慮して区分所有者間の利害の衡平を図ること。(30条3項)

 〔専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき,これらの形状,面積,位置関係,使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して,区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。 〕

3) 区分所有者以外の者の権利を害することができない。(30条4項)

3.「区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者は,管理者に対し,会議の目的たる事項を示して,集会の招集を請求することができる。」

【正解:

◆集会の招集請求権

 本設問は,管理者がいる場合の管理組合での集会の招集請求についての問題です。

 集会は,管理者または理事〔管理組合法人〕がいる場合には,管理者または理事が招集します。しかし,集会を招集する必要があるのに,管理者や理事が招集しないときは,区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者は,管理者または理事に対し,会議の目的たる事項〔議題〕を示して,集会の招集を請求することができます。(34条2項)

 1/5という定数は規約で減ずる(引き下げる)〔例・1/5→1/6〕ことはできますが,増やす(引き上げる)〔例・1/5→1/4〕ことはできません。

●類題
管理者または理事〔管理組合法人〕がいる場合でも,区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者は,会議の目的たる事項を示して,集会を招集することができる。

【正解:×

 管理者または理事〔管理組合法人〕がいる場合,区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有していても,管理者や理事でもないのに,集会を招集することはできません。

●招集権者
 管理者または理事がいる場合  管理者 または 〔法人〕理事
 管理者または理事がいない場合  区分所有者の1/5以上で
 議決権の1/5以上を有する者

4.「集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議をすることができる。」

【正解:×

◆建替え決議

 区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数により行うことができます。この5分の4以上規約で別段の定めをすることができません。このほかに区分所有法第62条第1項の建替えの要件としては,従前の敷地と新たに建築する建物の敷地が一部でも重なっていなければいけないというものがあります。

区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議は,平成14年法では,次のような手順を踏むことになりました。

建替え決議までの流れ

 建替え決議を会議の目的とする集会の招集は,集会の会日より少なくとも2ヵ月前に発する。〔この期間は,規約で伸長することができる。縮めることはできない。〕(62条4項)

   

 建替え決議を会議の目的とする集会を招集した者は,当該会日より少なくとも1月前までに,当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対して説明を行うための説明会を開催しなければならない。(62条5項)〔説明会開催の通知は,会日より少なくとも一週間前に発する。この期間は伸長することができる。縮めることはできない。〕(62条6項)

   

 建替え決議を会議の目的とした集会(62条1項)

区分所有法第62条第1項
 集会においては,区分所有者及び議決権の各各5分の4以上の多数で,建物を取り壊し,かつ,当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる。
●原題
建物がその効用を維持するために過分の費用を要するに至ったときは,集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で建替え決議をすることができる。

【正解:×

 ◆建替えでの法改正の整理(1) 費用の過分性の撤廃

 平成14年法改正により,建替えの要件が緩和されました。

 それまでは,建替えには,「区分所有者及び議決権の各4/5以上の特別決議」に加えて,「老朽,損傷,一部の滅失その他の事由により,建物の価額その他の事情に照らし,建物がその効用を維持し,又は回復するのに過分の費用を要するに至ったとき」という「費用の過分性」という要件を満たしていなければなりませんでした。

 改正により,この要件が撤廃され,新しく建築される建物の敷地が従前の敷地の一部でも含んでいれば,建替えの理由が何であっても「区分所有者及び議決権の各4/5以上の特別決議」のみで区分所有法での建替えができるようになりました。


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