過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・昭和63年・問14
ガイド | 議決権の行使・特定承継人への効力・意見陳述権・共用部分の変更 |
建物の区分所有等に関する法律の集会の決議に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(宅建・昭和63年・問14) |
1.「集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面書面や電磁的方法により,又は代理人によって行うことはできない。」改 |
2.「集会の決議は,区分所有者の特定承継人に対しては,効力を生じない。」 |
3.「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は,会議の目的たる事項において利害関係を有する場合には,集会に出席して意見を述べることができる。」 |
4.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,区分所有者及び議決権の各1/2以上の多数による集会の決議で決することができる。」改 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面や電磁的方法により,又は代理人によって行うことはできない。」改 |
【正解:×】 ◆議決権の行使 議決権は,区分所有者本人が集会に出席して行使するのが原則ですが,書面・代理人・電磁的方法により議決権を行使することも認められています。(39条2項・3項)
※代理人が本人の意思に反する議決権の行使をした場合でも,当然のことながら,その決議には従わなければいけません。
▼平成14年改正法により,議決権行使の方法の選択肢が増えました。 議決権は,書面または代理人によって行使できる(39条2項)だけではなく,規約又は集会の決議により,書面による議決権の行使に代えて,法務省令に定める電磁的方法(施行規則3条1項)によっても行使することができます。(39条3項) 電磁的方法を用いた議決権の行使には二つポイントがあります。
法務省令に定める電磁的方法とは,具体的には,電子メールの送信やウェブサイトへの書込み,フロッピーディスクやCD-ROMの交付などで,本人確認の方法としては,電子署名を付するもの,パスワードを入力させるものなどが考えられます。(一問一答 改正マンション法p.52)
|
●議決権の行使 |
第39条
1 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。 2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。 3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。)によつて議決権を行使することができる。 |
2.「集会の決議は,区分所有者の特定承継人に対しては,効力を生じない。」 |
【正解:×】 ◆規約・集会の決議の効力 規約〔32条の原始規約含む〕や集会の決議〔書面・電磁的方法による合意や決議も含む〕の効力は,包括承継人はもちろん,特定承継人にも及びます。〔占有者には,建物等の使用方法についての規約や集会の決議の効力が及びます。〕 一般に,合意による取り決めは,当事者や包括承継人を拘束するだけで,特定承継人には及びませんが,区分所有法では,特定承継人も拘束される例外的な規定になっています。 売買などで区分所有者が替わった場合に,規約や集会の決議の効力が及ばないとすると,建物の保存や維持管理の面で重大な齟齬をきたすからです。
▼区分所有者の特定承継人は,区分所有権を取得すると同時に当然に当該区分所有者の団体の構成員になるので,特定承継人にも規約や集会の決議の効力が及びます。(46条1項) また,区分所有者以外で専有部分を占有している者(賃借人・使用借人等)も,区分所有者の団体の構成員ではありませんが,建物を占有して使用する以上は,建物等の使用方法について区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負います。(46条2項) 特定承継人や占有者になろうとする者は,規約や集会の議事録を閲覧しようと思えば閲覧できるので,専有部分を買ったり借りた後になってから,予想もつかない不利益を受けることはないだろうということです。(規約の閲覧=33条2項,議事録の閲覧=42条5項,書面・電磁的方法による決議や合意がなされたときの書面・電磁的記録の閲覧=45条4項)
|
3.「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は,会議の目的たる事項において利害関係を有する場合には,集会に出席して意見を述べることができる。」 |
【正解:○】 ◆占有者の意見陳述権 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者〔権原のある占有者〕は,会議の目的たる事項において利害関係を有する場合〔建物等の使用方法に関するものに限る〕には,集会に出席して意見を述べることができます。(44条1項) → 不法占拠者には意見陳述権は与えられていないことに注意。 しかし,権原のある占有者がこの意見陳述権を行使できる集会の開催を知らなければ区分所有法の44条1項は空文化してしまいます。 そのため,集会を招集する者は,会議の目的について賃借人等が利害関係を有する場合には,招集の通知を各区分所有者に発するとともに,集会の日時・場所・会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません。(44条2項)〔意見陳述権の確保〕 |
●占有者の義務と権利 |
区分所有者以外で専有部分を占有している者(賃借人・使用借人等)は,建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関して共同の利益に反する行為をしてはならず(6条3項など),占有者は建物等の使用方法について区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負います。(46条2項) また,占有者が区分所有者の共同の利益に反する行為をしたときには,区分所有者全員または管理組合法人は,集会の決議により,行為の差し止め請求(57条),契約解除・引渡しの請求(60条)をすることができました。 このように,占有者は建物・敷地・附属施設の使用方法等について拘束を受ける以上,占有者に利害関係のあるもの〔建物等の使用方法に関するもの〕が議題になっている集会で意見を述べるチャンスが与えられる必要があるでしょう。 〔区分所有者全員または管理組合法人が,集会の決議により,契約解除・引渡しの請求をする場合でも,決議の前に占有者に対して弁明する機会を与えなければなりません。(60条2項)〕 意見陳述権以外の占有者の権利の保護については,建物・敷地・付属施設の管理又は使用に関する事項について規約の設定や変更をする場合には,「区分所有者以外の者の権利を害することができない」という規定(30条4項)があります。 |
4.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,区分所有者及び議決権の各1/2以上の多数による集会の決議で決することができる。」改 |
【正解:×】 ◆共用部分の変更 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は,原則として区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による特別決議となりますが,「区分所有者の数」は規約によって,その過半数まで減じることはできます(第17条)。 この規約による議決要件の緩和〔区分所有者の数〕には,次のような事情があります。 一の区分所有者Aが多数の専有部分を所有し,残りの専有部分を多数の区分所有者が所有しているような場合では,Aは持分は大きくても『区分所有者としては1』としてしかカウントされないため,持分の大きさが決議に反映されない場合があります。〔例えば,議決権は3/4以上の賛成でも区分所有者の頭数では3/4に届かないということもありうる。〕 共用部分の変更のような場面では,持分の大きさをある程度考慮する必要があり,そのため,区分所有者の数について過半数を限度として,規約で別段の定めができるようにしました。 |
1000本ノック・権利の変動篇・過去問で学ぶ区分所有法に戻る
HOMEに戻る | 宅建・権利の変動篇に戻る | マン管・区分所有法に戻る |